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Realize  作者: 星野☆明美
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第3章☆音楽の奥行き

祐二はCTスキャンなどで異常がないか徹底的に調べられた。

「どうですか?彼は」

私が山元博士に尋ねると、彼はちょっとしかめてから話し出した。

「どこも特に異常ない。しかし、前頭葉に小さな影が映った」

「腫瘍ですか?」

「ほとんど影響のない、ただの影にすぎん」

「じゃあ、実験の被験者として採用決定ですか?」

「ああ。そうなる」

私は内心複雑だったが表には極力出さなかった。


「京子姉さん」

空腹で検査をうけた後のカツ丼をかっくらいながら祐二は私に気づいた。

「ほっぺたにお弁当つけちゃって・・・」

思わず微笑んでしまう。なんて、かわいいんだろう?

「今、妙なこと思っただろ?」

「何?妙なことって」

「かわいい、とか思ったんじゃ?」

「なんで?」

「思ってないなら、いい」

ガツガツ食べて何を言うやら。

「山元博士が被験者としてぴったりだって」

「ふーん」

そこへ山元博士が顔を出した。

「食べたら早速だが実験開始」

「うえーい」

「なんちゅう返事だ!」

「はいはいっと」

コップの水をすごい勢いで飲み干すと、祐二は席を立った。


「リラックスしててね・・・」

電極などを吸盤でくっつけながら言った。

「ただ寝てるだけで良いの?つうか、暇」

「好きな音楽聞いて良いぞ」

山元博士がオーディオ機器をどん、と置いた。BOZEのスピーカーって高いもの使ってる。

「脳に刺激を与える訳だから、音楽もちょっと違って聞こえるかもな」

「へえ」

「クラシックは?」

「あんまり。JPOPが良い」

「了解」

ヘルメットみたいなカバーをかぶって、サングラスで視界を暗くして、祐二はおとなしく横になって音楽を聞いていた。

「ほんと」

「何が?」

「音楽に奥行きがある。ボーカルばっかりいつも聞いていたけど、伴奏も幾重にも聞こえてすごいよ」

「今、活性化してるのは?」

「側頭連合野です」

「順調だ」

「はい」

「思い付いたこと言ってみて」

「この曲、テレビドラマのテーマソングなんだ。そのテレビドラマは・・・」

少し興奮している様子で早口で喋る祐二。

「ちょっとはやすぎるよ」

「はい。刺激を30%減少」

「あーなんか、疲れた。止めて」

「ストップ」

「はい」


記録を確認している山元博士。

私は道具の後片付け。

「あー」

「何?」

「俺、頭良くなったかな?」

「そんな簡単に良くなりません」

「続けてたら良くなる?」

「それはなんとも。人によるわ」

「ちぇっ」

「頭が良くなりたいの?」

「人にバカにされない程度には」

「自分で努力して勉強しなきゃ」

「説教臭いこと言うんだね、京子姉さん」

「みんな努力してるわよ」

「京子姉さんは、努力してる人が好き」

「そういうんじゃないよ」

「じゃあ、どんなのが好みなの?」

「しらない」

祐二はすねたように目を閉じた。

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