抗争の始まり
現在、俺の周りには人だかりが出来ていた。まあ、集まっているのは主に女性だが・・・。
こいつらは俺を慕って組織に入った奴等だ。まあ、有り体に言うと俺に好意を寄せている奴等だ。
黄色い歓声を上げ、俺をもてはやす女達。お陰でリーンが不機嫌だ。頬を膨らませている姿が、何とも可愛らしい物だ。
しかし、時折寂しげに俺をちらちらと見てくる。
俺は苦笑を浮かべ、リーンの傍に近寄る。そして———
「リーン、俺はお前を愛している・・・。だから、機嫌を直せ」
そう言って、リーンの顎を指で持ち上げて小ぶりな唇に軽くキスした。瞬間、女性達が脳天に雷が直撃したかのように硬直した。皆、衝撃を受けたような顔をしている。
泣いている奴も居るな・・・。
ユウトとクロトはにやにやと面白そうに静観していた。そして、当のリーンは・・・。
「ふ、ふにゃあ~~~っ」
顔を真っ赤に染めてへたり込んでしまった。ふむ、やり過ぎたか・・・。後悔はしていないがな。
後悔するようなら、最初からこんな事はしないだろう。
・・・だが、問題は他の女性達だな。
見ると、泣きじゃくる女性や怒り狂う女性、虚ろな瞳で笑う女性がいる。ふむ、カオスだな。
ナイフを取り出し自身の喉を搔き切ろうとしている奴も居たので、そいつからナイフを取り上げた。
やれやれ、本当に面倒だな。そう思い、俺は溜息を吐いた。
・・・・・・・・・
それから一時間弱。ようやく騒動が収まってきた。現在、会議室に幹部達が集まっている。
しかし、それはともかく・・・。
「ん、えへへっ・・・・・・」
リーンの甘えた声が、室内に響く。現在、会議室は渾沌としていた。
リーンが俺に抱き付き、頬をすり寄せる。それを見て、殺気を飛ばす女性達。それを俺が睨み、無理矢理落ち着かせる。そんな状況になっていた。
何だ、この状況。
「まあ、良いか・・・。では———」
「いや、良くねえだろう」
ユウトの突っ込みが入る。しかし、それを俺は無視して無理矢理進める。
「まあ良いじゃねえか。・・・では———」
俺が言おうとした瞬間、室内に一人の青年が入って来る。何だよ、今話そうとしていた所に。
不服そうにする俺に、青年は慌てた様子で言った。
「し、侵入者です!!!武装した集団が攻め込んで来ました!!!」
その言葉に、ざわつく皆。しかし、それを俺は一喝して落ち着かせる。
「落ち着けっ!!!」
一瞬で全員が落ち着きを取り戻す。うん、その辺りは流石だ。まあ、軽く殺気を籠めていたんだがな。
「どうする?リーダー」
そんな俺に、ユウトが問い掛ける。どうするも何も、そんな物は決まっている。
「抗争の始まりだ。全軍、迎え撃つぞ」
俺は静かにそう告げた。さあ、抗争の始まりだ。俺は静かに嗤った。




