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カリスマ吸血鬼の森羅万象  作者: ネツアッハ=ソフ
11/12

神父との決戦

 「シン!!!」


 物陰からリーンが跳び出し、俺に()び付いた。その顔は俺に対する心配と不安に満ちている。


 俺は苦笑してリーンを抱き締めた。リーンの温かさと(やわ)らかさをこの身に感じる。


 「大丈夫だ。俺は何処にも行かないさ・・・」


 「シン・・・・・・」


 「大丈夫、俺はお前を愛している」


 そう言って、リーンを強く抱き締める。リーンも俺の背中に腕を回し、俺に抱き付く。


 しかし、その時———


 「ふんっ、中々見せてくれるな。化物(ばけもの)ども・・・」


 其処に、一人の神父が現れた。ああ、確かにこいつが残っていたな。俺は静かに身構える。


 あの時の神父だ。あとはこいつだけだろう・・・。


 神父もその拳を握り込む。こいつの拳法は中々厄介だ。それは、弱点を克服(こくふく)した今でも変わらない。


 「俺の名は海藤シンだ。化物なんて名前じゃねえよ」


 「・・・ヘンリー=レオンハートだ」


 俺はリーンを背後に庇う。リーンが不安そうな顔をする。俺は大丈夫だと、視線だけで伝えた。


 大丈夫。俺はリーンを遺して死にはしねえよ・・・。不敵に笑う。


 瞬間、ヘンリーの姿が消えた。その直後、俺のすぐ目の前に神父が現れる。


 一足飛びで一気に距離を詰めた。俺はそれを理解した。俺は腕をクロスしてガードした。


 しかし、ヘンリーのそれはフェイント。がら空きになった腹部を(なぐ)り付けてくる。


 「ぐっ・・・」


 「シンっ!!?」


 「ぐっ、があっ!!!」


 俺はお返しにヘンリーに蹴りを食らわせる。しかし、それをあろう事かヘンリーは耐え切った。


 「ふっ!!!」


 「ごっ!!!」


 ヘンリーの拳が、俺の顔面に炸裂する。


 ・・・其処からは、お互いに殴り合いの応酬(おうしゅう)だった。殴っては殴られの繰り返し。


 「があっ!!!」


 「ごああっ!!!」


 互いに殴っては殴られ、殴られては殴って。しかし、それでも俺達は互いに殴り続ける。


 もう、互いにボロボロだ。互いに肩で息をしている。


 「はぁ・・・はぁ・・・」


 「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」


 それでも、俺達は互いに構えを解かない。戦いを止めようとはしない。しかし・・・


 「もう・・・やめて・・・・・・」


 「「っ」」


 リーンの震える声が、俺達の耳に届いた。


 「もうやめてっ!!!」


 ついに、リーンが叫んだ。その瞳には涙が浮かんでいる。


 その泣き顔に、俺はぎょっとした。


 「もうやめて・・・。お願いだから・・・・・・もう・・・」


 「リーン・・・・・・」


 リーンは俺に抱き付き、涙を流していた。その泣き顔に、俺の胸がずきりと痛む。


 俺はリーンを抱き締めた。柔らかく、温かい・・・。


 そんな俺達を見て、ヘンリーは(しら)けたように溜息を吐いた。


 「もう良い。白けた・・・」


 そう言って、ヘンリーは(きびす)を返す。


 「もうお前達の許には来ない。もう、お前達とは会う事も無いだろう・・・」


 「ああ、そうかよ・・・」


 それだけ言うと、ヘンリーはその場を立ち去った。俺が意識を保てたのは其処までだった。


 俺の意識は、其処で暗転(あんてん)した。リーンの泣き叫ぶ声が聞こえた気がした。

次回、最終話です。

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