第6章☆山元博士
携帯に山元博士から着信があった。
逡巡して、着メロを少し聞いてから電話に出た。
「はい、美咲です」
「美咲君!無事だったか?」
「はい。何も言わずに行動してすみません」
「祐二は一緒にいるのか?」
「知り合いの元に預けました」
「これから研究所まで出てこれるか?」
「はい」
研究所に着くと、山元博士がファイルを片手に、神妙な表情だった。
「それは、本当のことですか?」
私の声は冷たく響く。
「追跡調査で被験者たちの行方を追っていたら病気や事故で亡くなった例をとってあるんだよ。彼は・・・祐二は誤解したかな?」
「多分」
「ついでに君も誤解したかな?」
「ええ」
気づかれないようにちょっと息を吐く。緊張してるのかな?私は。
「研究の実験と被験者たちの死亡には直接の関係は無いんだよ」
「そうですか」
声が緩んだのが自分でもわかった。
「山元博士。祐二のことどう思われますか?」
「君はどう思うんだね?君もその・・・悪夢を見たのかね?」
「はい」
「超常現象は各地で目撃されていて、理屈で説明のつかないことは多々ある。私も体験してみて初めてそういうものなんだと知ったが。しかし私の立場は科学的に物事を立証するものだから主義に相反するなぁ」
「以前読んだSFに、エスパー同士の闘いの話があったんですけど、一人のエスパーのESP能力が発現した理由というのが、脳腫瘍だったんです」
私は現実と虚構をごっちゃにしている。でも、つい、理由を説明づけたくなるのだ。
「彼は科学的見地からいって危うい存在だ」
「そのう・・・祐二をほっといてやってもらえませんか?」
「何故?情がうつったかね?」
私は黙っていた。山元博士は「まあいい」と言って、「明日からも君はここで働いてくれるんだろう?」と言った。私は了解した。
「京子姉さん!なんで研究所に戻るんだよ!」
「・・・言ってなかったけれど、山元博士は恩人で、私のフィアンセなのよ」
「えっ?」
祐二はかわいくてしょうがないけれど、弟みたいなものだと思い込もうと必死だった。