表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の約束〜滅びの約束を越えて〜  作者: はる
杯と蛇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/109

番外編:灰の空の下で―リシェリが見上げた空―

第三章終盤の裏側。

サラの友人であり、宮廷魔術師だったリシェリ・エルンスト。

彼女が選ぶ道はサラと交わるのか。

『サラ・フェルディナンド及び同行している魔術師の捕縛』


その任務は異例中の異例だった。

騎士団、魔術師団、そして――教会魔術師。

三者が同じ標的のもとに集うなど、これまで一度もなかった。


私は、その一報を聞いたとき、胸の奥がきゅっと痛んだ。


「サラ……ちゃんと逃げたよね……」


昨日、最後に会ったとき、私は彼女に言った。

「……逃げて」と。


宮廷魔術師としては、完全な職務違反だ。

でも――あの子の友達としては、それしかできなかった。


「お前、顔色悪いぞ。……大丈夫か?」


同僚のルーファスの声に、私は軽く笑って誤魔化す。

サラが見ていた“外の世界”を、私は一度も見ようとしなかった。

あの子は怖れながらも、ちゃんと前を向いていたのに。


指先で、ポケットの中の小さな青いリボンを握りしめる。

それは昔、サラがふざけて結んでくれたものだ。

「似合ってるよ」――あの笑顔が、まだ目に焼き付いている。


「サラのこと、心配か?」


不意に、ルーファスが小声で聞いてきた。

黙って頷いて見せると、少しだけ笑みを見せてきた。


「……俺もだ。あいつ、まっすぐすぎるからな」


その言葉に、思わず顔を上げる。

彼も、知っていたのだ。

サラがどんなに不器用で、どんなに優しかったかを。


「俺は……たぶん、従えない」


ルーファスが、誰にも聞こえないような声で呟いた。


空は快晴。

まるで、任務に赴く私たちを祝福しているかのように。

でも、私には――どこまでも暗い空に見えた。


「リシェリ・エルンスト、配置につけ」


上官の声が響く。私は深呼吸をして、頷いた。


――見つけても、私は撃たない。

誰にも聞こえない声で、そっと呟く。


風が頬を撫でた。

その瞬間、世界がわずかに軋んだ。


空気が震え、地平が揺らぐ。

まるで割れた鏡が何百枚も重なり合うような光景。

誰もが息を飲み、その“亀裂”を見つめていた。


その中を、たった一筋の蒼い光が走る。

それは東から西へ――まるで導かれるように。


私は、思わず呟いた。


「……サラ」


その光が、西の空に溶けていく。


きっと、あの子は――その先にいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ