芽吹きの春は、カラフルに。
良い香りがする。
右から? 左から? 上から? 下から? どこでもない。だってどこからも、良い香りはしているのだから。
でもこの香りはなんの香りなのだろう。
とても素敵だから、できることならずっと嗅いでいたい。
まあ。わたしの他にも、同じことを思う子はいたのね。
香りがする、いろんな色のそれを眺めていると、チュッと口付けをしていく影があった。
小さくてひらひらとした、黄色の翅が生えている。白い翅のものも、二色が混ざるものもいる。
これもまた香りのものと同じで、いろんな色があるのだろうか。
なんだか周りじゅうがたくさんの色で溢れていて、楽しい気持ちになる。
スキップでもしたくなるけれど、そうしていて足で踏みにじってしまってはいけない。踏まないように気を付けないと。
それにしても、素敵な光景ね。前はここにきても真っ白だった気がするんだけど、どうしてかしら。
美しさに見惚れながらも、わたしは考え込んでみる。
考えて考えて、香りに包まれた良い気持ちの中で考えていると、その答えがわかったような気がした。
あっそうだわ! 色がかくれんぼしていたのね、きっとそうよ。
我ながら名推理。
これもそれも、たくさんの色がわたしを助けてくれたからだ。
一色に染まる世界もきれいだけれど、こうして賑やかな世界もまたきれいなものね。