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第2話 メイド見習い

第二話、投稿です。

「ま、魔王?」

 そのメイドの口から紡がれた言葉に、一瞬だけ思考が停止してしまった。

 ちょっと待て、魔王ってどういうことだよ。聖女じゃないのかよ。

 いや性別転換したいわけではないのだが、それでも色々と覚悟していた身からすれば、斜め上にもほどがある。


 ……そういえばファフニールってファンムーゲンの領土にある山に生息するんだったか。

 更によくよく考えてみると、タイタンフォレストはファンムーゲンとイーリリンの間にある魔性の森(ディビリズム)に生息するやつだし。

 あぁ、近くにヒントがあるのに見逃していたっ。



「は、はい! 貴方様はこの国……ファンムーゲンをお救いして下さる“英雄”であると、ルフォート様からお聞きしたのですがその、トラブルがありまして」


 このメイドが言うに、俺は召喚された際体がこの世界の空気になれず、成功直後ぶっ倒れてしまったとのこと。

 召喚補正というものとは関係がないと言いたいのか?


「その時からこの体だったわけ?」

「へ? は、はい。そうだと思います。なにぶん、英雄様を初めて見たのは今日の朝、この部屋のベッドの上でのことでしたので」

「今、いつ頃?」

「えーっとですね、たしか夕方から夜になる前の鐘がなる前だったと思います」

「ここだと、鐘が主流なの?」

「はい。朝、昼、夕方、夜それぞれを示す4つの鐘がこの国にはありまして、鐘の音を合図に、私たちは生活しています」

「なんというか、不便だな」

「ふ、不便……ですか?」

「あぁ、俺のいた世界だと、時計という時間を示す道具があってな。一刻一刻を正確に教えてくれるんだよ」

 正確には最近のものはっていう言葉が入るんだけどな。

 俺は自分のいた世界の時間について話してみる。


「そ、そうなんですか!? でもそんなに時間を細かくして一体どういういまがあるのですか?」

「そりゃ、行動を効率よくするためだよ」

「効率良く……ですか?」

「あぁ。何分後にこれを、一時間後にはアレをというふうに、時間を決めておけば周りに迷惑をかけずに済むだろ?」

「そうなのでしょうか? その人によって時間の価値観は違うと思うのですが」

「だけど、一日はそれで待ってくれるのか? 時間にルーズだと……例えば隣国との大切な会議がある。時間が指定されていたとして、『鐘がなるちょっと前』なんて、誰がわかる?」

 その『ちょっと』を見誤れば、相手国に隙を与えてしまう可能性がある。いつの世も寛大だのなんだの言ってる奴は、平和ボケしているかあるいは何かを狙ってる奴だと、俺は思っている。


 俺の言っている意味がわかったのか、感嘆とした表情を浮かべていた。


「凄かったのですね、英雄様のいた世界って」

「いや、それでもルーズな国がほとんどだったんだよ。俺のいた国、日本が特別効率厨だっただけさ」

「効率……厨?」

「ピ?」


「仕事の効率や時間に厳しいってことだ。所で、名前はまだだったね。俺は直人。遠山直人っていうんだ」

「英雄様は、トオヤマナオト様って言うんですね。お名前の長さから、貴族階級の方のようですが」

「俺のいた国に貴族なんていないよ。王族はいるんだけど昔の名残みたいなもんでいるだけだし。代わりに国を動かす存在がいて、それを……この世界でいう平民の中から決めるんだ」

「ふわぁ……なんだか、この国と似てますね」

「魔族は貴族階級から選別されているんじゃ無いのか?」


「それはご先祖様たちのことですね。トオヤマナオト様の世界にも人以外の種族がおられるのですか」

「いないよ。残念ながらね」

「そう……ですか」


 しょんぼりとした顔になるクリスタ。人間しかいない世界から召喚された俺が魔王になるというのは、流石に不安が残るか。


「目撃情報があるだけで、完全には確認されていないだけだよ。ところでファンムーゲンだっけ。ここは国の中央にある城だと考えていいのか?」

「はい! 正確には、城ではございません」

「というと?」

「ここはソロモン城を守る七十二の塔の一つ、先代魔王ルシフェル様の息子ルフォート様が管理している第三塔三十二階にあるこの部屋が、魔王様の仮のお部屋となります」


 つまりソロモンの七十二柱といったところか。



 魔王の部屋と言いながら、何もない。

 召喚直後に倒れたのに医療器具は見当たらない……いや、それはこの世界にあったらおかしいか。せめて水の入った桶と布は置いとこうよ。


「その、ご不満……ですよね」

 そういいながら彼女はこの部屋の内装をチラリと見た。

 確かに、不満がないかといえば嘘になる。

 もう少し生活に必要なものを置いて欲しかったものだ。

 書籍やらなんやらと。

 だが、この空間は、これでいいとも思える。

 シンプルなのに、それがいいと思えるのだ。


 というか、これ以上の豪華な部屋はないと思えるのだが?


 壁全体に使われているファフニールの竜皮は丈夫で脱臭、防音性があるし、家具に至っては、イーリリンでは魔剛オリハルコン硬貨が4枚は必要な超高級ものだ。

 日本円で加算するなら、一万円札を100枚束にしたものを8つ用意しなければ買えないものということになる。


「いや、そんなことはないさ。どっちかというと飾らない方が好きなんだ」

「そうなんですか! 私も、凝ったモノとか苦手でして」

 なんか話が微妙に噛み合ってない気がするけど、まあいいか。


「そうなんだ。気が合うね」

「ふふ、ありがとうございます」

 その微笑みは、俺よりも年上なのだろうにとても可愛いらしく目に映る。


「あ、申し遅れました。本日より英雄様の身の回りのお世話をさせていただきます私、メイド見習いのクリスタ・アムルムといいます。この子は私のともだ……じゃなくて、相棒のグリフォン『スピリトゥス』といいます」

 そういって佇まいを正してお辞儀するクリスタ。スピリトゥスと言う名前のそのグリフォンは声を出さず頷いた。

 よく躾けられている。

 グリフォンはたとえ産まれたてを従魔にしたとしても、いうことを聞かないことで有名な魔物だ。


「よくて躾けられているんだな」

 自分が褒められたことが分かっているのか、尻尾を左右に動かしながらクルクルと鳴くスピリトゥス。


「ありがとうございます!」

 再度頭をお辞儀するクリスタ。一つ一つの動作が洗練されており、見習いというのは嘘なのではないかと思ってしまうほどだ。彼女はとても優秀なのだろう。


 メイドという役職はとても大変だ。朝から晩まで働きっぱなしで、仕える相手によってはセクハラされたりするのだから、心身ともに負担がものすごくかかり、長く続くことはまず無いとのこと。


「見習いって言ってたけど、この城に入って間もないの?」

「いえいえ、8年目になります」

 人間からすれば長い年月が経っていることになる。だというのに見習いというのは、魔族の中ではそれが普通なのだろうか。


「8年もしてて見習いなのか」

「この城では普通のようです。なんせ、正規になる条件は城の構造を全て把握しておく事、とのことで……」

「へー。覚えきれないということは、そんなに大きいんだ」

「大きいなんてものじゃないです……なんですか、ソロモン城と72の塔を合わせると成体のムンタニヤ四匹分の大きさだって。言われても見たことも無いのに分かるわけないですよね!」

「そんなこと言われても、分かんないよ」

「し、失礼しました」

「ピルル……」

 実際は知っているのだか。

 まぁ、そりゃ分からんわな。常に山に擬態している奴らのことなんて。

 歩く天災。若しくは恵みの王と呼ばれる彼奴らは、まずそうそう見かけることはないだろう。


 成体四匹分ということは、富士山四つ分の大きさということになるな。

 歩くのが面倒そうだ。


 これからこの城に住むのかと萎えていると、ハッとした顔になり慌てて羊皮紙を取り出し何かを書きはじめた。


「スピリトゥス。メイド長に英雄様が目覚めたことをお知らせして」

 クリスタはそう言って紙を丸めスピリトゥスの口に咥えさせると扉を開ければスピリトゥスは喉を鳴らし了解の意を伝えると部屋を出て行った。


 クリスタはそっと扉を閉めたかと思うと、パンっと両手を合わせた。


「さて! メイド長が来る前にお風呂に入ってしまいましょう」

「ん? そんなに臭うのか」

 言いながら嗅いでみれば、僅かに酸っぱい臭いが鼻を刺激した。

 確かに、これはちょっとまずいかもな。


「じゃあ、風呂に案内してくれないか」

「はい、かしこまりました」

 そうやってニッコリと笑うクリスタの顔に少しドキッとしたのは、内緒だ。



一週間以内にとうこうすると言って有限実行しました。

よっしゃ!



というわけで、今後次話投稿後一週間以内に投稿出来るよう努めていこうと思います。

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