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黒の約束〜滅びの約束を越えて〜  作者: はる
鎖を解く言葉

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第五十四話:私だけの誓い

「私だけの誓い」

それは何を意味して何を齎すのか。

結局のところ、私が聞きたい内容の大半は聞くことができた。

ただ一つだけ、あの場では聞けなかった事を口にしたのは、暫くしてからだった。


「ねぇ、ファルは……生きていたい? それとも……」


言葉が出てこない。

喉が詰まり、息が苦しくなる。

怖い。

この先の答えを聞いてしまえば、もう後戻りはできない気がした。


ファルは少し目を伏せ、指先で私の手を確かめるように強く握った。

長い沈黙のあと、静かな声が落ちる。


「――今は、生きたいと思える……サラと同じ時間を歩みたいから」


その言葉は、淡い温度を持って胸の奥に沈んだ。

望みでも、願いでもない。

ただ、彼がようやく口にした“今”の真実だった。


「……“今は”?」

思わず問い返してしまった。


ファルは答えなかった。

ただ、ゆっくりと目を伏せて、握った私の手に指先でわずかな力を込める。


その横顔には、言葉にしない影が宿っていた。

悲しみか、恐怖か、あるいは孤独か――ひとつには決められない。


わかる。

ファルは未来を語ろうとしない。

今を口にしたのは、希望ではなく、せめてもの逃げ場だから。


彼の瞳を覗き込む。

揺れるその奥には、確かに光がある。

けれど同時に、果てしない闇が消えずに張りついていた。


――取り残される恐怖。

――忘れられない痛み。

――終わらない命。


言葉にはされなかったけれど、全部、そこに見えた。


私は喉の奥が詰まり、どうしても声が出なかった。

ただ、握り返す力だけを強める。

それしかできなかった。


私は、この人を縛り、壊していく“鎖”になんてならない――そう決めた。


そして、胸の奥で小さく誓う。

この決意を、いつか必ず彼に伝えよう。

その時が、たとえ私たちの“終わり”を告げる瞬間であっても。


「……ねぇ……」


目を見て呼びかける。

ファルは、必ず目を見てくれる。

その瞳に宿るものが、光か闇か、まだ私にはわからないままで――。


だから、私が――その瞳に宿る光に……なってあげる。


静かな沈黙が落ちた。

握った手の温もりが、胸の鼓動と重なって、近づきすぎた距離をさらに狭めていく。


彼の瞳に映る自分が、今にも触れられるほどに近い。

呼吸が重なり合う。 


この瞬間が、あなたにとって宝物になってくれるといいな――。





――私には、宝物になったよ。


静かな静寂の庵が熱を持った。

そんな気がした。


――これは、私だけの誓い。

第二章、最後まで読んで頂きありがとうございました。


次回、幕間

独白の回が二話続きます。



追記

三章も引き続き更新していきます。

もし宜しければ、ブックマークして頂ければ励みになります。 

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