第七十三話:重なる時間
世界が再び動き出す――。
サラが“夢の朝”から目を覚ましたあと、
彼女とファルは新しい現実の中で、まだ残る“ゆがみ”と向き合うことになります。
時間が重なり、記憶が交わる瞬間。
それは、旅の続きであり――新しい始まりの予兆でもあります。
世界が、音もなく“折れた”。
朝の景色が縦に裂け、いくつもの時間が擦れ合う。
サファイアが脈を打ち、光の糸が空へと伸びていく。
そこから、誰かの手が差し伸べられた。
(この手……知ってる)
指先が触れた瞬間、
すべての色が、音もなく消えた。
――そうだ。
――私は、この手を離してはいけない。
音が、息を吹き返す。
世界が、再び動きはじめる。
ゆっくりと瞼を開ければ、そこは――フェリシアの自宅の自室。
すべてが違う。
何がなんて分からない。
でも、私が歩いた時間は……全部、本物だ。
視線を横に向ければ、黒い瞳が私を覗き込んでいる。
金の模様が、朝日に淡く光っていた。
「……おはよう、ファル」
「おはよう、サラ」
優しく、慈しむように。
まるで、魂に語りかけるように。
ファルの声が、朝に溶けていく。
「誕生日、おめでとう」
その声に、時間が再び動き出した気がした。
――行こう。
――セリュネアへ――
ファルのブラックダイヤのネックレスと、私のサファイアのネックレスが静かに揺れた。
折れた世界”が閉じ、時間は再び流れ始めました。
けれど、すべてが元通りになったわけではありません。
サラとファルの前には、まだ“交わりきらぬ記憶”が残っています。
それを辿る先――セリュネア。
次回、2人の本当の旅が始まります。
千年の眠りと約束、その真実へ――。




