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博士と私のSFショートショート

惚れ薬

作者: 坂井ひいろ

「博士、私もとうとう大学を卒業してサラリーマンになることができました」


「会社勤めなどしなくても、私の助手になれは良いじゃないか。二十四時間休む暇なく研究三昧。これ以上楽しいことはない」


「博士。それは世間ではブラック企業と呼ぶんですよ。博士の所は、残業代はおろか給料だって出来高払いでしょ」


「私の偉大な発明を持ってすれば金などいくらでも・・・」


「無いですよね!後先考えずに全部研究資材に回すじゃないですか」


「手厳しいな」


「そりゃー、私だってロマンを求めて研究者の道を歩みたいと言う願望がないわけじゃありません。しかし、彼女に貧しい思いをさせるわけには・・・」


「夢を追う男はカッコイイぞ」


「そうかもしれませんが・・・。どうしても生理的に受け付けないものが」


「何だ?」


「博士の研究に度々出てくるあの黒い虫です。台所の悪魔ですよ」


「カブトムシは良くてあれはダメか」


「はい。理屈じゃないんです」


「そうか。私もタコが嫌いだ。理屈抜きで受け付けない」


「分かってもらえましたか」


「おい、ロボット君。あの発明品を持ってきてくれ」


『ハカセ、モッテキタゾ。ハカセ、ノ、ツクッタ、クスリ』


「フラスコに入った緑色のドロドロしたものは何ですか。見た目からして気持ち悪いです」


「キミはいつもそうだな。外観の印象で決めつけるのはキミの良くない癖だ。これは人類の悲願、惚れ薬じゃぞ」


「そっ、そうなんですか。また、とんでもない大発明を!」


「これを使ってキミのあの虫嫌いを直そう」


「必要ありません」


「おい。ロボット君」


「止めろ!ブリキのポンコツロボットめ。近づくんじゃない」


『ハカセ、ノ、メイレイ。ゼッタイ!ノメ』


「うわっ。止めてくれ!』


 グエッ。ゴクン。


「苦い!」


「どうだ。恋の味じゃ」


「急に食欲が湧いてきました。この間、あの虫を貴重なタンパク源として食しているアジアの国があるのをテレビで見ました」


『オイ、オマエ。ヨダレ、タレテルゾ』


「うおー。もう我慢できない。行ってきます」


「まっ、まて。到着した頃には薬の効果が切れる・・・」


『ハカセ、モウ、イッテ、シマッタゾ』


「聞く耳なしとはこのことだな」


『コイハ、モウモク』


「耳も目も失ったが口は残ったか・・・」






おしまい。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この後、主人公はどうなるのでしょう。 例の黒い虫を食べに行くのでしょうか? 例の黒い虫が大嫌いな私は、それを考えるだけでぞっとします。 でもいずれ人類が食糧難に陥った場合、私たちも例の…
2019/11/22 09:51 退会済み
管理
[良い点]  上手いこといいやがって!  いや美味いこといいやがって! [一言]  異性へのアプローチは書いて字のごとく、『口』説くらしい。  見事、口が残りましたね。
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