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カリスマ吸血鬼の森羅万象  作者: ネツアッハ=ソフ
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プロローグ

 全てに(かわ)いていた。


 全てに()えていた。


 その渇きを自覚したのは、まだ小学校の三年の頃だった。一言で言うと、俺は何でも出来た。


 勉強も運動も常に学年一位を保持した。どころか、小学校を卒業する頃には難関の大学卒業レベルに達していた。


 その頃には、運動能力も大人を軽々と負かせる程度にまでなっていた。


 求心力も人並み外れていた。皆、俺を信じて付いてきた。


 周りの大人たちは最初、神童だと喜んだ。しかし、次第に俺を不気味に思う様になっていった。


 つまらない。退屈だ。渇きは酷くなるばかり。


 大学生になって、<レギオン>という如何にも怪しい組織を造ってもみた。しかし、やはりそれも全てが上手くいった。


 組織を造って一週間も経たない内に、三百を超える人が集まったのだ。一か月もすれば、その数は約千人を超えた。


 当然、それを(うと)ましく思う個人や組織も居た。俺達を潰そうと、様々な手段を使ってきた。


 金や力に物を言わせる者も居た。権力で従わせようとする者も居た。策を弄する者も居た。


 しかし、俺達<レギオン>はそれ等を尽く返り討ちにし、取り込み、更に大きくなった。


 友人曰く、俺のカリスマ性は異常らしい。果たしてそうだろうか?俺個人としてはそうは思えない。


 つまらない。退屈だ。渇きは更に酷くなる。


 俺は只、ままならない人生を謳歌(おうか)したいだけだ。もっと人生を全力で楽しみたいだけだ。


 こんな才能なんて、邪魔なだけだ。


 まるで暴走する車だ。止まる事を知らずに走り続ける。或いは()えた獣か。


 我ながら下らんな・・・・・・。


 夜道を歩きながら、俺は苦笑する。七月七日、19:35現在・・・。空は既に暗く、人通りも少ない。


 長野県、とある山奥にある街。友人の家からの帰り道。


 「さて、こんな夜は何か怪異(かいい)の類でも出ないかね」


 ふと、呟いてみた。と、その瞬間。一陣の風が吹き抜ける。凍て付く様な冷たい風。


 俺は目を見開き、息を呑んだ。目の前に、流れる様な黄金の長髪に赤い瞳の女性が居た。何処か憂いの表情で月を眺める女性。月明かりで輝く金髪、透ける様な白い肌。


 息を呑む程美しかった。しかし、そんな事はどうでも良い。そんな事は些細(ささい)な事だ。


 何故なら、彼女は・・・。


 「お前は・・・人間では無いな?」


 「っ!?」


 女性は勢い良く振り向き。そして、愕然とした瞳を向けた。恐らく、俺も同じ顔をしているだろう。


 何故なら俺達は、この瞬間互いに()せられていたのだから・・・・・・。


 「お前は誰だ?」


 「吸血鬼、リーン・・・・・・・・・」


 女性、リーンは鈴を鳴らす様な澄んだ声で答えた。その声が、不思議な程に俺の心に響く。


 「俺の名はシン。海藤シンだ」


 こうして、俺は一人の吸血鬼と遭遇(そうぐう)した。

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