始まりの冬は、白い色。
真っ白だった。
視界に映る何もかもが白く、それはまるで、白以外の色を失ってしまったようにも思えた。
美しい空間、だけれど哀しい空間。
白い。家も、道も、木々も、動物も、人間だって白かった。でもその中で、空を見上げると、そこだけが黒く染まっている。
黒い空は、白い輝きを落とし続けている。
だからわたしは、空の上の白がすべて地上に降ってきて、空は黒くなってしまったのだと思った。
「それは雪というんだよ」
道の白を指差して、彼はいった。
その声は優しくて穏やかで、その姿は顔も手もしわくちゃで腰が曲がっていて、そして何より――彼の髪の毛やら眉毛やらは白かった。
あなたのその白い髪も雪なの?
不思議に思ってわたしが首を傾げると、彼は「はっはっは」と、しわしわの顔で大きく笑った。
何がおかしいのかわからない。けれどわたしも、何かがわかるのだと思って、彼の真似をして大きく笑ってみた。
何もわからない。
ますます不思議で、わたしは首を傾げる。
「雪はこうして冷たい。わしはまだ、冷たくはなっておらんよ」
そういうと、彼は道に転がる白――雪をわたしの手の上に乗せてくれた。
冷たい。白色は、こんなにも冷たかったのか。
次に白い髪の毛に触らせて、今度は小さく笑った。
よくわからないけれど、白色は冷たくて、だけど優しくて暖かい色。