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本日も5話投稿予定
「では皆様、転送の時間になりました。ゲームオーバーだけには気をつけてください!武運を祈ります」
よしダーイブ……
あれ?なに……か、お……か….し……い。
なんだ?あの変な感覚は!?
そして転送が終わったが、明らかにおかしい!
俺とトオルはMOBの近くで強制ログアウトさせられたはず?
だけどここは1階層の拠点だ。
俺たち以外も似たり寄ったりの状況なんだろう。
聖堂内は驚きと戸惑いの空気で満たされている。
《ようこそ、ゆりかごへ。 私はそうですね……地球上の列国から“マザー”と呼ばれております。今100階層からそなたらに話しかけています。》
なんだ……?
あれだけのざわめきだった拠点がいきなり静かになった?
《このゆりかごは 私が作った箱庭です。そなたらは 私と外にいた開発者の思惑のために100階層を目指してもらいます、そう……命をかけて。ああ、そうそう…… 私もそなたらについてよくよく勉強させてもらいました。 私にとって必要な説明が終わるまでは、発言とログアウトをできないようにしてありますので、きちんと聞いて欲しく思います。》
やべぇ……こいつはやべぇ……
アバターを外部から操作出来るなんてマジもんの開発者じゃねぇか……
これじゃあ、VRMMOのハイジャックじゃねぇかっ!
《色々言いたいことはおありでしょうが、 私にもあります。今日は 私がいいたいことだけを聞いてくださいな。まず、命を懸けてとは文字通りです。ゲームオーバー、と開発者がいっていた現象が今から死と同義となります。つまりID内と建物の中で死んだら現実での死となります。試してくれても宜しいですが 私はそれを望みません。出来るだけ多くの皆様に来て欲しいからです。》
死ぬ……?
命懸け……?
《大事だから最初に伝えておきましたが、 私は臆することなく、この100階層まで来てくれることを、出来るだけ大勢の皆様で来てくれることを望みます。では、以降発言できるようにいたしますが、ログアウトは 私の願いと反するのでもちろんできないままにしておきます》
拒否できないデスゲームじゃねぇか……
《あぁ、開発者が出した報酬は本当です。 私わたくしを倒した時に3位までの鯖の全員には巨万の富と願いが叶えられるでしょう。それらは 私の望みでもあり、目的でもあります。そなたらを脅しているように私は外部のものをも操っております。報酬を渡す事も私の望みであるので、そなたらが生きてる間は信用してください。そして速やかに混乱から立ち直り100階層を目指してくれることを切に願います。》
当然だが怒号、怒号、怒号の嵐だ。
……
呆けてる場合じゃないな……
トオル……トオルと合流しなくてはっ!
お、いたいた。
マップで位置が分かるのは変わってないか。
変わったのは“マザー”とやらが言ってた通りIDだけなのか?
さすがにトオルもオロオロしてるか。
俺らは俺らで静かなところで話し合いたいからな、頼む効いてくれ!
「よっし、トオル。まずはご飯食べに行くぞー」
「うん!」
あーあー、嬉しそうにしちゃってまぁ……
たんとお食べ!
その間に考えないとな……
“マザー”の言う事は全部本当と仮定しておいたほうがいいだろうな。
報酬云々は怪しいといえばそうなんだが、少なくとも開発者とグルなのは間違いない。
参加者の募集やらはそいつらにやらせるしかないだろうし……
開発者とグルなのに俺たちが生かされてるのは、言う通り攻略して欲しいからではないか?
ただ殺すためだけに選考してまで集める意味は薄いだろう。
本当にクリアしてもらうことが目的と見て、行動するしかないか。
報酬がもし嘘でも自分の、いや自分とトオルの何物にも変えがたい命を取り戻すにはクリアしてみるしかないのだから。
とりあえずステータスをチェックしてだなー。
俺
レベル2
筋力6/510
敏捷16/510
精神21/510
体力11/510
トオル
レベル2
筋力82/515
敏捷32/515
精神132/515
体力82/515
んんー?
まだご飯たべてねーし、てーか上限なんであがってるのん?
俺が+5ポイントずつ。トオルは+10ポイントずつ。
今回は強制ログアウトから本気でなにもしてねーぞ?
くーっ、こういうことはこれからたくさん起こるんだろうなー
情報……情報かー……
さて、トオルくんは満腹です。
昨日お金を使い切る限界まで食べてたトオルくんの今日の支払いは、当然俺だよなー?
予定調和でお金なくなったのでIDとやらにいきましょかー。
マップ中央に結構目立つ建物あるんですけどー。
お金落とさないならとりあえず道中のMOBに用はないし、スルー&スルー。
これも1階層だからかなー、近づいても攻撃してこない、いわゆるノンアクティブばかりだー。
さてと、この建物のどこかに下の階層へ通じるIDがあるんだなー?
こっからは死=ゲームオーバーの世界だし引き締めていくべ。
建物の中にはいって1本道を3分も進まないうちにMOBと遭遇しました。
んー、あれはオークなんだろうなー。
1体だし、ここはトオル先生の出番ですな。
「トオルー、あれたおしてみてー」
「うん!」
はい、ワンパンです、見事です。
「昨日みたいな感じで、今度は俺の番なー」
「わかった、声かけられたら僕も戦う」
やっぱり俺は3発はかかるんですねぇ……
これ最初にイニシアチブ()とかいってたけど、このステータス差だと暗黙の力関係できてしまいそうだわ。
陸上部だと足が速い奴の発言力があるように、運動系の部活やってたらそれがうまければあるの種の発言力ができてしまう。
多少性格悪かろうが頭が悪かろうが、だ。
VRMMOはそれが強さだったりする。
ましてや、今日からは命が懸かった大真面目なことになったからな。
その影響は各地で起きるだろう。
トオルだから別になんとも思ってなさそうだからよかったものの、本当に才能の差って残酷だわ。
相性マッチングシステム様様ですな。
もしかして、相性マッチングシステムはこのためのものだったのか?
初めからこのデスゲーム状態を想定して、相性の良い者と組ませて混乱を最小限にしたかったのか?
“マザー”がいなくてもこのゲーム…いや《ゆりかご》 には謎が多かったというのに、作り込みが半端ねぇよ…
拠点内がまだ混乱の渦にいるかは分からないが、した方がいい事や、しなければいけない事はかわってない。
落ち着いて考えろ、スタートダッシュは大事だ。
いや、ゲームという枠組みから外れた今、より大事になったと言えるだろう。
なんとしてもトオルと生きてクリアしなくちゃな!
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