あの居酒屋で、また
情と未練がすごいわかる作品だと思います!
ー ニュースです。昨晩○○町で男女がビルから飛び降りて命を絶ちました。
おそらく交際関係があったのではないかと警察も調査を進めています。ー
朝からそんなニュースを見た。
好きな人と心中?笑
バカバカしい。そう思いながら昨夜飲んだ缶の酒の縁に残った水滴を、ぼんやり眺めていた。
「彩奈ちょっと来てー」
一階から母の声が聞こえてくる。
「はーい」
と気だるそうに返事をし、重たそうに足を引きづって階段をおりた。
「今日高校台風来るから学校休みだって」
そう言われ、また重たそうな足を引きづって部屋に戻ってまた眠りについた。
目が覚めて外を見るともう暗くなっていた。
台風なんて来ていなかった。
暇になった私は、服を着替えて外に出て夜の店が連なる通りを、あてもなく見て歩いた。
しばらく歩くと友達が前におすすめしてくれた居酒屋を見つけた。
私も少し気になっていたので入ってみることにした。
お店に入るとそこは昔ながらのお店っぽくてどこか懐かしい感じがした。
周りにいるお客さんもみんな常連さんばっかりで一人席に座った私は口を動かさず、黙々とメニュー表を眺めていた。
何にしようか迷っていると
隣に居たもう飲み始めて結構経ったのであろう男の子が椅子を私のほうに寄せて
「ここのだし巻きたまご美味しいから食べてみて」
そう言われ、私はだし巻きたまごとレモンサワーを頼んだ。
目の前にあったテレビを眺めながら商品を待ってた。
そしたら隣にいた男の子が再び口を開いて
「ねえ何歳なの?結構若そうだよね」
最初はナンパか?
そう思ったが、私にするはずもない。そう思い
「二十です。何歳なんですか。」
と嘘をついた。
相手は目を丸めて
「若いねー!俺二十三歳!二十って言ったら一番楽しい時期だね。」
ニコッと笑いながらそう言った。
私は、
この人は二十三年間楽しい人生しか歩んでない私とは別の世界の人なんだな、平凡な私とは違う。
そんな事を思っていると、
お店の綺麗なお姉さんがふっくらと膨らんだだし巻きたまごとキンキンに冷えたレモンサワーを持ってきた。
だし巻きたまごを口に入れると、思わず
「おいしい」
と口からこぼれた。
それを聞いた隣の男の子はまたニコッと笑って
「ね!美味しいでしょ?俺の舌に間違いはないからねなんでも聞いて」
そう言われ、純粋にいい人なんだなと思った。
そこから一時間彼と話が盛り上がって
彼の面白い話や美味しいご飯の話をした。
「そういえば名前聞いてませんでしたよね」
「私は彩奈っていいます。''彩る''に''奈良のな''で彩奈。逆にお名前聞いてもいいですか?」
「俺は唯杏っていいます。''唯一無二''の唯に''杏仁豆腐の杏''!」
「なにその言い方笑おもしろい笑」
名前を教え合うだけでこんなに笑ったのはいつぶりだろうか。
そんなことを思いながら口にお酒を運んではお話をするのが続いた。
しばらくすると、
スマホを見ると母からのLINEが来た。
「いつ返ってくるの?もう帰ってきなさい!」
家に帰らないとめんどくさくなりそうなので私はお金を置いて、
「また機会があったらお話しましょうね。
面白い話たくさん聞かせてください」
一礼して店を出た。
家に帰り。真っ直ぐ部屋に戻った私はすぐに
ベットに倒れ込みそのまま寝た。
「彩奈ー!朝だよー!学校遅刻する!」
母の大きな声が聞こえた。
二日酔いで鈍く頭が痛むのに、不思議と目覚めは軽かった。
昨夜、唯杏くんとたわいも無い話をして笑い合った居酒屋の灯りが、まだ胸の奥でちろちろと揺れていた。
制服を着てご飯を食べいつもより十分支度が早く済んで家を出た。
校門まで行くと、小さい頃から一緒にいる沙耶がドン!と背中を押して話しかけてくる。
「いつもより早いね!早起き?」
「違うよ。なんか早く準備が終わっただk」
「そんなことより!彼氏と別れたのー!いい男探そっと!
私が話し終える前に、案の定、彼女が元気よく言葉を重ねてきた。
変わらないな、と少し笑ってしまった。
「あー!なんで失恋した女の子のこと笑ってるの!ひどー!」
「やっぱり沙耶は沙耶だね、モテる理由もわかるわー」
そう話し合いながら教室に入った。
いつもどうり授業をして家に帰った。
家に帰ってからも何故か唯杏くんが忘れられなかった。
そしていつの間にか暇な時はその居酒屋に足を運んでいた。
行く度に彼がいた訳ではないが、会えればまたたわいも無い話をして家に帰る。
そんな日々が楽しかった。
そこから二週間が経った。
少し遅い時間にいつもどうり居酒屋に行くといつもの定位置に彼が席に座ってる。
私が遅かったせいかもう潰れていた。
私も隣の席に座って優しく肩を叩き、話しかけると彼はすやすや寝ていてまるで大きい赤ちゃんみたいだった。
一人で三杯目を飲み終えて、お勘定をお願いして帰ろうとした時、彼がゆっくり目を開けて私を真っ直ぐ見ながら
「うちくる?」
もともと酒気で火照っていた頬が、彼の一言でさらに色を深めた。
私は視線をそらすこともできず、ただ小さく頷くことしかできなかった。
その後の記憶はなかった。
けど目が覚めて隣に裸の彼と裸の自分を見て、だいたいどういうことをしたのか理解した。
起き上がり服を着ていると彼も起きた。
「おはよ。」
お互い体を混じえて初めて迎えた朝の言葉だった。
「冷蔵庫見ていい?料理得意だからあるものでなんか作れるよ」
彼にそういうと
「うん。彩奈ちゃんのご飯食べたい。」
そういわれ冷蔵庫を開くと、冷蔵庫の中はスカスカで唯一卵があったので卵焼きと棚にあったレンチンのごはんを温めた。
ご飯ができて一緒にご飯を食べているときだった。
彼が手を止めて口を開く。
「俺ら付き合わない?」
私は卵焼きを取ろうとしたが手が止まった。
「えうれしい。」
たしかに嬉しかった。けどすぐに''お願いします''そういうことが出来なかった。
そんな悩んでる私を見て彼は再び口を開いた。
「こうやって今美味しい卵焼きが食べれてるのも幸せだし、居酒屋で彩奈ちゃんとどうでもいい話しながら笑えるのもすごい幸せなの。彩奈ちゃんともっと一緒にいてもっともっと幸せになりたい」
私はここまで素直に言ってくれて嬉しかった。幸せにしてあげたいな。そう思えた。
「はい。お願いします。あ、でもそういえば私高校生のぴちぴちの十八歳だよ」
「え?!高校生なの!!!でも彩奈ちゃん可愛いからいっか!」
初めて本当の年齢を言ったのと同時に付き合うことになった。
彼は月曜日と火曜日が仕事の休みだった為、いつの間にか私も月曜日と火曜日は学校を休むことが多くなった。
彼は基本的連絡が遅い人だったからLINEよりも私は彼の家に行って遊ぶことがほとんどだった。
彼と付き合って一週間。
私は唯杏くんにくっつきながらベットで横になっていた。
彼はスマホで電子書籍を読んでいた。その本には見覚えがあった。
私がプレゼントで貰ったお気に入りの本と同じだった。
「私も同じの持ってる!その小説短編小説が何個もあるから面白いよね」
そういうと唯杏くんは嬉しそうに話し出した。
「そう!最近短篇小説ハマってるの!この本いいよね。特に四十三ページの''すれ違い''って物語好きなんだよね。」
その物語の内容は、出会うタイミングが早すぎて結婚まで行けなく、''出会うタイミングが大事''。というのが分かる話だった。
私は正直その物語が理解できなかった。
出会うタイミング?そんなのいつであっても好きでい続ければ結婚できるよね?タイミングなんていつ出会ったところで好きならずっと一緒にいられるでしょ。
そう思っていた。私は彼に
「私あんまりあの話理解できなかったんだけど唯杏くんは理解できた?
好きならいつ出会っても好きでいれるくない?」
彼の目を見て聞くと彼は笑って頭を撫でて
「彩奈ちゃんはまだ子供だなー」
そう言われた。
私は口をふくらませて怒っていると
彼はニコッと笑って
「彩奈ちゃんやっぱりかわいい。
今日どこかいかない?」
可愛いと言われドキドキしながら
「遊園地いきたい」
言うと
「いいよ行こっか」
二人で支度をして遊園地に行って思い切り遊んだ。
「私明日学校で朝早いから帰るね。」
お互い疲れてばいばいと手を振りながら改札の前で別れを告げた。
十九時の電車に乗って今日撮った写真などを振り返っていた。
いつの間にか最寄駅について家に帰った。
部屋のベットに倒れ込み、
「今日楽しかったね来週暇だからおうち行ってもいい?」
すぐにLINEを入れた。
どうせまた連絡が来るのは3時間後だろう。
たまにLINEを開いては既読がついてるか確認してYouTubeを開く。
そんなことを繰り返していた。
その日。彼から連絡が来ることはなかった。
次の日の九時頃に連絡が来た。
「ごめん寝てた。」
と短くLINEが来た。
私はどこにいたの?と追求したかった。
でも彼に嫌われるのが怖かった。
「大丈夫だよ。おはよう。」
とだけLINEを入れた。
しばらく連絡が帰ってこなくてその日は学校を遅刻して行った。
昼休みの時間に学校に着くと沙耶が私に気づき近づいてきた。
「おお!いつにも増して元気ないね?!どしたの???」
不安そうに話しかけてきた。
そして私は沙耶に初めて唯杏くんの事を話した。
「そういえば私彼氏いたんだけど、その人が連絡遅くて笑
今に始まったことじゃないんだけど、いつもよりさらに遅かったから女かなって思って笑
でも聞き出せなかったんだ。
ダメだよね私って笑」
涙が出てきそうだったが笑って誤魔化すしかなかった。
いつも話をさえぎってくる沙耶でさえ私の話を真剣に聞こうとこちらをまっすぐ見ていた。
そして沙耶が笑顔から真顔に変わって口を開く。
「なんで笑ってるの。笑って誤魔化そうとしちゃだめだよ。」
そう言われた瞬間チャイムがなった。
教室に戻り空を眺めているとポンと通知が鳴る。
沙耶からだった。
「5限目終わったら早退すんぞ。カラオケ行くぞ。」
「え?私今来たばっかだよ笑」
「いいから私の言うこと聞けカラオケ行くぞ。」
そう言われて五限目が終わり早退してカラオケに行った。
カラオケについて沙耶が受付をしてくれた。
「思う存分歌いたいので広い部屋でフリータイムにしてください」
ちょっと強い口調で受付の人にそう言うと広部屋に案内してくれた。
「沙耶。なんでそんなに怒ってるの。たしかに私も唯杏くんに何してたのかーとか聞けなかったけど私が気にしなければ何も問題は起きないしいいかなって思ってるよ」
涙をこらえて震えた声で言う。
そうすると沙耶はまたため息をついてこっちを見てほっぺをつねながら言った。
「あんたそれが本心?
怖くて聞けないんじゃないの?
私は今日初めて彼氏さんの話聞いたけど、疑ってるってことは何か今まで浮気しそうな言動があったから今不安になってるんじゃないの?」
そう言われ私は涙がポツリと出てきた。
「そうかもね、笑」
そう言うと沙耶はマイクを私に渡して
「歌うぞ!」
と言った。
そこから二人で四時間彼の話を忘れて思う存分歌った。
「今日はありがとう。」
私は感謝の気持ちを伝えて笑顔で家に帰った。
家に帰って缶ビールを開けて1人で飲みながら夕日が沈むのをずっと眺めていた。
しばらくして、ポンと通知が鳴る。
「別れて欲しい。」
そう連絡がきた。私はショックも大きかったがこの連絡が来るのではないかなという未来も見えていた。
私は素直に
「わかった」
そういうことしか出来なかった。
涙がまたこぼれ落ちながら再び缶ビールを飲む。
次の日、いつもどうり学校を過ごして沙耶と放課後一緒に帰りながら
「振られちゃった」
それだけ伝えた。
沙耶は
「そっか。頑張ったね。」
一言そう言った。
無言が続きながら長い道路を歩いた。
しばらくして私は口を開いて空を見ながら言った。
「でも忘れられないんだ。
私実はすごい自分に自信なくてね、ネガティブなんだ笑
でもね、唯杏くんといると好きな自分で居られるの。
欲しい言葉をかけてくれて、すんごいドキドキしてさ、今復縁求められたら戻っちゃうと思う。
てかしばらく引きずるなー」
始めてこんな人に自分の弱さを見せた。
でも沙耶ならいいと思った。
沙耶はそんな私を見て足を止めた。
「彩奈。未練とか情は違うよ。」
真剣な顔でそういって
また無言になりお互い分かれ道のところでぎこちなく手を振って帰った。
唯杏くんと別れて2ヶ月が経った。
そろそろ進路を決める頃。
学校でも授業より進路の時期が迫ってきて、早い子ではもう進路先が決まってる子もいた。
でも私は将来のことなんてなんも決まってない。
''正直進路なんてもう少し大人になってから決めればいいや''
と面倒くさがっていた。
沙耶はもう進路先は決まって、カウンセラーになるために大学で心理学を学ぶらしい。
私は何がしたいのだろうか。
そんなことを思っているとふと居酒屋に行きたくなった。
久しぶりに何も考えずにあの美味しいだし巻きたまごが食べたい。
そう思った。
暗くなって外に出て居酒屋へ向かっていた。
居酒屋へ向かってる途中の古びた公園。オシャレな洋服屋さん。少し経っていないのにすごい懐かしい気持ちになった。
「街歩くだけで''懐かしい''ってまだ高校生なのに歳とったみたい笑」
とひとりでつぶやいて笑ってた。
居酒屋につき、中に入ると、
始めてきた頃とは違った''懐かしい''という感情になった。
いつもどうりのカウンター席に座り、だし巻きたまごとレモンサワーを頼んだ。
しばらくして
「お待たせしましたー!だし巻きたまごとレモンサワーですね!」
いつもの綺麗なお姉さんがそう言うと
「ありがとうございます」
そう言った。お姉さんは私に心配をして話しかけてきた。
「大丈夫ですか?何があったか分かりませんが沢山飲んで忘れてください!!ポジティブポジティブ!!」
初めてちゃんと話したが、元気の無い私に、明るく声をかけてくれて嬉しかった。
だし巻きたまごを食べると、
「うん、やっぱり変わらない味だ。」
としんみりしながらテレビを見た。
自然とお酒が進んでいつもよりもだいぶ飲んだ頃だった。
お店の扉が開く音がした。
「彩奈ちゃん。」
聞き覚えのある声。
ーーほら、君はいつもずるいよ。笑 ーー
扉の方を見ると唯杏くんがいた。
少し長い襟足も、くせっ毛なところも、少し低い声もなんにも変わらない。
彼は自然と私の隣の席に座ってビールを頼んだ後に
「久しぶり。偶然だね。元気だった?」
変わらず優しく聞いてきた。
「元気だよ。」
そう返してしばらく沈黙が続いた。
彼のビールが来て一口飲むと
彼が口を開く。
「俺彩奈のこと忘れられない」
そう言われ私はどうしていいのか分からなかった。
''もう私たち終わったんだよ''
そう言えるほど私は強くなかった。
私は涙目になりながら
「私も忘れられなかった。今の今まで唯杏くんのこと思わなかった日はないよ。」
涙が一滴頬から流れると彼は指で涙を拭い
「ちょっと外でよっか」
そう言い、飲みかけのビールをそのままにし、
二人分のお金を置いて外へ出た。
彼は道路に走ってたタクシーを止め、
私は彼に手を引っ張られて後部座席に乗った。
「○○街のアパート○○までお願いします。」
彼の家だった。
''あ、そういうことか笑
やっぱり私って馬鹿だな〜笑''
そう思いながらもなにか少しの光に期待をしていた。
家に入ってすぐ、背後からそっと抱き寄せられ、振り返った瞬間にはもう唇が触れていた。
''止めなきゃ''と頭では何度も声がしたのに、彼の手慣れた指が服の端をなぞるたび、その声はどこかへ逃げていく。
押し倒されるようにベッドへと誘われても、本気で抗えばきっと止められた。
それでも私は、その腕の温度に甘えてしまう弱さを隠せなかった。
そのまま寝てしまい、気がつけば朝だった。
目が覚めると昔は唯杏くんの方が起きるのが遅かったのに彼の方が早かった。
彼は背を向けてスマホをいじっていた。
背中を見ると左首筋部分にほくろがあった。
「ここにホクロあったんだ。」
ホクロを触ると、彼の体はとても冷たかった。
「生まれつきだよ。気づかなかった?」
「うん、分からなかった。初めて気づいた。」
静まり返った部屋の中で時計の針が動く音だけが鳴り響く。
「すき」
私がそう言うと背を向けていた彼が振り返り
「ありがとう」
そう言われた。私は静かに頷いて床のくしゃくしゃの服を取って着た。
六時過ぎに私は彼の家を出た。
夕日が沈むのを見ながら電車に乗った。
家に着いて缶ビールを開ける。
半分まで飲み終えるとLINEが来た。
唯杏くんからだった。
「俺、実は仕事の関係で来月から大阪に行くんだ。」
頭が真っ白になった。
''久しぶりの彼からのLINEが別れのLINEって笑
酷いよ。こんなことなら昨日合わなきゃ良かった。なんで昨日家に呼んだの。
好きって言ったばっかだよ。''
色んな気持ちが混み上がってきた。
既読をつけてもすぐ連絡を返すことが出来なかった。
一時間くらいが経ち、連絡を入れた。
「来週の土曜日最後に会いたい。」
そう連絡を入れるといつもは連絡が遅い彼も
「うん」
とすぐ連絡が着いた。
唯杏くんと会うまでの一週間はとにかく平凡な日々を過ごした。
唯杏くんに出会う前の時のようだった。
それと同時に、私の人生が彼中心になっていたことに気がついた。
金曜日。
「彩奈ー!朝だよー!いつまで寝てるの!」
体が言うことを聞かない朝だった。だらだらと布団から抜け出し、半分寝た顔のまま、遅い手つきで準備を進めた。
''明日で最後なんだな''と思いながら
いつもどうり学校に向かった。
教室に向かうと沙耶がいて声をかけてきた。
「彩奈おはよー!進路決まった?!決まってない?!」
変わらず行き良いよく話しかけてきた。
いつもなら''明るい子だな''とほっこりするが、
何故かいらいらしてしまい
「決まってないよ。ていうかズカズカ聞いてこない方がいいよ。前から思ってたけどうるさいよ。しつこい。」
あれ、なんで言っちゃったんだろう。
言ってから後悔し、沙耶の悲しそうな顔を見て申し訳なくなって黙って席に座った。
その後の休み時間も放課後も沙耶と喋ることはなかった。
自分が酷いことを言ってしまった以上、自分から話しかけることは出来なかった。
一人で沢山悩みながら家に帰った。
いつも帰ってる道がすごく長く感じた。
家に帰ってベットに飛び込んでそのまま寝てしまった。
土曜日。唯杏くんと会う日。
「寝不足って言えば誤魔化せるかな」と思いながら、準備をしていつもより濃いメイクをした。
唯杏くんとは美術館に行く予定だった。
十分早めに着いてスマホのカメラを開いてメイクがおかしくないかのチェックをして待っていた。
トントンと優しく肩が叩かれた。
「彩奈ちゃんごめんね待った?」
と言われ、しばらくじーっと見られた。
「待ってないよ。なんでそんなに見てるの笑」
目が腫れてるのがバレたのかと思い少し恥ずかしく、髪の毛で顔を隠した。
「ううん。いつも通り可愛い彩奈ちゃんだ。」
ほっとして美術館へ向かった。
美術館は彼がおすすめしてくれたところで、最後のところくらい彼の好きなところに行きたかった。
美術館につくと、色々な作品をゆっくり見て回った。
正直私には初めて来たのもあって何がいいのか分からなかったが、周りの行動に合わせてわかってるような雰囲気を出していた。
そんなことをしていると唯杏くんが笑いながら
「彩奈ちゃん全然わかってないでしょ笑
子供だな〜」
頭をポンポンと軽く叩くと目の前の作品をまっ
すぐ見て
「俺ね美術館の、誰のものでもない美しさがそのまま置いてある感じ。あれが好きなんだよね。」
そう言うと私は
首を傾げた。
美術館を出るとあっという間に暗くなっていた。
最後は今までいた居酒屋に行こうという話になり、一緒に居酒屋に行った。
いつものようにだし巻きたまごと、
私はレモンサワー、唯杏くんはビールを頼んだ。
ふたりでテレビを見ていると、いつもの綺麗なお姉さんがニコニコしながらこっちに来て、
「久しぶりですね!お待たせしました!だし巻きたまごと、ビールとレモンサワーですねー!」
と渡してくれた。ふたりで礼をして頼んだお酒を持って乾杯した。
「ほんとにあの人綺麗だよね。」
思わずつぶやくと
「うん。綺麗。俺色気ある人好きなんだよね。
タバコ吸う人とか色気あって見ちゃう。」
私は今まで楽しかったのに急に自分が口に出してしまったことに後悔した。
私はタバコなんて吸ってないし色気なんて全然ない。
しんみり感じながらお酒を口に運んだ。
だし巻きたまごをお互い1口食べると、唯杏くんが口を開いた
「そういえば進路の時期だよね。決めたの?」
「私、、、唯杏くんと一緒にいたい。
私も一緒に大阪に行きたい。」
お酒の勢いと共に口に出した。
ほんの数秒前まで笑っていたはずの彼が、その影が嘘みたいに消えて、少しだけ悲しい表情を見せながら
「そっか」
そう言った。
''間違えた。言っちゃいけないんだ。''
私はグラスに残っているレモンサワーを一気に飲み干した。
その後も会話を続けてるのに、ふたりとも壁越しみたいで、距離だけが妙に遠かった。
しばらくして唯杏くんが
「でよっか」
そう言いお店を出た。
「近くの公園行こうよ」
唯杏くんが私の手を引っ張り公園へ向かった。
公園につくと一緒にブランコに乗った。
ブランコのきしむ音だけが、ふたりの沈黙をそっと揺らしていた。
今日一日を夜空を見ながら振り返っていると彼のブランコの揺れる音が止まった。
そして彼が私の方を見て
「ごめん、彩奈と一緒にいることは出来ない。今日で最後にして欲しい。」
そう言われた。
''この人に振られるのは2度目かー笑''
そう思ったが、さっきの居酒屋に行った時には彼の気持ちに気づいてた。
「分かった。今までありがとう。」
その言葉を最後に彼とは本当のお別れをした。
一ヶ月が経った。
沙耶とは学校ですれ違ってもお互い話しかけられなかった。
進路先も唯杏くんにあんなこと言われたけどやっぱり大阪に行こうと考えていた。
少しでも唯杏くんの理想に近づきたくて服も変えて、タバコも始めた。
タバコを始めた時は
''こんなもんか''
そう思った。
もしかしたらいるかなという期待を寄せて久しぶりに居酒屋に行くことにした。
居酒屋に行くとだし巻きたまごとレモンサワーをいつものように頼んだ。
「お待たせしましたー!だし巻きたまごとレモンサワーです!」
あれ?いつもの綺麗なお姉さんがいない。
そう思い、近くにいた店員さんに聞いた。
「あのー、前にいた綺麗なお姉さんは今日おやすみですか?」
「あー!あの人か!あの人はね好きな人と大阪いったらしいっす!
なんでもその好きな相手はこのお客の常連さんだったらしくて二十三だったっけかなー?お姉さんも見た事あるでしょ!カウンター席によく居た!」
その時全て理解した。
私は涙がこぼれてきてお金を置いてすぐに外に出た。
''お姉さんっぽくなろう?唯杏くんの理想に近づこう?バカバカしい笑
全部最初から私じゃなかったんだ。''
思いながら走って家のベットに顔をうずくめてそのまま寝た。
次の日、久しぶりに学校を休んだ。
母には理由を言えなかったが、顔を見て休んでもいいと言ってくれた。
お昼過ぎまでベットに蹲っていたが、外に出て気晴らしに行こうと思い、メガネと帽子をつけて街に出た。
近くにショッピングモールがあるのでそこについてフラフラしていると映画館の目の前を通った。
映画は一年ほど見ていなかった。気になって何が上映されてるのか確認すると
''愛とは''という映画があった。
普段映画を見ない私でさえ、少し興味が出てきて見ることにした。
その映画は大人びた恋愛映画で正直私には理解できなく、見終えたあとも周りの人が泣いている中、私はすぐに映画観から出た。
ちょっと難しいなと思ったが映画の中で一つだけ心に刺さった言葉があった。
それは恋愛をしてボロボロになった主人公の友達の言葉だった。
''情は過去に向けた敬意で、未練は今に向けた渇望。''
という言葉だった。
私はその言葉を聞いて彼への気持ちが情なのだと気づいた。
オシャレな服をしたのも、タバコを吸い始めたのも全部過去の彼に会いたい。過去のあの頃に戻りたい。そう思うから。
そんなことを考えていたら少し気持ちが楽になり、視線がスッと上を向き、歩く速さがほんの少しだけ速くなった。
どこに行こうかなと迷っていると、すぐ近くに本屋があったので本屋に寄った。
色んな本を見ていると、彼と同じの本が置かれていた。
手に取ってみるとやはり懐かしいなと思った。
懐かしいと思いながら''これも情''
そう感じた。
その本を眺めていると、
「彩奈?」
私を呼ぶ声がした。
後ろを振り向くと沙耶がいた。
「彩奈本とか読むんだ。意外。」
いつもは元気で明るい沙耶だが、落ち着いた声で、ゆっくりと話しかけてきた。
私は自分が沙耶へしたことの罪悪感があり目を合わせられなく下を見てゆっくりと口を開く
「そうだよ、沙耶は何しにきたの?」
いつもより小さい子で聞いた。
沙耶はニコッと笑って買った本を見せてきた。
「じゃーんカウンセラーになるために心理学の本を読ようと思って!」
やっぱり沙耶は凄いなと思いながら目の奥にまだ陰を残したまま、微かに笑った。
その微かに笑った私を見て沙耶は本を見つめ悲しそうな表情でまた口を開いて話した。
「でもダメだよね。結局彩奈の気持ちにも寄り添えなくて。笑
目の前の親友一人助けられなくて何がカウンセラーになるだよって感じだよね」
私はすぐに話した。
「あの時はほんとにごめんなさい。
沙耶が寄り添ってくれてたのも気づいてたのにあんなこと言っちゃった。」
頭をしばらく深く提げていた。
沙耶は私の肩にトントンとして
「えぇ!ほんとに大丈夫だから!ここ本屋!みんな見てるし外でよ!」
そう言って外に出てフラフラ歩いていた。
「沙耶さっきの話に戻るんだけどあの時はほんとにごめん。優しくしてくれてたのに、」
そう伝えると沙耶は笑って
「いいよいいよ笑私も人の進路とかあんまりズカズカ聞くもんじゃないね笑
カウンセラーになるにはまだまだだな!」
となにか吹っ切れたかのように言った。
「沙耶はやっぱりすごいね。」
そう呟いた。
その後の帰りも一緒に帰ってあっとゆう間に分かれ道になり、お互い笑顔で手を振って家に帰った。
次の日、
学校に行きいつも通りの生活が始まった。
沙耶とも話せるようになり、何故か前よりお互いの距離が近くなった気がした。
放課後、
「彩奈!一緒に帰ろー!」
「ごめん!今日職員室に用があるから先に帰っててほしい。」
そう言ってみんなが帰る中私は職員室に向かった。
コンコンと二回ノックをして担任の先生を呼び出した。
「先生進路のことで用があります。」
「やっと決まったのか。」
「はい。」
そういい進路の話を進めた。
ー一年後ー
私は十九になり、就職という道を選んだ。
場所は地元の喫茶店。
人と関われる仕事がいいと思い選んだ。
入ったばっかりだが、それなりにやれている。
辛いこともあるが、沙耶も同じように頑張っていると思えばなんとか頑張れた。
ある日、いつもどうり働いているとしばらくして店長が私のところに来て私に言った。
「彩奈ちゃん!大阪のイベントで1日だけ僕たちもキッチンカーで売ることになったんだけどみんな遠くて引き受けてくれなくてさー
彩奈ちゃん来ない?!」
大阪なので行きたくなかったが店長の圧に負け行くことになった。
大阪について、朝から
''いらっしゃいませ!''と大きい声を出して
接客をした。キッチンカーで売るのは大変で、時間が長く感じた。
売上目標も達成し、思ったよりもはやく商品が完売した。
店長と
「よかったですね!」
ととにかく言い合った。
そうすると店長がニコニコしながら
「せっかくだから大阪観光してきなよ!
早く終わったし僕ここで待ってるからさ」
私はお言葉に甘えて財布とまだ辞めきれてなかったタバコを持って街を歩いた。
地元とは違ってお店も沢山あって人もたくさんいた。
色んな声や街の音が飛び交う中、
「あみ!」
聞き覚えのある声だった。
後ろを振り向くと
カップルらしき二人が背を向けてあるっていった。
確かに見覚で後ろ姿で左首筋にはホクロがあった。
隣にいた女の人は見た事のない人で、清楚な感の小さい小柄な女の子だった。
それを見た後で、ポケットに入れてたタバコを見つめ、
バカバカしい!!
そう言ってタバコを捨てた。
どうでしたか?小説家をめざしてるので応援よろしくお願いします。




