第48話 この大地への讃歌
叫びながら喚きながら、それでもなお“召喚士”は一葉へと手を伸ばす。それはとうてい理性を認められない、まるで”召喚士”自身が呼び出した魔獣のようだった。
「いらないいらないいらない、全部! 全部いらないっ!!」
「っく……」
どうにか黒い槍の猛攻を凌いだところで次がある。何より、血とともに魔力を流しすぎて満足に動けない一葉を集中的に狙ってくるのだ。隙を作ると宣言したウィンですら防戦に回らざるをえず、攻め手のいない防戦が4人の気力と体力を余計に削っていた。
“召喚士”がまとう魔力の力場は、高濃度の魔力というだけの単純なものである。たかが魔力溜まりと言えどもウィンの紫雷程度ならば触れただけで消すことができ、レイラやサーシャが通過すればたちまち体内魔力を狂わされて命を落とすだろう。
“召喚士”ほど強力な存在が操れば、単なる魔力であっても強力な結界となる。力場を削ることが急務だった。
「このままじゃキツい、かな」
明らかに足手まといは自分自身で、このままではウィンたちが自由に動けない。それを嫌というほどに理解している一葉は呟きとともに両の掌を地面へ着ける。息を整えて大きく吐き出した。
「あんまりやりたくなかった、け……どっ!」
「へぇっ、ずいぶん無駄なことをするんだねぇイチハっ!」
一気に力を振るった一葉へ、煮えたぎる憎悪を隠そうともしない“召喚士”はあざ笑うように唇を歪める。それもそのはず。
「たとえ自分が動けるようになっても、お前は僕とつながってるんだよ!」
“召喚士”と一葉の間には魔力のつながりがある。その流れを利用して地面から――正確に言うならば地面に敷き詰められたレンガから魔力を吸い出し、自分の力へと還元して怪我を治療し、一葉は自分を一時的に強化した。
しかしそれは同時に“召喚士”もまた強化されたことを意味しているのだ。
「そうだろうね。けど」
先ほどまでよりも勢いよく雪崩れてくる黒の槍を呪文もなく防ぎ、しっかりと立ち上がった一葉は不敵に笑む。
「それでも、私っていう不利はこれで消えたから」
「そう思っていられるのも今のうちだ」
言葉とともに勢いを増した黒い槍。柏手ひとつで作成した結界によりそれを防ぐと、一葉は声を張り上げた。
「こっちは気にしないで!」
「分かりました」
言うが早いか飛んだ紫の雷が槍を消していく。紫に見えても普段とは比べものにならない力が込められているのだろう。無駄に全力を出してはいないだけで、黒い槍を消すには充分な力を持っている。その魔術が無駄になることはないのだ。
色だけでは判別できない。一葉はそんな当たり前のことが、この非常時にもかかわらずとても愛おしく思えた。ここは正しく異世界であり、決してゲームなどではない。ウィンもレイラもサーシャも、パラメーターなどでは区別できないきちんと生きている人間だと。
ウィンの雷を追うようにしてサーシャとレイラが走った。彼らへ向かう黒の槍は、全てを見通せる位置に陣取ったままの一葉が防ぐ。自分と仲間たちへ迫る攻撃を防ぎつつ“召喚士”へ牽制の攻撃を叩きつける一葉から、先ほどまでの絶不調を見ることはできない。
だが、いきなり4人が有利になったわけではない。黒の槍が密度を増し、数を増し、豪雨のように4人へと降り注いだ。
(やっぱ、結構キツい……かな)
全てを結界で覆っては攻撃ができずに逆戻り。結界を減らしては防ぎきれないだろう。片手間で防御できるほど“召喚士”は弱くなく、片手間で防御できるほど一葉は万全でない。
(けど、何とかしなきゃ)
きゅっと唇を噛んだ一葉と“召喚士”の中間あたりで、ウィンもまた攻撃をさばきつつ思考を巡らせていた。
(このままではイチハの強化も切れ、状況は逆戻りですね)
一葉の自己強化は無限ではない。それは彼女の足下のレンガが光へ還元され消滅しており、その範囲がだんだんと広がっていることから読み取れる。それでなくとも便利すぎる手段を無限に行使できるはずがないだろう。
とはいえ悪い状況ばかりでもない。ウィンやサーシャ、レイラの攻撃であっても、“召喚士”の外装――覆っている魔力や力場を多少なりとも削ることができると判明したのだ。このまま力場を削り切れば“召喚士”の本体へ直接攻撃をすることも不可能ではない。それが分かっているのだろう。自分に近いレイラとサーシャ、彼女たちを護る一葉、最後にウィンの順に攻撃を集中している。
ウィンはそれを利用することに決めた。
「サーシャ! レイラ殿!」
声をかけると同時に前へ出て白の雷を打ち込む。一気に最前線へ躍り出ると彼の予想通り、2人の女性よりもウィンヘと攻撃が集中した。それを全て消しながら到達した白の雷は“召喚士”の装甲を半ばまで消し飛ばす。すぐに力を補填して装甲を戻しはしたが、少なくはあっても無視もできないダメージを与えていた。
格下と舐めていた“召喚士”は苦々しい顔をウィンへと向ける。
「お前……!」
ギラリと目が向くと同時にウィンは下がり、交代するようにレイラが“召喚士”の死角から前進した。そのレイラを支援するように、宙に生まれた魔術の光がレーザーとなり“召喚士”へと襲いかかる。
「は……っ!」
ウィンや一葉へ注意を向けたままの“召喚士”をいいことに、視界の外から剣を振るう。たかが細剣。しかし異界の勇者たる一葉が使っていたものを打ち直したそれは、多量の魔力をまとい、そこにある魔力を消滅させながら“召喚士”へと迫った。
いくら『狛犬』とはいえ、正しい主ではないレイラにできることは少ない。精々が黒の槍へ対応する程度で、“召喚士”本体へ有用な攻撃を繰り出すことは難しいだろう。
だがそれは最初からわかっていたことでもある。
「これ、でっ!」
レイラは本来、両手剣を――しかも大剣と呼ばれるものを使用していた。それは父親の影響からではあったが、衛士として王都へ放り込まれた際に取り回しの関係で細剣へと持ち替えていたのだ。いくら装甲からの反発が強くとも、細剣を片手で支える程度は造作もない。
貴族の娘らしく育っていないことへ劣等感を抱いた時期も確かにあった。いくら鍛えたからといって男には勝てない筋力を恨んだこともあった。しかし今は、満足に歩けもしなかった自分に剣を与えた父へ感謝の念しか持っていない。
剣を振るえるからこそ、細剣使いとは思えない筋力をもつからこそ、ただの細剣使いや他の女性騎士にできない手段を実行することができた。大事な仲間たちと肩を並べることができたのだから。
「今度は、使う場所を間違えませんよ」
後頭部でまとめた灰金の髪がふわりと浮く。防御は考えない。背後には頼りになる”相棒”がいる。代わりに、自分にできる最大限の手段へ意識を集中した。
細剣から手放した左手で、持っている宝石を割る。さらには動かせる魔力全てを細剣に流し込む。それは本来の主たる一葉が使用している時よりは弱いが、少なくともウィンが単体で発動した時よりは強い光を放っていた。
(集中して……行きます!)
見る間に削られて行く魔力、それだけでは足りないとばかりに吸われていく生命力を自覚しつつ、レイラは魔力の力場ごと“召喚士”へと斬りかかる。いつかの夕暮れに、王城で発動しそうになり一葉が止めた裏技。ルーナ家に伝わるそれは、自分の魔力全てと引き換えに強力な爆発力を得るという単純なものだった。
武人だけでなく魔術士の、それも研究者の間ですら自分の魔力全てを使うことはほぼ不可能と言われている。使い切ってしまえば命を落とすのだから当然であろう。しかしアーレシアという国境領を治めるルーナ家には、自分の持っている力を言葉通り”全て”使い切る最終奥義が伝わっていた。レイラの口元が苦笑に綻ぶ。なにしろ一生使うことがないと思っていた手段を、1度は記憶がないとはいえこの短い期間で2回も使っている。生きるとは、何が起こるかわからないものだと彼女は痛感した。
(ありがとうございます、父上……いえ、お父様)
自分ひとりだけならば使い道のない技術。そんなものを『いつか必要になるかもしれない』と言いながら教えてくれた父に、レイラは心から感謝する。
ミュゼルで使用した時は範囲を絞らなかったため、発動していれば王城の端くらいは余裕で削っていたはずだ。今はその範囲を絞ることで細剣の先だけに力が集中している。レイラに気付いた“召喚士”だが、彼女の攻撃を何の被害もない状態で止めることは既に不可能だった。
「その程度で笑わせないでよね!!」
しかしそれでもまだ“召喚士”には届かない。ウィンの白雷と同じく、装甲となっている力場の半ばまで食い込んだところで力を使い果たす。直後に真下から生えた黒の槍をとっさに防ぐことはできたが、レイラはその剣ごと打ち上げられた。
人1人分ほどの高さまで浮き、そのままの勢いで20メートルほど離れた地面へと叩きつけられる。黒の槍こそ一葉がどうにか防いでいたが、その勢いを殺すことまではできなかったのだ。握力を失った両の手から、曇りのない銀の細剣がこぼれ落ちた。
「レイラさん!」
「だい……じょうぶ……です、から」
生命活動を司る体内魔力すら使ったレイラには、もはや指先を動かす力も残っていない。それどころかこのままでは5分もしないうちに呼吸を止めてしまうだろう。慌てて駆け寄った一葉は自分とレイラを護る結界を作り、自分の魔力をわずかずつ流し込むことで今にも抜け落ちそうなレイラの魔力を押しとどめた。
(これは)
全体からすれば、“召喚士”の力を3割も削れていない。その反面、全く意味がないとも言えないことはサーシャにもわかる。
(魔力の力場。それを崩さなくては本体へ近づけもしませんが……削ってしまえば、“召喚士”自身の手で補填しなくてはいけないのですか)
魔力の障壁を修復するために周囲の力を自動的に吸い寄せる、というわけではないらしい。未だ起き上がれないレイラと、その傍らで応急処置をしながら自衛している一葉。2人をチラリと見ると、サーシャは軽く地面を蹴った。
ウィンの白雷、レイラの魔力爆発。2人が奥の手を持っていることと同様に、サーシャもまた特別な技術を持っている。それは彼らと同時に攻撃をしたところで意味がないほど力のない地味なものだが、今ならば。ウィンとレイラが道を拓いてくれた今ならば、存分に力を発揮できる。
サーシャは、そのために気配を殺して潜んでいたのだから。
(もう少し……今です!)
レイラの生命維持をしているため一葉の援護は期待できない。それでも自分たちの防御をしてくれているだけでサーシャにとっては充分だった。持っていた宝石を割り、溢れ出した魔力をナイフへ纏わせる。
「死ね! 消え失せろ!」
「残念ですがその期待に応えるわけには参りません」
力場まではあと5歩程度で、気配を消していてすらそこまで近づけば気づかれてしまう。けれどサーシャもレイラと同じ。ここまで近づいてしまえば、サーシャの行動の方が早い。
「ふ……っ!」
「がっ!?」
強力で堅固な魔力の力場。“召喚士”という存在の強さを示すように手強くはあるが、サーシャから見れば決して完璧ではなかった。
「巨大なものも小さなものも、弱点は必ず等しくあるのですよ。――無いならば作ればいい」
彼女がナイフを打ち込んだ場所は、ウィンとレイラが力場を削ったからこそ生まれた”弱点”である。ウィンに迫るほどの魔力感知能力、さらには狙った場所を小指の爪ほども違わず抉るサーシャのナイフ技術が揃ってこその結果だった。
サーシャは忘れていない。慈雨の谷で、アーシアで。一葉の傍に立つと決めた心とは裏腹に、このままでは自分の力が足りないと実感したことを。
だからこそ慈雨の谷から戻って以来、単純な攻撃力や魔術の出力ではなく魔力感知能力を徹底的に磨いた。自分よりも格上と戦う場合を常に想定し、自分の持つ長所を活かせるよう考え抜いた。それが今ここで、ようやく実を結ぶ。
「小娘……許さんぞ……殺してやる……!」
すぐに魔力の障壁が復元されたが、再構築されたそれは魔力感知が得意ではないレイラの目から見てすらひび割れている。“召喚士”本体には何のダメージはなかった。しかしそれでも小虫と嘲る相手からの大きすぎる影響に怒り狂っており、精神的な影響が多分に影響する“異界渡り”らしく魔力にムラが生じている。
それは障壁だけではなく、攻撃に関しても勢いこそ増したものの精度は粗い。サーシャにしてみれば雨のように降る黒の槍も軽い足取りで避けられる程度だった。掠る程度でも大きな被害となることは目に見えているため、決して余裕ではなかったのだが。
「ウィン」
サーシャが命がけで“召喚士”をからかっていると同時に、ウィンへ向けて一葉から声がかかった。呼びはしたがその後に言葉が続くわけではない。一葉の様子から何かを受け取ったのだろう。頷きを返すと、銀髪の魔術士は駆け出した。
「今度は貴様か!」
「えぇ、私程度でも今の貴方なら余裕で対処できますからね。充分でしょう?」
薄く笑うウィンだが、その足運びは決して簡単ではない。一葉の防御から漏れた黒の槍、それを焼き払った数度の紫電だけで息が上がり駆け足は歩み足へ変わった。命には関わらないものの大小様々な負傷が体力を削る。
だがあくまでも笑みを絶やさない紫眼の魔術士は“召喚士”の前で足を止めると、ニコリと一層笑みを深めた。
「さぞかしご立腹でしょうが、私たちも同じなのですよ」
「何を」
「消えてください、この世界から。貴方がいると私たちが生きていくことは難しい」
ウィンらしくなく直接的な言葉で拒否をぶつけ、真正面から白い雷を打ち込む。1度。2度。ひび割れた障壁を消滅させながら迫るそれは、いくら“召喚士”といえども直撃すればただでは済まない。理性を飛ばしかけてはいても生存本能の訴えは無視できず、“召喚士”は白雷から距離を取った。
「おや、逃げるのですか?」
「小僧が、生意気な口を利く」
“召喚士”がウィンへ自分から近づくことはない。未だ首飾りの魔力を使用していない以上、格下と油断をすれば痛い目を見ることは慈雨の谷で嫌というほどに理解させられたのだから。あの夜に一葉から首飾りを託されたのが目の前の男であることは、一葉と同調していた“召喚士”には分かっていた。
しかしウィンの攻撃はそれだけでは終わらない。
「背中がガラ空きですよ、センパイ?」
「っ!?」
大きく身を引いたにもかかわらず真後ろから聞こえた忌々しい声に、背筋が凍る。ザッと見渡せば地へ伏せて死にかけていたはずの灰金の騎士は上体を起こし、水色の瞳の女がその身を護っている。だが灰金の騎士を処置していたはずの、黒の瞳を持つ魔術士の姿はどこにもなかった。
彼が”彼”として生を受けてから初めて、本能が生命の危険を叫ぶ。黒の槍では間に合わない。たとえ後ろを始末したところで前にも敵がいる。前の邪魔者を始末してからでは後ろの対処は手遅れになるだろう。何より、今の精神状況では満足に当たらないことを彼もよく理解していた。
手段を考えている暇はない。全方位へ黒の靄を放出しようとしたその時、“召喚士”の全身から一気に力が抜けた。
「な……!」
「ウィン!」
呼ばれるまでもなく。力が抜けたことで生まれた一瞬の隙にウィンは“召喚士”の懐へ飛び込み、彼が体勢を立て直すよりも早く、古く優美なレインドルクの首飾りをその身に押し付けた。
熱くはない。冷たくもない。ただ魔力が、魔力を媒介にした自分という存在が消えていく感覚を“召喚士”は覚えた。はるか昔、雪の村での記憶がよぎる。
「やっと」
腹部、胸、左手と両足が消えた“召喚士”を、地面にへたり込んだままの一葉が後ろから抱き寄せる。それはどうにか体を起こせている一葉でも抱き込めるほどの、本当に小さな体だった。
一時的な自己強化は“召喚士”をも強化した。しかしそれを切った途端に力を失った一葉が崩れ落ちただけではなく、一葉と同調していた“召喚士”もまた弱体化した。目と鼻の先まで接近したウィンを排除することもいつの間にか真後ろまで迫っていた一葉を排除することもできず、急激に失う力と今までとの落差に戸惑ったまま、首飾りの魔力をその本体へ叩きつけられたのだ。
一葉は最初からこの、ほんの少しの時間を稼ぐためだけに自分を強化していた。
「やっと、終わり」
「やめろ……やめろ……!」
存在を消されるほどではないが、首飾りの力が残っているせいで“召喚士”は体を満足に動かせない。首飾りから流れ込んだ混ざり物の魔力に邪魔をされ、魔力の障壁を立て直すことも難しい。その小さな右手を一葉は後ろから取り、どうにかかき集めた残った力を込め。
――その右手に埋まった、召喚獣の”核”である緑柱石を砕いた。
『あぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
確かに耳へ届いているはずの音が、しかし耳の奥に直接聞こえるような不思議な音へと変わっていく。
波のように広がるその悲鳴は脳を揺さぶった。耳を塞いで音を排除しようとしているウィンたちとは違い、一葉にはもうひとつ、悲鳴ではない音が聞こえている。
――やっと
――やっと
――やっと、会えた
それは嬉しくてたまらない、心の底からの喜び。自分の中にずっと寄り添っていた”そのひと”が一葉の内側から抜け出し、光となって一葉の頬をそっと撫でた。
――ありがとう
――もう、大丈夫
――余計なものは、私がもらってあげる
――だから安心して、家にお帰り
母のような優しい声の”友人”はそう言うと一葉へ”手”を伸ばす。体の中、タマシイに打ち込まれた不快な楔の魔力が、この優しい”友人”の手により一葉から引き抜かれた。
戸惑うように瞬く一葉から離れた”彼女”は、ふるりと震えたかと思うと“召喚士”の右手をそっと光で包む。
『やっと会えた』
男の声がした。その途端に光が溢れ、ウィンやレイラ、サーシャはたまらず目を覆って保護をする。だがただひとり、一葉だけは目を細めつつ、しっかりとその様子を見つめていた。
“召喚士”から抜け出た光が一葉の”友人”と溶け合う。くるりくるりと舞ったかと思うともう一度だけ一葉を気遣うように頬を撫で、そのまま宵闇の空へと昇っていく。直後にザッと舞った魔力の光はまるで雪のように真白い。
吹雪にも似た光の嵐が消えた後、そこから“召喚士”の姿は消え失せていた。
「終わ……った……?」
「みたい、だね」
魔力を制御していた“召喚士”が消えた。それにより周囲の建物もまた形を保つことをやめ、光へと戻り始めている。
だが今だけは、4人ともが疲れ果てた体を動かすこともできずに、ただ空を見上げていた。