忌むべきもの
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
彼岸花から逃れられなかった為に書きました。
言いたいことはただ一つ、手のかかる子ほど可愛い です。
その庭はただ静かにあった。大地を赤く染め上げる彼岸花の軍。ただそこにあるだけで賞賛され、持て囃される存在。彼女らは視線を受けて、捲れ上がった天狗の赤鼻を得意気に揺らした。完成された日常をただ眺めるだけの毎日。別にそれに不満があった訳では無い。ただ……。
「お前達は綺麗ではあるけれど、可愛くはないね」
息吹が秋風となって、この鮮血の庭を掻き乱す。その拍子に空に向かって舞い上がった花弁が、此方の頭上に降り注ぎ、衣類を赤く染めていた。すまし顔で庭を見遣ると、未だに茎を戦慄かせている。どうやら気に触ったようだ。お前達に向かって、『可愛くない』と称した事が。
「生まれた時から完全体。誰の力も借りず、ただそこにあるだけで賞賛されるだけの存在。だからこそ、全くもって可愛くない」
冷ややかにそう言い立ち上がった。向かう先はこの赤い庭。でも立ち入る事はしなかった。ただ渚にしゃがみこんで、花弁を突く。反論するように揺れる様を見ていると、漸く可愛いという感情が浮かんだように思える。
「完全体程、愛嬌から遠いものもない。見目も綺麗。我儘も言わない。病気にさえならない。驚く程に手がかからず、私の力をびた一文も必要としない。だから可愛くない」
手を加える隙さえ与えない完全体なこの庭は、綺麗では……あった。とても。でもそれだけだった。愛するにも、愛せなかった。私がしてやれるのは、ただ佇む様を眺めて賛美の言葉を述べるだけ。綺麗なばかりで、愛嬌は欠片も無かった。
花弁達はその言葉を受けて、揺れるのを止めた。傷付いた様に僅かに花弁を垂れ下げるその様は、今にも枯れてしまいそうだ。此処までされて、漸く私は慈悲を与える事にした。真上から吐息を吹き掛け、霊気を浴びせかける。
「今のは少し、ういな」
その言葉を受けて、瞬く間に花弁を翻す。元通りの天狗鼻を晒し、得意げな顔を晒す。どうやら機嫌が戻ったようだ。
もし、もし仮に、私の助けしか必要としない存在が現れたなら、この完成された世界を崩す者が現れたら、きっとこの庭を凌駕する程に愛してしまうだろう。
完全無欠、というのはやはり忌むべきものだ。
赤い庭の神様です。
生まれた時から、完全体な庭と共にあります。
ある意味幼馴染です。
彼岸の庭自体が、彼の事を必要としていないので、愛着は無さそうな気がします。
でも賞賛される事が当たり前なこの庭にとって、今の言葉はかなり刺さったんじゃないかなぁと。
多少手がかかって、構っている方が愛着は湧く気がします。