物体
「これはなんだろうか」
「これは何でしょうね」
「まるで馬のようですね」
「ええ、また扇風機のようでもある」
「しかもヒマワリのようだし」
「そしてペットボトルのようでもある」
「そもそも非生物か生物か」
「生物だとしても植物なのか動物なのかもわからないね」
「何の目的でここにあるんだろう」
「よくわからないな」
「ここにボタンがありますよ」
「ほんとうだ、機械のようですね」
「押してみましょう
・・・
うわっ。ぬっと動いた」
「まるで動物のような反応ですね」
「もっと特徴を探らないといけないですね」
「ここに何か、かいてありますよ」
「確かに、文字のような絵のような図形のような何かが
かいてありますね」
「文字だとしても意味が分からないし」
「絵としても不思議ですね」
「一体何なんだろう」
「そうだ、一回さわってみようか」
「それはいいね」
「うむ、柔らかいような硬いような
滑らかなようなざらざらしたような
湿っているような乾いているような
不思議な手触りだね」
「どれどれ。
・・・その通りだね」
「何なのか全く想像できないよ」
「なにか話しかけてみようか」
「そうしよう」
「もしもし・・・
何も起こらないね」
「いや、何か音がしたように感じたが」
「あれ、なぜだろう、わからないな」
「もっと特徴をあげよう」
「そうだ、それがまずすべきことだったね」
「さっきボタンがあったね」
「あと、そこにレバーのようなものがあるね」
「あれはレバーではなく耳のようでもないかい」
「それは言えてるね」
「そして、あの部分、まるで目のようではないかい」
「いや、液晶画面のようにも見える」
「確かにその通りだよ」
「あの足のような部分は移動に使うのかな」
「いや、あれは実はカメラなのかもしれないよ」
「確かに言われてみればカメラにも見えるぞ」
「何に使うものなんだろう」
「さっぱり分からないね」
「そもそも『モノ』なのかな」
「『生き物』かもしれないね」
「もしかしたら、これは『この世の全てのものの反対』、
かつ『この世全てそれぞれの総和』なのかもね」
「え、なんでだいそれは」
「全てのものは逆のものがあるから存在する、と言うだろう」
「ああ、光と影みたいにかい」
「そう、でももっと反対のことが分かりにくいもの、
例えば『鴨居の反対』であるものは何だろう」
「想像つかないね」
「だろう。でも、ないとすると鴨居は存在しないことになる」
「それはおかしいね」
「だから『鴨居』のように
『反対のこと』があいまいなものの反対のものを含む
この世の全てのものの反対である物体。
それがないとこの世は存在できない。
それがこれなんじゃないかな」
「なるほど。でもこれが、全てのものの反対、とは何故だい」
「これは『この世の全てのものの総和』
と言っても差し支えないよね」
「確かに、これはテレビのようだしウサギのようだ。
そう考えても差し支えないだろう」
「ところで、この世全ての成分のある一部を集めれば
あることの反対ができるはずだよね」
「だろうね」
「だから全てのものの総和であるこれは
全てのものの反対なんじゃないかな」
「確かに、そう言えるね」
「ところで、この世のあらゆることは全部必要だよね」
「そうだね」
「そうすると『この世の全ての反対』であるこれは不必要ということになるね」
「だとすれば『この世の全てのものの総和』は不必要なのかい」
「必要なものでも集まりすぎると不必要なものさ。
たとえ、それが世界全体でもね」
「まぁ、そうかもね」
「でもこれは必要物を存在させるのに必要だからね」
「不必要でも必要なんだね。
不思議だね」
「ああ、この世の全ては不思議さ」