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 泣いてる。誰かが、泣いてる・・・。ほら、泣き止んで。大丈夫。怖いことは、無いよ。


「あーん。お姉ちゃんが死んじゃうー!!!」

「あーん、あーん!! ねちゃー!!!」

「ん。・・・平気。泣かないの。大丈夫だから」


 あれ? 私、寝言? 独り言? あ、マノンとヨハン!!


「お姉ちゃーん」

「ねー」

「ぅ」

「慌てるな。妹、弟。姉が苦しむぞ」

「むー」

「ううー」


 目を覚ますとベッドの上でした。側というか、お腹には二人が抱きついて来ています。お手柔らかにお願いしますよ、マノン、ヨハン。素晴らしい力をお持ちなんですから、その力なら私はいちころですよ。ふー。これまたベッドの脇に立っていて、二人を止めてくれた騎士を見上げる。

 この人、私ともう一人を引きずって爆走した人じゃないですか?二人を追いかけて、本当の聖騎士かな?鎧も立派だし。


「あの」

「ああ。私はこの第三聖騎士団を預かるライムントだ。先程はピーターが失礼した」


 うわー。しっかりとした騎士にきっちり謝罪されてしまいました。ピーターというのは誰何してきた人でしょう。何だか聞いた事がある名前のような・・・。


「いえ」


 一言返すだけで精一杯ですが、そうだ!そんなことは言っていられません。


「あのっ」


 衝撃と疲れと、その他色々でぼんやりする頭を何とか回転させ、言葉を紡ぎ出そうとした所、乱入者ですよ。


ドガンッ!


「団長、そんな奴、放り出してっ」


 憐れ、ピーターはライムント団長に自分が放り出されてしまいました。まあ、そうでしょう。あからさまに弱っている人間、しかも子供の範囲に入っている者を放り出したら騎士団の矜持が疑われます。


「重ね重ね、失礼した。何か問い掛けたかったようだが?」

「ここは何処ですか?」


 ライムント団長は軽く目を見張って、穏やかに答えてくれました。よし。これで密入国の罪は軽くなるんじゃないでしょうか?どうかな?駄目かな?子供がうっかり入っちゃったで、押していこう。


「聖光国だ。君達は、隣国からか?」


 はい。知っていましたよ。でも今、知ったような感じでお返事です。演技力が試されています。それにしてもこの姿、何かが引っ掛かる・・・。

 ああ!すっきりした。閃いたというか、思い出しましたよ。この人もピーターも攻略対象者ですね。失礼。この人扱いは無いですね。そう、ライムントさん?ライムント団長の方がしっくりくるかな。んー。大人枠とヤンチャ枠でしょうか。ん?大人筋肉かな?まあ、それは置いておいて。この相手なら、多分、大丈夫でしょう。助けを求めましょう。


「はい。あの、この子達の力が狙われて」

「先程のような?」

「はい。他にも色々出来るみたいで・・・」


 詳しくは知らないし、搾取していない感じを醸し出しますよ。そおれ。


「君達の御両親は?」


 あ、それ。聞きますよねー。気になりますよねー。大抵、聖なる力は引き継ぐらしいです。突然に目覚める人もいるらしいですが、脇役たる私には微塵も関係ございません。


「帰ってこないの」

「いっちゃっちゃ」


 マノン、ヨハン。素晴らしいタイミングです。私の両親は隣国で悪辣に生活していますからね。二人にはなるべく近づけないようにしましたが、お金が無くなったら二人を売る算段でも付けたでしょうから、考えないことにしましょう。


「そうか。もう少しくわ」


バタン!


 はい。またピーターです。落ち着きないですなー。ライムント団長は微かに表情を動かすと、ピーターが何か言う前に、首根っこを捕まえ、子犬を運ぶ親犬のように部屋から出て行きました。ライムント団長さんは犬よりも狼に近いかもしれません。勿論、私達三人にはことわってからです。


「少し、退出する」

「はい」


 マノンとヨハンは毛を逆立てた子猫のようにピーターを威嚇しつつ、私に両側から抱きついていました。


「大丈夫」

「痛くした!」

「いたい!」

「うん。二人が止めてくれたお陰で、今は全然痛く無いから。ありがとねー」


 そう言って、撫でていると漸く二人は落ち着いたようで、それと共に眠くなってきたのでしょう。


「おいで。ベッド借りよう。少しお昼寝させて貰おうか」


 二人は眠さが限界なのでしょう。言葉も無く、ごそごそ、もぞもぞと私の両脇を陣取りました。え?二人とも私、動けないんですけど?もしかして、守ってくれているのかな。可愛い!すっごく、可愛いよ!!

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