第七十・五話:染める朝日
星の瞬きが、夜の深さを伝えてくる。
何百年、変わらずにそこにあるのか――もう、思い出せない。
ただ、確かにそこにあるものとしか思わなくなっていた。
フェリシアを望む丘から家々を見下ろせば、
薄っすらとした灯りが一粒だけ、確かに瞬いていた。
――私はここに居るんだと証明するように。
溢れ出た朝日の光に溶けていく灯り。
まるで、世界に取り込まれるように。
俺は、見失わずにいられるだろうか。
俺は、痛みを与えてしまうだろうか。
朝日は、残酷なほどに美しく世界を照らす。
静かな夜を否定し、騒がしくも鮮やかな時間の流れを作り出す。
それが、必ずしも救いにはならないと知りながら――
決して、止まることを許さない。
ほんの僅かな時間稼ぎ。
歪めてしまったのは、心か、今か……。
怒るだろうか。
悲しむだろうか。
それとも、憎むだろうか。
それでも、誓いは変わらない。
何があっても――護ろう。
もう、時間は意味を持たない。
あの日の誓いは、誓いのまま世界に残り続ける。
歩幅を合わせる必要は、もう……無い。
サラ。
君は、君の時間を生きて欲しい。
君が君でいられる場所を見つけるまで――
俺は、何度でも朝を迎えよう。
朝日が世界を包む。
首に下げたブラックダイヤを朝日が揺らす。
黒すら、白に染め上げて――。
――夜は終わり、けれど朝もまた、ひとつの祈りだった。
黒は蒼を抱き、夜は朝へと還る。




