第5章☆飛鳥
「で?」
「何が?」
祐二は立ち止まって不満そうに私を見た。
「こっちの方向、明らかに、京子姉さんちじゃないよね」
「そうよ」
「どこ行くの?」
「飛鳥のところ」
「あすか?誰それ?」
「兄貴の親友」
「京子姉さんの兄さん?」
プッと吹き出す祐二。
「兄貴は事故で2年前に亡くなったけどね」
「それは・・・」
なにも言えないよね、普通。
「所持金が1万5千円」
「えっ」
「だから、頼れそうな人を当たってみるのよ」
「なるへそ」
「それと、寝泊まりできるところ確保できたらそっちに行ってよね」
「なんで?京子姉さんちでいいじゃん」
「私が良くない!」
ぎゃあぎゃあ言い合いながら、リムジンバスに乗って空港を目指す。
「飛鳥って人、遠いところにいるの?」
「空港にいるのよ」
「空港でなにやってるの?」
「正確には、空港の小型機専門の事務所で常勤していて、小型機の整備を専らやってるわ」
「飛行機、かぁ」
兄貴も飛行機バカだった。祐二もその傾向がありそうだったら遠ざけたいけれど、今はそうも言ってられない。
空港の乗り降り場から、レンタカー会社の前を横切って、航空サービスを目指す。
「すげー」
至近距離で鉄とかジェラルミンの塊を見る。
「なんで鉄が空を飛ぶの?」
「私とおんなじこと言ってる!」
あははは。と二人で笑った。
飛鳥は懐かしそうに出迎えてくれた。
「次の仕事見つかるまででいいからお願い!」
「うーん」
「この子、祐二っていうの。この子のこともお願いします」
「どういう関係?」
「恋人」
ぶはっ。祐二の言葉に、飲みかけのお茶を盛大に吹き出す。
「なんだ。違うのか」
「違わない」と祐二。
「違う!ちょっとわけあり。ほっとくと困ったことになるの」
「どういう意味」
「実は・・・」
今までのいきさつをかいつまんで話した。
「超能力者、か」
「違うよ。俺は何かにとりつかれていて、そいつが全部やったんだ」
「なんにせよ、深刻なんだな?」
「ええ」
「わかった。出来る限りのことはやってやるよ」
「ありがとう、飛鳥」
なるべく迷惑かけないから許して!そう思いながら頭を下げる。
私は、飛鳥が私の兄貴が死んだことを未だに気にしていて断れないと読んでここに来た。打算的だ。
「私、ハローワーク行かなきゃ」
「まあ、落ち着け。しばらく俺のところに厄介になるといい」
「飛鳥・・・」
思わず、涙が出た。