第29話 奴隷とモフモフさん
「こっちは王城ですよね?ご主人様は王族なのですか?」
元王女が俺に問いかける。
「え?ははっそんなわけないじゃん。王族なら護衛くらいつけるでしょ。」
俺はそう答えてそのまま家に向かう。
「ここだよ。」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
子供達以外から驚愕の声が上がる。子供達は屋敷の大きさに驚いているのか口を大きく開けている。
「あの…王城が目と鼻の先なのですが…。」
「ああ、まあ俺が選んだ訳じゃないからね。貰ったのがここだったってだけだよ。」
「貰った?ご主人様は貴族の御子息では?」
「うん?そうだよ?とりあえず入ろうか。」
門から庭を抜け、鍵をあけ家に入る。
「うーん、とりあえずお風呂に入ってきていいよ。お風呂とか多分暫く入ってないでしょ?グループで入っても良いし、みんなで入ってもいいよ。あっ、その前に完全治癒魔法」
神力を意識して使うイメージで孤人族の2人に魔法をかける。
「多分歩くのは暫くは慣れないかもしれないけど、筋肉は取り戻す為に頑張ってね。腕も重いものは暫く持てないだろうからそっちも頑張ってね。風呂はこっちだよ。」
少し歩いて誰もついてこない事に気がつく。
「何で誰も来ないのさ!」
若干恥ずかしくなり急いで戻る。
ん?集団で買った奴隷が泣いてるな。他の人たちは驚いて俺と孤人族達を見比べている。
…あぁそうか、もう治らないものだと思ってたのか。
神従官は使える人はいるけど全員にかけるわけにはいかないから順番待ちが多いんだったかな?
使える人がいるとは聞いたことあったけど、沢山使えるとは聞いたこと無かったしな。多分1日1、2回しか使えないんだろう。
「あの、ご主人様は貴族様であり神従官様なのですか?」
泣いていた狸人族は俺に問いかける。
「神従官では無いけど神様は信仰してるね。」
少し経つと落ち着いたのか孤人族達が感謝してくる。
「「ありがとうございます。ご主人様。これから精一杯奴隷として努めさせていただきます。」」
おお、シンクロしてる。双子はシンクロ率高いらしいけど前世の芸人以外だと初めて見るな。
「うん、よろしく。落ち着いたみたいだしお風呂に行こうか。今後の話はそれからね。」
「かしこまりました。」
皆それぞれ返事をする。
「ここが風呂場だよ。とりあえずバラバラで入ってもいいし、みんなで入ってもいいよ。で、これを今回使って欲しくてね。」
俺は薔薇の絵柄と文字と数字が書かれた紙が貼り付けられたビンのボトルを取り出す。
1時間で作り上げたがかなり良く出来たはずだ。人体実験はしていない。
「シャンプーって書かれたボトルの液体石鹸で頭とか尻尾とかの毛を洗ってね。で、しっかり流したら、トリートメントって書かれたボトルの液体を水分をある程度取った毛につけて5〜10分くらい付けたまま放置してからヌメリが取れるまで洗い流してね。その時間に身体とか洗うと丁度いいかな。身体もこのボディソープってボトルの石鹸を使ってね。」
出来るだけ簡単に説明する。
「ちなみにボトルの上の部分を押すとこんな感じで液体が出てくるから。使う量は気にしなくていいよ。遠慮はしないように。あっ、頭を洗う時は泡をたててゴシゴシし過ぎない力で洗うといいよ。毛の付け根は揉むように洗うだけでいい。身体もボディソープを泡立てたら撫でるように洗うと肌荒れも少なく済むからね。これ身体洗う用の道具ね。ボディソープを付けて少しお湯で濡らしていっぱい揉むといい感じの泡が出来るからそれで洗うといいよ。」
「わ、分かりました。」
狸人族のお姉さん奴隷が答えるが多分あんまり理解出来てないな。他のみんなにも難しいだろう。
俺も言葉が多いなって思ったし。自分で見せながらやるのも流石に今の関係だと早いだろう。
俺は紙を取り出して分かりやすく説明したことを文章にし、絵も描き分かりやすくする。
うん、上出来。これで防水用の魔法陣を描いて、魔心石を埋め込んだ土魔法で作った額縁に入れる。魔力は空気中から取り込む陣も付与する。ガラスだが、硬化魔法もいつも通り付けているから割れないだろう。
「これを浴室にかけておくから見ながら使うといいよ。とりあえず風呂場の横に休憩スペースあるから、入り終わったらそこで集まって、全員集まったらロビーにまた集まってよ。屋敷の見学とかはまだしてないからね。」
そう言って俺は風呂場に説明書を土魔法で見やすい位置に固定させる。
ボトル類も洗い場一つ一つに置いていく。
ちなみにボトルも空気中から魔力を取り込み、硬化魔法を発動するようにしているため割れない。
浴室に40度程のお湯を張り準備は整う。
あーシャワーも今度作るか。
「準備出来たから入っていいよ、ゆっくりでいいからね。俺も作業あるし。」
そう言って俺は風呂場を後にする。
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奴隷side
「ご主人様は何者なのでしょうか…。」
狼人族の母が呟く。
「多分その辺りも後で教えて貰えるでしょう。…どのグループから入りましょうか。私としては皆で入った方が時間の短縮にもなりますし、後の方や手前に入った方を気にせずお湯に浸かれると思います。あとシャンプー?とかの使い方もお互い認識しあいながら使いたいです。」
元王女はそう答える。
「そうですね。私もそれでお願いしたいです。」
狸人族の奴隷も答える。
そして風呂場にはいる。元王女以外はかなり驚いている。
「「広いねー!」」
「確かに広いわね」
広さに驚きそれぞれ感想をいう。
「説明書き分かりやすいですわね。」
「そうですね。」
それぞれが恐る恐る洗い始める。
「!?泡立ちが普通の石鹸と全然違いますわ!」
「泡泡〜!」
洗い終わると泡をしっかり流す。
そしてトリートメントを言われた通り、書かれた通りにつけて、置いてあった身体洗う用の道具にボディソープとお湯を少し付け泡立てる。
「こちらも泡立ちが違いますわね。髪の毛を洗ったときの泡より肌触りがいい気がしますわね。」
そして言われた通りに優しく洗い、トリートメントをヌメリが取れるまで洗い流す。
湯船に入り、落ち着く。落ち着いたら涙が出てきた。他のみんなも子供以外は目を潤ませているか、俯いている。
子供は何があったか分からないのだろうが、親やある程度成長していれば理解は出来ているだろう。多分腕や足を失っていた人がいるグループは今回の戦争のせいだろう。申し訳ない気持ちが出てくる。
そして私達は気持ちを落ち着けた人達から湯船を出て、いつの間にか置いてあったタオルと今日買った着替えに着替えたら休憩室に向かう。
タオルも今までのより柔らかい感じがした。いや、多分城で使っていたのよりも柔らかかった。
私は最後だったので私が休憩スペースに向かうと皆立ち上がりロビーに向かう。子供以外は皆湯船にいた時から殆ど喋らなかった。
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タオルも用意した。買った布を錬金術で完成形に変形させ、さまざまな色のタオルをふんわり使用に作る。
錬金術べんりー。
着替えも渡すのを忘れていたため脱衣所に入り、タオルを山積みにし、買った服を紙袋に入った状態のまま並べておく。
見るつもりは無かったが脱いである服を見てしまう。いや、本当に見るつもりはなかったよ?あったら目を向けてしまうのが男でね?いや、わざとじゃないよ?
それで気がついたが、多分狸人族の人の物と思われる服に積まれていた下着はパンツのみだった。細長い布はあったためそれを巻いているのだろうか?ブラジャーは無いのか?
発展していたり発展していなかったり、よく分からないが多分ブラジャーは無さそうだ。サイズ自動調整を付与すれば苦しくならない丁度良い物が出来そう。売れるな。庶民用と貴族用で売るように商会長に相談しようか。
シャンプーとかは…貴族用かな?いや、庶民でも手が届くようにしたいな。手間は無いに等しい。錬金術の陣があるし。
ロビーに戻り気がつく。
ドライヤー作ろう。確か自然乾燥が髪を痛める原因らしいし。実家でも無かったから多分無いだろう。
俺と母さんは魔法で乾かしていたが。ちなみにナナとリリアにも魔法で乾かしてあげていた。
2つの魔心石に風魔法をと火魔法を付与、お互いの火力調整、亜空間を開き使う。
うん炎が出るよね。自分でやるのは楽だったが道具にすると難しいな。
魔心石に魔力を調整するタイプは事故が多そうだ。
…魔力を制限する陣を魔心石に付与するか。最大値を決めれば火も風も一定に出来て事故も無くなるだろう。
…ドライヤーを作る陣は売れないな。魔力を制御する付与をする陣を作ると問題だ。バレれば戦争が多くなる気がする。
うーん、あっ熱を発するだけの陣にすればいいのか。これなら魔心石が壊れても風だけか熱だけしか出ないし、問題無いだろう。これなら自分に合った風の調整も可能だ。
…よし。出来たな。
「お待たせしましたご主人様。」
狸人族のお姉さん奴隷が告げる。
いいタイミングだな。
「うん、疲れは大分とれたかな?温風が出る魔道具を作ったからそれぞれ使って髪の毛とか尻尾乾かして。自然に乾かすと毛が痛む原因になるからね。」
「魔道具までお作りになられるのですわね…。」
「かしこまりました。」
元王女は驚きと呆れが入ってそうだな。他は考えるのをやめていそうだ。
温風に驚き、子供達は興奮しながら増産したドライヤーで皆毛を乾かす。
「髪の毛が艶々ですわ…。」
「毛並みが…。」
各々驚いている。うんうん。
「毛が艶々になったのは使ってもらったトリートメントで毛に栄養を与えたからだよ。時間を置きすぎるとあまり良く無いから時間は守ってね。後で時計も設置しとくよ。時計は平民街でも安く売ってたからね。各箇所に設置しなきゃね。」
「タオルも手作りですわよね?」
「よく気がついたね?そうだよ。やわからく、吸水性も高めた自信作だね。じゃあ落ち着いて話すためにもリビングに行こうか。」
そう言って俺は皆をリビングに連れて行く。
「とりあえず手抜きだけど、屋台で食べ物を買ったからみんなで食べようか。」
「その…ご家族や使用人の方は?聞いてはいけない事でしたら申し訳ございません!」
「うん?親は親の屋敷にいるよ。使用人は君たちだけだね。使用人を雇うために君たちを買った訳だし。とりあえずご飯を食べようよ。お昼も食べてなかったし、時間的に夕食込みの食事になったのは申し訳ない。」
そう言って屋台で買った食べ物をテーブルに並べて、皆を座らせる。
「じゃあいただきます。」
そう言って食べ始めるが皆食べない。子供は食べようとしているが、親か保護者が止めているな。
ああ、奴隷でも使用人でも雇ってる人と一緒に食事はしないか。
「気にせず食べてよ。みんなで食べた方が美味しいのは俺もみんなも変わらないでしょ?むしろ寂しいし、一緒に食べてくれるとありがたいかな。今は来客とか無いんだし。異論は認めないよ。」
その言葉で皆食べ始める。
「いただきます。」
子供達は元気に沢山食べている。遠慮している人もいたが、遠慮するなよ、と声をかけるとしっかりと食べ始める。
少し泣いているな。奴隷だから酷い扱いを受けると覚悟していたのかもしれないな。国も失ってる人もいるし出来るだけ優しくしてやらなきゃな。
皆食べ終わり、食事も綺麗になくなる。
「じゃあ話を始めようか。食後に話すことでも無いかもしれないけど、ここにきた以上俺の雇う使用人だ。服を買いに行くときにも言ったが、奴隷だからと不当な扱いを受けたりセクハラを受けたら俺に報告しろ。俺はお前たちを家族と同等に考えている。使用人として使うから若干矛盾しているが。まあ俺がお前らを大切にしている、という事だ。」
そして俺は続ける。
「でだ。俺の秘密はこれからどんどんお前らは知っていく。契約魔法の内容も緩和させて破っても苦しくなる程度にしてあるから、ぽろっと喋っても死にはしないから安心してくれ。まあ喋らないのがベストだがな。笑」
契約魔法の緩和と冗談を交えつつ尚続ける。
「これから働くに置いて、使用人同士蟠りがあったりすると仕事に差し障る事があるから秘密はなるべく無くしておこうと思う。」
俺は元王女を見ながら言うと元王女は覚悟を決めたようにする。
風呂に入らせたのは正解だったかな?色々考えてこの事もあると思っていたみたいだな。
「とりあえず俺から話そうか。まずは幻影魔法を解け。」
そう言うと元王女達の幻影魔法が解ける。
ん?あんまり集団奴隷組は驚いてないな。狸人族のお姉さん奴隷は見た目年齢的に知っていそうだとは思っていたが。
「とりあえず元王女から境遇を話してくれ。戦争内容は俺も知っておきたいからな。」
そうすると元王女が話し始める。
共にいる者が護衛騎士である事。戦争のきっかけ。ドラゴン騒動。王の末路。奴隷になるまでの道のり。
話が終わり特に誰も声を出さない。
「じゃあ次は集団奴隷グループの境遇を話してくれ。」
そして集団奴隷グループの話が始まる。
戦争により戦える者が亡くなった事。子供の扱いが決まった直後に集落が魔物の集団に襲われた事。逃げて国に来る途中魔物に襲われ腕や足をなくした事。
また沈黙が続く。
「じゃあ最後に親子グループお願い。」
母が話し始める。
元夫の借金と元夫の消失。肩代わりさせられた為奴隷になった事。
「他の方に比べるとなんかしょうもなく感じますね…。」
「そんな事ないでしょう。それに元夫はありえないですよ。妻と子供を残して借金背負わせて消えるなんて。」
俺はフォローを入れつつ元夫への怒りを表す。
少し間があき、元王女が声を出す。
「あなた方は私を恨んでいませんの?」
集団グループに問いかける。
「私は特に気にしていませんよ。あなたの父には少し恨みはありましたが死にましたしね。獣人族は基本弱肉強食の精神で育てられますし、生まれた時からその意識は芽生えています。子供達も親を亡くして悲しかったですが、もう気持ちは切り替えていますのであなたの心配は杞憂ですよ。それにあなたも父に対して何ももう心残りはないのでしょう?」
「そうですが…「元王女。気にしすぎだよ。相手はもう気にしていないという。子供達も気持ちを切り替えられている。ならあなたも気持ちを切り替えるべきだよ。あなたはもう王女じゃない。俺の奴隷になった以上取るべき責任は何も無いよ。もし何かあれば俺が全部対象しよう。」」
そう俺が口を挟むと元王女は少し固まり、意を決したように答える。
「分かりました。気持ちを切り替えます。皆さんこれからよろしくお願いします。」
「うん、ちょうど良いし遅れたけど自己紹介を始めようか。」
奴隷達が自己紹介を始める。
狼人族 23歳 ロワーヌ
狼人族 7歳 ルワーヌ
エルフ族 15歳 メリアーノ
エルフ族 10歳 マリーエル
狸人族 17歳 ポルーチェ
孤人族 13歳 ココル
孤人族 13歳 リリル
猫人族 8歳 メメ
猫人族 6歳 チカ
猫人族 6歳 チナ
メリアーノとマリーエルは家名とかを名乗らなかった。2人とも両親が残っていないと確信しているらしく、捨てる覚悟で名前のみ名乗った事でステータスから家名などは消えたそうだ。
鑑定で確認したが確かに消えていた。本当にもういないのだろう。だが吹っ切れたような、これから頑張るような意思を何となく感じた。
ていうかポルーチェは17なのか、色気があんなにあるのに。それになぜ、経験はないけど夜の仕事は私に任せてください、と言ったんだ?
女性しか買ってないからそういう風に思われたか?まああわよくばとは思っていたから間違ってはない。むしろありがたい限りだな。まだそんな事をするつもりはないが。
双子も2組とは思わなかったな。早くモフモフしたい。
みんなの自己紹介も終わったし俺の番だな。
「俺はレオフリート・フィオ・ヴァルダイル、8歳だ。辺境伯になったから家名はそのうち変わると思う。レオって呼んでいいからね。ご主人様でもいいけど、好きな呼び方でいいよ。呼び捨てでもいいし。家族以外の客が来てる時とかはしっかりしてれば、他の時は畏まらなくていいからね。これからよろしく。」
威厳がありそうな喋り方をやめて、いつも通りの喋り方に戻す。
「え?ヴァルダイル家ってドラゴンキラーが当主の家系では?子息ってだけでなく辺境伯?もう代替わりなされたのですか?」
「そうだよ。代替わりはしてないよ。兄さんもいるしね。俺はそっちの戦争で流れてきたドラゴンを1人で倒したら爵位貰っただけ。ついでに未開の土地の開拓命じられたよ。笑」
笑って流すが流せなかったようだ。
「ドラゴンを1人で倒した?」
ほぼ全員の声が重なる。子供達はキラキラした目で俺を見てくる。エルフの2人は驚愕している。他の獣人女性たちは少し目の色が変わった気がする。
「うん、それで数日前に爵位を貰ったんだよ。適当に気ままに旅したりする予定だったんだけどね。家族は助けられたから後悔はしてないけど。みんなにも会えたしね。」
だからモフモフさせて下さい。
「えっと…本当にご主人様は8歳なんですか?」
ポルーチェが俺に問いかける。
「うん、と言っても信じられないよね。契約もしてるし、ステータスを見せるよ。ステータスオープン。」
モフモフするまでが今までの話の展開比べてなげぇぞ!
どうなってやがる!




