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本日4話目。

 12からだと……?

 この現代においてそんなことがあるのか?

 いえ、ないとは言わん。

 広い広ーいこの国で、絶対にそういうことは起こっていません!

 と言いきれるような事ってそんなに数はないと思う。


 が、それに遭遇する確率は?

 と、言われれば知らないで終わる方が多いのでは……?


 とりあえず、とりあーえず話を聞かないとな。


「今までどういう生活してきたの?」


「えーっと……山で力仕事してた。僕みたいな学がない人間でもできる力と体力仕事!」


「なんで山に行くことになったんだ?」


「お父さんとお母さんがお金借りたのに逃げたんだってー」


「そうか……それでお金はちゃんともらえていたのか?」


「うん!でもお父さんとお母さんの借金とかの支払いと、あとは僕が知らない言葉を一緒に働いてるおじさんたちに教えてもらった時に授業料でお金渡してた」


「なんで知らないこと教えてもらうだけでお金払ってたんだ?」


「僕はバカだから学校にいけなくてこんなところで働いてるって教えてもらったから!だから勉強してまた学校に行きたいんだ!こんな僕みたいな学がない人間は、教えてもらうのにたくさんのお金が必要なんだって!僕は賢くなりたい。賢くなって普通の仕事してご飯をいっぱい食べたい。ご飯がたべれないと……」


 こいつはそこから少し悲しそうな顔をして


「お腹が…お腹がすいちゃうんだ……」


 と続けた。


 まとめると12歳の頃に両親が借金残して蒸発したために怖い人に連れていかれて、山で土木工事?みたいな事をさせられ、寝泊まりはタコ部屋。

 当然、違法も違法。ド違法です。

 それで摘発されのが最近と、そういうことらしい。


 ……。


 なんだそれ。


「それでここへはなんで?」


「その悪い事をしていたとか言う人たちを捕まえたおねーさんがここに来ればお腹いっぱいご飯が食べれるって教えてくれて!僕みたいな学がない人間でもできる力仕事だって!それで本当に食べれて、嬉しくて!」


「それは……よかったな。ここで長ければ1年拘束されるとかの説明は聞いたの?」


「うん!でも学校にも行けないし、働かないとご飯食べれないから。僕はここで働きたい!」


 学校……学校って小学校のことか……


 お前、騙されてるよ……

 そんなにしっかり働いてずっと空腹だって事は絶対にない。

 これ僕のですか?

 か……


 なるほど……

 最も相性のいい人と組める……ね。

  相性マッチングシステムか……っ!




 俺はこいつに出会うためにここにやってきたんだ。




「聞いてくれ。俺は絶対おまえを裏切らないし、騙さない。ご飯も毎日お腹いっぱい食べれるようになる。俺と友達になってくれ、俺を信じてくれ!そして一緒にゲームをクリアしよう!」


「えっ!うっ、うんっ!!力仕事と体力仕事はみんなに褒められたんだ、頑張ります!」


「俺はおまえをトオルと呼ぶ。おまえは俺をリョータと呼んでくれ。よろしくなっ」


「うん、よろしくねっ!リョータ!」



 ※



 俺はモテない。

 その上正直、どちらかと言えば人にも好かれない。

 別に自分の性格が悪いなんて思ってない。

 むしろ自分では性格良いとさえ思っている。

 普通に優しいし、物の道理だってわかってるつもりだ。


 ただ、振り返ってみるに半端な正義感に理屈っぽく、それでいてゲームでいうと金策でぶっちぎりのトップになるくらいには、ずる賢い。


 半端な正義感に理屈っぽく、ずる賢い。

 思うに、この組み合わせは良くないらしい。

 食べ合わせが悪い食材の組み合わせがあるようにどうやら、一つ一つは人に好かれる要素がなくもないとは思うんだけど、合わせてみたら結構悪いみたいだ。


 そんな俺だが、許せないものがある。

 世の中辛い思いしてる人はそれこそたくさんいると思う。

 その中で俺が一番可愛そうだと思うものが子供への虐待だ。


 子供の頃は親が神で、本人はSOSの出し方も知らないうちにそれが常識になってしまう。

 大人になってから騙されたとかも勿論かわいそうだ。

 だけど、子供の彼らには警戒も抵抗するという発想も与えられない。


 スーパーの夜勤をしていた時に、夏なのにボロボロのセーターを着た子が万引きをした。


 刺身だった。


 店長が事務所につれてきた時は、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいとずっと言っていた。

 俺も店長もこれは好奇心によるものではないと分かっていたから、警察に相談するために連絡した。

 待っている間にパックのご飯用意して、刺身と一緒に食べさせてあげた。


 あんまり美味しそうに食べるもんだから、俺はお菓子コーナーから、チョコレートも持ってきてその子にあげた。

 店長も頷いていて、その子は泣きながら食べていたけど、俺らも泣いていた。


 あっ、思い出したら涙がっ……

 そういやチョコレートをあげた時に


「これ、僕のですか?」


 って聞いてたなー。

 こんないい子にどうしてこんな酷いことができるんだっ!

 って泣きながら思ったなぁ。


 スーパーで働いてたらお菓子買って欲しくて駄々をこねる子供や走り回ったり大声出して親に怒られてる子供なんてたくさんみてきた。

 子供ってそういうもんなはずなんだ!

 それが当然なはずなんだ。


 チクショウ……



 俺は決意する。

 クソステだろうがなんだろうが、俺の持てる能力全てを使って絶対お金をたくさんたくさん稼ぐ!!

 トオルが一生お腹いっぱいで暮らせるだけのお金を残してクリアしようと。

 あの夜勤の時とは違い、今回それだけの事を出来るチャンスはあるだろう。


 相性マッチングシステムよ、散々言ってすまなかった。

 最大の感謝をする。



 俺はトオルに出会うためにここにやってきたんだ。

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