第一話 生活の始まりと何かの終わり
僕を呼ぶ声がする。泣き叫ぶ声、響きわたる銃声、薄れる意識、そして数多の星屑。
僕は。僕たちは
遥か昔。人々は意見違いから二つの国に分かれ、住む世界を変えようとした。
しかし平和は長くは続かず戦争に発展した。
僕らがすむこの国はシナ・コネスト。隣の国はリタ・レモラル。
人の行き来はおろか、戦地アネモリアでは死体が転がり銃弾だけが飛び交っている。
僕の名前は師走雛希。勉強も運動もあんまりできないが機械操作が得意な引きこもりだ。
「雛希!おくれちゃうよ?」
彼女は水無月千夏。俺の幼馴染みで文武両道。美人でモテるといったおまけつきだ。
「千夏が速すぎるんだ。もっとゆっくり歩け。」
「雛希の体力がないんだよ?荷物持ってあげるから、ほら!」
息切れる僕とは正反対に笑いながら走り続ける千夏。一体どんな肺の造りなんだろうか。
ここシナ・コネストでは戦地アネモリアへの戦士派遣などの理由から国家が戦争体制となった。
12才から18才までの兵役が男女問わず義務化され、それまでに教育や兵器操作の基礎知識を学ぶ。
僕と千夏は今日から兵役が始まり、第79部隊配属となった。
千夏は新しい世界、場所に心踊らせている。
その影響か、僕も新しい環境に少しばかり期待しているのかもしれない。
「わぁ!着いたよ雛希!私たちの新しい家だね。」
前線拠点にしては新しく、過ごしやすそうな家が見えた。
隣のガレージには兵器が入っているのだろう。
そのとき、通信用腕時計がなった。
「先に着いてる仲間が六人いるとのことだが...見えないな。」
「家の中電気ついてるみたいだよ?雛希が遅いから、夜ご飯作ってくれてるんじゃない?」
「改めて僕の体力のなさを自覚しましたよ。にしても、今日は満天の星空だな。」
「そんなこといいからはやくはいろ雛希!」
楽しみなような、でもどこか不安な気持ちをなんともあらわせないまま、僕は家の扉を開いた。