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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

叶わないから花を吐く

作者: 鷹弘

花吐き病という、設定を使ってます!

短編BLです。苦手な方は回れ右で…

数年前に一度消したものです。かなり文章力が無かった頃のなので、表現がめちゃくちゃですが、良かったら…

 最初は赤い、紅い薔薇だった。


 急な吐き気の後に自分の口から出たソレを見た時、すぐにクラスメイトの顔が浮かんだ。

 世間一般で言う腐女子の彼女は、男性同士の恋愛を薔薇と表現する事が多々ある。そんな友人の顔が浮かんだおかげで、なんとかその場では取り乱さずに済んだ。……が、問題はここからだ。

 取り敢えず、静かに取り乱した後に調べたところ、これは『花吐き病』__正式名称は嘔吐中枢花被性疾患__と呼ばれるらしい。片思いを拗ねらせると発症し、両思いにならないと治らない__らしい。

 さっきから『らしい』ばかり多用するのには訳がある。本当に実在するか判明していない病気であり、且つ両思いになる以外の治療法がないのだ。……まあ、自分に対してとことん無頓着な自分にはさして大きな問題ではないが。

 さて、肝心となる病気の原因だが、コレは明らかだ。明白だ。自分自身がよく分かっている。むしろ今までよく発症しなかったものだ。

 『だったら、さっさと両思いになれよ』。そう思う人が大半だろう。俺もそれくらいは分かる。だが、片思いはしているが、コレは叶うものではない。と言うより、叶えてはいけないものだ。なにせ相手は、同性であり、恋人がいて、何より__自分の兄だ。


 無意識だろうが、恋愛感情を抱いたのは小学校5年生頃。気づけば既に好きだった。でも幼いながらに家族は、同性は付き合えない事を知っていた。

 家族というポジションは好意が恋愛感情だと気付かれる心配が無い分、割と苦しい立場だ。一番近いようで実の所一番遠い。

 やがて、兄には恋人が出来た。綺麗な人で、クラスにいたら中心人物になりそうな人。内気な兄がよく付き合えたものだと当初は驚いたものだったが、なんでも委員会が一緒だったとか。普通に祝福した。

「よく兄貴が付き合えたね」

 と、皮肉付きで。同時に、コレで兄への思いが断ち切れると安堵もした。

 この後、間も無く自分もクラスの女子__さっき話した腐女子__と付き合い始めた。

 だが、神様というのは存外意地悪なようで。自身の彼女の事は勿論好きだけど、兄への思いは今も尚、消えずに残っていた。しかし、これを知った時の俺は、別の方向からの視点で考えるようにした。もう良いんだと、ずっと好きな人を忘れないのは素敵な事だと思うようになった。

 __なのに、花は出てきた。思いが一番強い時には出てこなかったのに。今更になって。


 こんな事を考えていたら次々と花が喉を無理やり開いて出てきた。

 向日葵、パンジー、椿、ガーベラ……。名前の分からない花も沢山、出てきた。


 __兄貴が帰ってくる前に片付けなきゃ。


 腰掛けていたベッドから立ち上がり、ゴミ袋を取りに行く。

 この症状を誰かに言うつもりはない。一生隠し通すのは無理かもしれないけど、出来る限り気付かれないようにしたい。

 家族や友人達は気付いたら治す方法を探してくれるかもしれない。その時に発症条件も見つけるだろう。そしたら、誰が好きなんだ、協力するから早く治そう。言ってくれるだろう。でもそれは、兄や兄の恋人、自分の恋人にまで不快な思いをさせる事に繋がる。


 自分の恋人が、自分の兄を好きだと知ったらあいつはどうするだろう。「BLだ‼︎」とか言ってテンション上げて、笑い飛ばしてくれるだろうか。

 自分の恋人の弟が、いわゆるホモだと知ったらあの人は兄から離れるだろうか。それは嫌だ。自分のせいで兄の幸せを壊したくない。

 ……では、好かれている本人。兄はどうだろうか。家族の一員である弟が、自分と同性である奴が自分に恋愛感情を抱いていると知ったら。優しすぎる兄のことだ。傷つけないような言葉を必死で探すだろう。


 自分が楽になりたいが為に、周りの人を混乱させたくはない。傷つけたくは無い。ならば、言わないのが一番だ。元から大人しい方だし、口数が減ったりしても、そこまで怪しまれはしないだろう。


 そう結論付けたら、もうこの話題はお終い。

 そう考えながら片付け終わった花をベッドの下に隠し、鍵の開ける音のした玄関へと向かう。


「ただいま。今日は母さん達遅くなるみたいだし、スーパーで寿司買ってきた」


 安売りだったんだよ。

 得意げに言う兄はいかにも社会人成り立てと言わんばかりのパリパリとしてるスーツ姿でスーパーの袋を片手に玄関に立っていた。

 一緒に居れればそれで良い。今までだってそうだった。花を吐いたからって暮らせなくなるわけじゃない。なら良いじゃないか。叶わなくても、近くにいれる。むしろ、いいじゃないか。好きな人と一緒に生活が出来るのだから。


「おかえり。マグロは絶対に俺のね」


 靴を脱ぐ為に背を向けた兄にバレない様に吐いた花は、紫のチューリップだった。



(紫のチューリップの花言葉は『不滅の愛』)

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