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プロローグ1

まず初めに、みなさんお久しぶりです。

先月の活動報告の宣言通り、投稿いたしました。

ただし、毎日投稿のゆめは叶いませんでしたよちくしょう。




本作品は「助けてください、魔王様!」のリニューアルver.になります。

変わりすぎとか言っちゃやーよ。

 夏の炎天下の中の、昼を告げるチャイムが鳴り響く。古いからか、その音は録音されていた本来の鐘の音から遠く離れている。不快以外のなんでもない。


 やっとこの暑い教室から逃れられると半数以上の奴らが我先にと前と後ろの扉からでていく。

 暑いからってそこまで急がなくてもいいだろうに。


「あだっ」

 一人、つまづいて柱に激突した。めっちゃ痛そう。



 教室と違い食堂には唯一エアコンの使用が許可されている場所である。

 夏の暑さに耐える俺たちにとって最高の場所ではある。だからって楽園なんて大袈裟な名前をつけるのはどうかと思うが。

 まあ確かに一年生である俺たちにとっては最高の場所だ。


 時間的に日差しが最も部屋に降り注ぐ最悪の時だというのに、先生共は極力部屋の明かりを使わないようにするため、教室に入ってきてまずすることはカーテンを全開することだ。

 ここに入ろうとしたのは、家が近いというのもそうだが、なにより勉強するのに良い環境だよという、中学時代の先輩からの情報を頼りにしてのことだったのだが。


 しかし、その先輩が言ってたことは本当だったため、責めることは出来ない。


 というか、教師も教師だ。

 暑いからカーテンを閉めようものなら明かりをつけなければいけなくなるから開けとけ。団扇で仰ぐなとか言ってくる。

 昨日なんか科学担当の山根が太陽の光は最高の省エネ家電だ。それを活用しないなんて君達はバカなのか? と遠回しに言い言ってきた時には、クラス一丸となって殺意と共に消しゴムを投げたのは記憶に新しい。

 今日は休んでいるらしい。辞める日は近いとみる。


 ノビを一つした後、クラスに支給されている弁当を入れるためのクーラーボックスから自分のものを取り出す。節約を履き違えてる気がするぞこの学校。


 飯を食おうかと自分の席の方を見ると、いつもは空いている隣の席に。二人の見知った男女が座っていた。


「おーつかーれーっ」

 語尾に星がつきそうな感じに言いながら、手をブンブン振るたび、振り子のように揺れる二つの束ねられた髪とプルンプルンとまるで呼応するように揺れるデカパイの名前は勝又寛子かつまたひろこ。胸と筋肉に栄養を取られたせいでちっこい代わりに馬鹿力を持っていることから、俺はゴリラ女と呼んでいる。


「よっ」

 手を軽くあげて挨拶してきた男はポニテ男子の三嶋敬太みしまけいた

 勉強やスポーツ、家事と裁縫もこなす。まさに完璧男子……だったんだがな。



 この二人は一応俺の幼馴染みなのだが、どういうこと訳か中学の頃から付き合い始めている。なにか俺に恨みでもあるのか、よく目の前でディープな口付けを見させられたよ。思い出したら殺意が湧いてきた。


「ここにいるなんて珍しいなバカ夫婦」

「バカ夫婦ってなんだよ、お疲れさん」

「そうよ! 惚気のろまわってるわけじゃないんだから」

「じゃあなにか? 昨日俺の目の前でキスしたり胸触ったりあそこさわったり——」

「わーわー!」

「ストップストップ! 俺たちが悪かった。今後は自重するからさ、その不機嫌オーラ抑えてくれ」

 それより飯だ飯、といいながら弁当を開け始める敬太とそれに同意する寛子。絶対わかってないよなお前ら。

 ジト目で二人を見た後、俺も弁当を開ける。が、その中身を見て固まってしまう。

 別段、昨日の晩メシの残り物であるヒレカツや茹でた野菜などが入っている。それ以外では漬物が入ってたり、栄養面で考えれば最高と言えるだろう。


 キャラ弁ならぬエロ弁ってか? 健全なお子さんには見せられんぞこれ。

 女性の胸を象った目玉焼きの間にソーセージを挟み、かまぼこで口を作るとか。さらにその『絵』は卵焼きの上にあり、まるでミシンをつかったかのようにパスタで縫われている。文字通り、縫われているのだ。

 どうすればこんなものができるのだろうか。才能の無駄遣いというかなんというか、馬鹿だ。


「これ作ったの、あの人だよな?」

「ああ、(ゆい)姉だよ。何がしたいんだよほんと」

 妙にウキウキしてたと思ったら、あのビッチめ。ま、この見た目以外はバランスのとれた昼食なんだし、いっか。


 目玉焼きとソーセージをまともな見た目になるよう配置し直し、俺は昼食を始めた。


「そういや直人、お前いかないのか食堂に」

 他愛もない話をしながら、食べ終えた後の時間をどう過ごそうか考えていた時、敬太がそう尋ねてきた。


「いかないけど。なんかあんの?」

「なんかさ、この夏限定の『キュンヒエッ☆アイスパフェ』というのがあるらしくて。直人ならチャイムと同時に買いにいけるんじゃないかと思ってな」

「アホか、そんなこと言うぐらいならお前が買いに行けよ」

 というか、その内容だと食堂内でしか食えない代物のような気がするんだが。


「そうよ、ナオが可哀想じゃない」

 同意してくれるのは嬉しいんだが、彼氏の目の前で抱きしめないでください寛子さんや。そのパイナップルの双丘を押し付けないでください。ポニテが鼻を擽り、思わずクシャミが出てしまった。


「へくしっ」

「きゃっ、横でくしゃみしないでよ」

「ならとっとと離せ。お前の髪が邪魔なんだよ。つか、暑い」

「いいじゃない、幼馴染みなんだしー」

「理由にもなってねー! つか、幼馴染みだからっていえばなんとかなると思ってるのか!?」

「え、幼馴染みってこういうことするんじゃないの」

 肩とお腹に手をおいて引き剥がそうとするものの、なかなか引き剥がすことができない。

 相変わらず女とは思えない馬鹿力を持ってるな。しかもまだまだ力は上がっている、ゴリラ並だ。


「アニメの見過ぎだ。つか、そろそろシャレにならんから離せよ発情ゴリラ女ッ」

「ゴ、ゴリラ!? 女の子につける名前じゃないよね」

 寛子は信じられないと言わんばかりに通常時でも大きいその目を更に開く。撤回して欲しいなら出力を更にあげたその腕を離しやがれ。


「んなほっそい腕のくせしてキン○コング級の馬鹿力持ってる奴をゴリラ女と呼ばずなんという」

「ひっどーい! そんなゴリラ女に昔、キスしたとのはどこのどいつよ!」

「あれはお前、川で溺れてたから助けて引き上げたら心臓止まってたからだろ。必要なことだった。それだけだ」

 そして今の状況と全く関係ない!


「でもでも。ファーストキスは」

「人口呼吸にファーストもセカンドもあるかっ。ノーカンだ、ノーカン」

 そうしてると、敬太が鼻をならしてそっぽ向いてしまった。

 そりゃそうだ。幼馴染みとはいえ、自分の彼女が他のヤロウに抱きついているのを見るのは耐えられんわな。

 だけどな敬太。これ寛子の策略だから。高速で首を元に戻してみ。今なら悪い笑み浮かべてるこいつが見れるぞ。


「やーん、嫉妬するとか、かーわーいー」

「し、嫉妬なんかしてねーよ!」

 ようやく俺から離れたと思えば、敬太に抱きつき始めた。たしかに顔はそのままだし、高校入っても身長が伸びておらず、さらには童顔。声は昔と比べると、わずかに低くはなっているが、それでも子供っぽさが抜けていないから、可愛いといえば可愛いのだろう。

 だからって抱きつかれてニヤけるな。童顔が台無しじゃねーか。

 寛子は敬太の胸に頬をこすりつけた後、潤んだ瞳で彼の目を見つめた。


「ねえ、今日帰ったら、また……シよ?」

「え、えと……っ!?」

 頷きかけた敬太に向かって箸をぶん投げる。避けても当たるスレスレの所を狙ったが、かすりもしなかった。

 寛子が錆びた人形のような首を回してこちらを向く、その顔を青ざめていた。

 残ったもう一本の箸をユラユラと揺らしながら、少しドスのきいた声で言う。


「ケツに箸ぶっ刺すぞコラ」

 君の頭には自重はないのか。新たな扉開いてやろうか?

 敬太も流されかけてんじゃねーよ。さっき自重すると宣言したの、早速撤回する気か。予想はしてたけど。


「直人は落ち着こう、な? ヒーロも、そういうのは食事中に言わないの。さっきも自重しろって言われただろ?」

「ぶー……ぶひっ!?」

 我に返った敬太がどうどうと手で制してくる。頬を膨らませぶーたれる寛子の鼻をギュッと押すと豚のように鳴いた。なにこれ面白い。

 さっきの仕返しとばかりに鼻を押したり離したりして反応を楽しんでると、俺の指から逃げた寛子がそういえば次なんだっけとが聞いたきた。


 俺はメガネを外して(・・・・・・・)教室の後ろにある掲示板に貼られている時間割を見る。

「えーっと。確か……あ、体育だ」

「あー。じゃあ直人はサボりか」

「なんだよサボりって。別に好きでそうしてるわけじゃねーからな?」

「分かってるって」

「アレを知ってるの、私たちだけだし。それに」

「つーわけで、飯食ったから保健室行くわ。じゃ、イチャつけばいいから」

 ごちそうさんと言いながらさっさと弁当箱を片付け、暇つぶしになりそうなものをかばんから取り出しさっさと教室から出て行った。


「自重はしなくていいのかよっておいヒー……んむぅ!? んー! んー……んん」

「うふふ、いいのいいの、さ。昼休みはこれからよ」

 ふかぁーいキスを味わった敬太は腰が抜けたようで、寛子に体を預ける。彼の頭を撫でながら、今度は耳を攻略するつもりのようだ。

 突如できた桃色空間に顔をしかめる者が続出したが、俺には関係ない。


 だから止めさせろと視線で訴えられとも、どうにもできない、諦めろ。

 本で肩を叩きつつ、俺は教室から出た。





 今日が女子の身体測定日だったため、残念ながら保健室は(男には)開いてくれなかった。


 仕方ないと思い事務室から鍵を借りて屋上に行くことにした。職員室は面倒な奴等が多いから、事務室から借りるようにしている。何より知り合いがいるから、話が通りやすい。校長? 従姉妹の祖父ですけど何か。


 時間的に太陽は中天あたりに差し掛かっているだろうけど、3ヶ月も体育をサボるために使用してきたこともあって日陰がどこにできるのか熟知してある。

 念には念をということで、食堂でスポーツ飲料と当たり付きアイスをそれぞれ買ってきた。敬太の言っていた『キュンヒエ☆アイスパフェ』は食堂内でしか食べられないようなものだった。

 というかパフェじゃなかったよアレ。アイスタワーという名前の方があってる気がするんだが。生クリームとか、絶対邪魔だろ。形もハートだったし。


 そんなこんなで俺は屋上に着いた。

 この学校の屋上は、他の学校とさほど変わっているところはない。あるとすればソーラーパネルがずらっと並んでいるところだろう。


 俺の目的地は、そんなパネルの先にある、屋上倉庫だ。


 倉庫といっても、非常食のような、対災害用のモノが入っているだけなので、緊急時以外ではそうそう必要とはしない。

 俺は屋上の鍵と一緒になっている倉庫の鍵を使い解錠し、中にある私物を取り出す。

 この中は確かに冷えてはいるんだが、いかんせん外との温度差が激しいため一度入ったら外に出る気もなくなる。

 要するに、夏には最高の部屋ということだ。

 流石に一人だけ涼しむのはどうかとは思うので、そこは妥協して倉庫の外に出来た影で本を読むことにしてある。



 さぁて、続きは……あ、しおり抜けてる。これじゃあどこから読んだのかわからないぞ。

 確か、最後に読んだ文は……『欲しければ俺を倒してみろ、このロリコンジジイ』だ。

あと2話続きます。

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