人生から鳥生へ
拙い文章で書きはじめてみました。読んでくれる人がいたら嬉しいです。
コツ…
コツコツ…
コツコツコツ…
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パリパリパリ…
巣の中で、雛が1匹卵から孵った。母鳥は近くにいないようだ。別段鳴くわけでもなく、物珍しそうに回りや自分を見回している。
(完全に鳥の雛だよな?)
この雛は、前世の記憶を持ったまま生まれ変わってきたのである。雛は一生懸命状況を整理しようとしていた。
自分が死んだ記憶は確かにある。元冒険者のこの男は、仲間と共に討伐クエストを無事に終え、ギルドに帰る途中に豪華な馬車が盗賊に襲われている場面に出くわした。仲間と共に何とか賊を撃退し、助けたのはなんと王女であった。ひょんことから王室から感謝状を受けとることになり、後日城に向かう途中になんと襲われて、あつけなく死んでしまったのだ。
(謁見するために、服新調したのにな…)
(絶対!感謝状の他に褒美貰えたのにな…)
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(母鳥遅くねーかな?お腹すいたんだけど…)
転生者に実際会ったことはないが、話は聞いたことがある。昔の英雄や、賢者が転生者だという話だ。でも確か、失われた技術で、一定以上の実力者でなければ成功しないって話だったはずだ。
元々冒険者としては、精々中の上位の実力であった。剣術は得意だったが、魔力に適正がなく、シルバーランクまでいったが、それ以上は諦めていた。おかげさまで、仲間には恵まれていた為、充実した冒険者生活だったが。
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(本当に母鳥遅いね…)
転生なのかな?特に儀式もしてないし、実力だって足りていたとは思えない。たまたま、前世の記憶を忘れてないだけなのかな?でも、鳥って割に良くないか!?鳥になりたいと本気で願ったことはないけれど、自由に空を飛べるって!
この男順応性が高いというか、能天気というか。鳥に生まれ変わったことは受け入れたようだ。
それにても、今は何年なんだろう?
さっき巣の中を漁っていたら、ぺニーコインを見つけたから、元いた世界で間違いはないと思う。ただ、世界に広く普及しているコインの為、地域の特定までは至らない。
などと考え事をしていたら、巣の中が影で暗くなった。
母鳥が餌でも持ってきてくれたのかと思い見上げた瞬間息が止まった。小さな心臓が握り潰されるようか感覚に襲われ、息を潜める。
猫科の動物と思われる何かが巣穴を覗いているのだ。
死を覚悟して、目をつむり息を殺す。永遠とも思える恐怖の時間に耐え兼ね目を開けたら、もうそこには何もいなかった。
おそらく、ほんの一瞬覗いて気がつかなかったのだろうが、雛にとっては永遠と思えるほどの時間に感じた。
巣が靴のような形をしていて、たまたま爪先側に居たために、気が付かれなかったのだろう。
たまたま気が付かれなかっただけで、たまたま死んだ可能性もあった。そう考えるともう一度恐怖が甦ってきて、少しでも、巣の爪先の方へ急いで身を寄せた。
一瞬しか見えなかったが、まず、猫科っぼい動物のサイズがおかしい。自分のサイズがヒヨコ位だとしても、大きすぎる。猫科の魔獣だろうが、虎位のサイズはあった。猫は木登りが得意とは知っているが、大型の魔獣が木に登るなんて聞いたことがない。もしくは、自分がとても小型の鳥なのか?そうだとしたら少し残念だが……
読んでいただけた方ありがとうございました。不定期になるかとは思いますが、ぼちぼち書いていきたいと思います。