プロローグ☆邂逅
プロローグ☆邂逅
暗い街角はひとけもなく、雨が降りそぼっていた。
私は仕事ですっかり遅くなってしまったと思いながら家路を急いでいた。
「・・・?」
声、かな?・・・ああ、誰かが歌っているのか。
外灯の下に灰色のパーカーを着て誰かが座り込んでいた。
パーカーのフードをかぶっていて顔が見えないが、びしょ濡れのその心細い姿はたしかに幼い雰囲気を漂わせていた。
「君、どうしたの?」
私が声をかけると顔をあげて、びっくりしたように私を見た。
男の子だ。歌っていた声が、か細くて甲高かったからてっきり女の子だと思った。
「どうもしないよ。そっちこそしまったって顔してるけどどうして?」
ニヤリとわらってその子は言った。関わるんじゃなかった、って思ってるのがばれてるみたい。私はさあっと血の気がひいた。
「もう夜も遅いから、帰りなさい」
「帰る家、無いんだ」
「なんで?」
「今日で18歳の誕生日が来て、収容されてた児童施設にいられなくなった」
これは厄介だ。
「お姉さんいくつ?独り暮らしなら泊めてくんない?・・・せめて一晩だけでも」
「ごめん。なんかその、自分の身の危険を感じるからダメ」
「へえ!かっわいい」
立ち上がって顔を間近でじろじろ見られる。
唇が血の気がなくなってるのに、顔が真っ赤になってるのがわかる。
大慌てで財布からなけなしの5千円札一枚取り出して、渡す。そしてさしていたビニール傘も押し付ける。
「なにこれ?」
「インターネットカフェにでも泊まりなさい。あそこはシャワーもあるはずだから暖かくして風邪ひかないで」
「ちょっと、待ってよ!」
声を振り払うように駆け出した。
明日も仕事なのよ。ごめんなさい。
そう。その時それが私に精一杯できることだった。