決断
ケンヤからストリートレーサーにならないかと提案された秋名は、やっと自分の車が持てる。
それも憧れのZをチューニングをバトルの賞金の半分でやってくれるという。
しかしストリートレースはサーキットと違い危険度は段違いで違法行為でもある。
そして秋名は一つの決断をする。
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「チューニングの金とマシン代なら、ストリートで買った時の半分で良い。どうだやるか?」
少し悩んだ興味と恐怖が混ざっていた。そして
「俺は・・・・・・やる、ストリートレースに参加する」
父の後を追っていくようで、変な気分だが
「決まりだな、明日の朝出勤前に取りにこい整備しといてやる」
ショップを出て会社の部長に明日から、自動車通勤をすることを伝え了承を得た。
翌日ケンヤのショップに行くと店の前でケンヤが待っていた。
「待ってたぞ、ツインターボはそのままで足回りだけ街乗りにしておいた。」
と言って鍵を投げた。
ふと思い出すとZと会った時エンジンをかけていなかった。
シートに座りベルトを付ける、そして鍵をシリンダーにさして回した。
メーターが一度振り切れ、エンジンが目を覚ましたことを視覚的に伝えてくる。
そして体にエンジンの鼓動が伝わる。
少し吹かしてみた、V6の音だ。
俺は今、目・耳・体でZを感じている。
クラッチを切って1速に入れガレージからゆっくりと道にでた。
2速、3速と入れていく、朝早いので車は走っていない。
シフトチェンジに違和感は無い、初めての車だからなのかもしれないが。
そのまま自転車で通勤していたころの、峠に入る。
この時間のこの場所は車は一切通らない、
2年間この道を毎日のように使ったが走っているのを見たことがない。
一つ目の左カーブを曲がる。かなりフラットな乗り心地だ
次の右カーブを少し速度を上げて最高のラインで抜ける、立ち上がりも文句は無い
次はドリフトと思ったが初めて運転する俺にそんな事ができるわけがない。
だが車は違った
カーブに入ったとたんリアが滑り出すのがわかった。
慌ててカウンターを当てるだがハンドルは回らない、必死になって回すが回らない
だが車は確実に滑り制御されている。
「危なかった、初日で事故るかと思った・・・」
だが自分の思い描いたラインだった、まるでZが俺の意思に合わせて動いているかのようだった。
俺はそのまま峠を下りきり、会社の駐車場に駐車した。
車から降りたときたまたま同じ部署の同期”中村鈴奈”と一緒になった。
彼女にしたいくらいいい子だ。
「おはよう、今日から車?すごい車だね」
車を知らないであろう鈴奈に、知り合いから譲ってもらったんだと説明する。
この時一瞬懐かしいものを見る目になったのは、気のせいだと思った。
提出の書類が期日までに終わりそうにないから
自分の席についてパソコンを起動するがZの機動が気になって、集中できない。
「秋名さん自分のマシンがそんなに気になりますか?」
予想外の発言に驚いた
「え?」
クスっと笑ってこう言った
「だって、私と一緒に峠を流す仲間がマシンから降りて来た時と同じ顔してたから」
自分の耳を疑った彼女はいま間違いなく、峠を流すといった。
「鈴奈、今お前峠を流すって言ったよな?走り屋なのか?」
彼女は間違いなく言ったのに聞き返してしまった
「そうだよ、この町唯一の走りやチームHeresyのメンバーなんだー」
俺はHeresyに聞き覚えがあった、とても身近で関係の深いあの人から。