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第七十六話:サラの感謝
――不思議な感覚だ。
――伸ばされた時間。
――縮められた時間。
歩いた記憶も、立ち止まった記憶も、すべて私の大切な記憶。
生きた記憶も、死んだ記憶も、すべて私の記憶。
でも――私が溢れ落ちないようにしていたものは、
いつだって、ずっと私の傍にあった。
まるで、お互いがひとつの魂であるかのように。
“彼”は、ずっとそこにいた。
……違うね。
“あなた”が、そうさせたんだよね。
だって、“あなた”は最初から――ひとつだったんだから。
“彼女”がいて、“私”がいる。
そして、“彼女”に寄り添う“あなた”。
“あなた”は、“彼”の中にもいたんだもんね。
“あなた”がしたことは何?
願い? 祈り? それとも――。
でもね、私は“あなた”を憎むことも、恨むこともしないよ。
だって――私は、“彼”との記憶が大切だから。
――カイゼル、ありがとう。




