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カリスマ吸血鬼の森羅万象  作者: ネツアッハ=ソフ
10/12

黒幕と戦った

 都内にあるとある教会。その地下にある礼拝堂にて。


 其処に一人の男が巨大な十字架を前に祈りを捧げていた。その男の顔には黒い笑みが浮かんでいる。


 この男こそ今回の事件の黒幕(くろまく)、シオンだ。


 「おお、主よ。我が悲願達成の為、私をお導き下さい!!この世に化物(ばけもの)の居ない世を」


 「それが、お前の望みか?」


 俺は目の前の男、シオンに問う。シオンは凶悪な笑みを浮かべ、振り返った。その表情はもはや、あらゆるタガが外れていた。一言、狂気(きょうき)だ。


 「ええ、私の両親は熱心な神の信者でしてね。そんな理由で、たったそれだけの理由で両親は化物どもに殺されたのですよ。ふざけているでしょう?」


 シオンは言った。だからこそ、化物どもは生かしておけないと。狂気と憎悪の籠もった顔で。


 確かにふざけている。それが事実なら、復讐(ふくしゅう)に走る理由も納得出来るだろう。


 ・・・しかし。


 「甘えるんじゃねえよ。それが、他種族を滅ぼす理由になるか。直接お前の両親を殺した奴に復讐するならそれは良い。俺は否定しない」


 「・・・・・・・・・・・・」


 だが、と俺は続けた。


 「リーンや無関係な個人を巻き込むなら、それは到底許容出来ない。だから・・・」


 全力で、相手しよう。そう、俺は宣言するように言った。


 その言葉に、シオンの顔は明確に歪んだ。それは、憤怒(ふんぬ)の表情だった。


 「(うるさ)い!!お前に私の何が解る!!!」


 「解らねえさ。だから来い、受け止めてやるよ!!」


 お前の全て、俺が全て受け止めてやる。俺はそう言って笑った。


 瞬間、シオンの周囲を純白の炎が舞った。今なら理解出来る。これは、浄化の炎だ。


 全てを浄化する、聖なる炎だ。離れていても肌を焦がす程の熱量がある。


 ・・・直後、白い炎が俺を包み込んだ。恐らく、並の吸血鬼なら一瞬で灰になるだろう。


 それだけの熱量と聖性。


 「はははははっ!!!燃えろ燃えろ、化物など燃え尽きてしまえ!!!」


 地下礼拝堂を、シオンの哄笑(こうしょう)が響き渡る。しかし・・・。


 「・・・・・・こんな物か」


 「は?」


 俺は、掌を前へとかざす。それだけで、白い炎は掌へと吸収されてゆく。


 アストラルドレイン。浄化の炎も、俺にとっては吸収可能なエネルギーに過ぎない。


 俺は、シオンに薄っすらと笑みを向けた。


 「もうお前も無為に恨むのは止めよう。他ならぬお前が疲弊(ひへい)するだけだ」


 「くっ!!!」


 直後、シオンは銀の短剣(たんけん)を取り出し、自身の胸に突き刺した。


 シオンは血を吐き、崩れ落ちる。


 「!!?」


 「化物に屈服するぐらいなら、死を選びますよ・・・。Amen(エイメン)


 最後にそう言うと、シオンは静かに事切れた。俺はその死体を前に、初めて表情を悲しげに歪めた。


 「・・・・・・馬鹿な奴だ」


 俺は、只それしか言えなかった。

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