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幕間:黒の独白
俺は民が好きだった。国が好きだった。
街を歩けば、みんなが気さくに声をかけてくる。
皇帝としては不用心かもしれないが、
それでも俺は“国民”でありたかった。
だが、俺は“皇帝”としてしか選べなかった。
一人の女にすべてを捧げることも、
一人の友に誓いを立てることもできなかった。
そのせいで、後悔だけが残った。
立場なんて捨ててしまえば、違う未来もあったのかもしれないの。
……すまない。
すまない。
すまない。
今度こそ、全てを捧げよう。
彼女の魂に。
友の願いに。
――たとえ、幾千、幾万の歳月を歩もうとも。




