プロローグ
これまで読む専でしたが、ふと思い立って書き始めました。
書き溜め等なく、完全に勢いで始めましたのでどうなるかわかりません!
少しでも面白いものができるように頑張りますのでよろしくお願い致します!
「ノリトさん!ノリトさんってば!!しっかりして!!!お願いだから!!!」
曇りがかった意識の中で、聞き慣れた声が聞こえる。
「我ガ慈愛ノ心ヲ以ッテ彼ノ者ノ傷ヲ癒セ!エクストラヒール!!」
イルメの回復魔法が僕の全身を包み込み、柔らかな暖かさを感じる。
しかし、全身の筋肉が悲鳴をあげ、まぶたを動かすことも叶わない。どうやら魔王最期の攻撃が致命的だったみたいだ。回復魔法をどれだけかけても、この命の灯火を繫ぎ止めることができないと悟った。
自分の体のことは自分が一番よくわかる。
かすかに残っている力をかき集め、なんとか口を開く。伝えなくてはならないことがある。
愛する人に。
「・・・イルメさん。無事だったんですね。よかった。」
「ノリトさん!!よかった、気がついたんですね!もう一度エクストラヒールを!」
僕らは全力で魔王と戦った。もちろんイルメさんだってとっくに魔力はそこをついている。
これ以上無理をして共倒れになんてことになったら死んでも死に切れないじゃないか。
鉛のように重いまぶたを無理やり開けて、イルメさんを見る。あぁ、そんなに顔をぐしゃぐしゃにして。
せっかくの美人が台無しじゃないですか、まったく。
僕はイルメさんの目を見つめながら、優しく、だがはっきりと言葉にする。
「イルメさん、僕はもうダメみたいです。」
「そんなのやってみないとわからないじゃないですか!!!諦められるわけないじゃないですか!!!」
イルメさんは僕の手をぎゅっと握りしめ、空っぽの魔力を無理やり集めて回復魔法をかけようとしている。
「いいんです。大事な人を守ることができたのだから。ねぇイルメさん、僕の最期のわがまま聞いてくれますか?」
「・・・いや・・・です・・。最期なんて・・・最期なんて言わないで・・・」
「少しだけ休むだけですよ。本当です。だから、少しだけ待っていてもらえますか?」
子供のように泣きじゃくるイルメさんの頬に手を当て、優しく涙を拭く。
僕にしてはキザすぎる行動だけど、最期なんだしこれくれらいは格好つけさせて欲しい。
「・・・っ。わかりました・・・。わかりました・・・。待ってますから。ずっと、待ってますから・・・。」
「ありがとう。イルメさん、愛してます。」
「私も・・・私もです・・・愛しています。」
もはや痛みはなく、むしろ朝日を浴びているような柔らかな暖かさが全身を包んでいる。
次第に体から力が抜けていき、意識が遠のいていく。
こうして僕の、平凡な公務員だと思っていたら勇者の才覚があるとか言われて異世界に転移することになった人生が終わりを告げた。