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流界の魔女  作者: blazeblue
蠢く闇の色
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幕間  闇に堕ちた、紅




 その日、麗しき王都ミュゼルにある王城の地下には不気味な空気が蔓延していた。



 その人物以外はすべて眠りについている。独房の中の囚人、見張りの衛士も。そしてそれは入口を守る衛兵ですら例外ではない。



 牢の中では、不気味な何かがギラリと光を放った。








 なぜ、この私がこのような目に遭わなければならないのだ




 ――誇り高い伯爵家の血筋なのに




 なぜ、私がこのような場所にいなければならないのだ




 ――王の一族が陥れたのだ




 王だからと言って、私をこのような目に遭わせて良いというのか




 ――良いわけがない




 そもそも奴らに私をこのような場所へ閉じ込める権利があるのか




 ――そんなもの、持っている筈がない




 赦し難い。決して赦せる罪ではない




 ――なぜこのような怪我をしなければならなかったのだ




 不気味な術を使われたせいで私は怪我をしたのだ。傷が治ろうとも私の誇りまでが治る訳ではない




 ――誰が悪いのだ?




 王だ。王妃だ。公爵だ。そして小賢しいフォレインの小僧だ。




 ――本当にそれだけか? 他にも罪人がいるのではないか?




 そうだ、あの魔女だ。あの魔女が最も悪いのだ




 ――あの魔女さえいなければ?




 そうだ。あの魔女さえいなければ、今頃は全てが上手く終わっていたのだ




 ――フォレインの小僧を排除して、王妃やそれに連なる者も始末して




 王の首も、この私が獲っていたことだろう




 ――このままで済ましてしまって良いのか?




 良い訳がない。しかし、私には王の一族と魔女に逆らう力が無い




 ――あるではないか、召喚術という大きな力が




 ……そうだな、私にはまだ召喚術がある




 ――不可能なことなど存在しない




 なんでもできる。私には力がある




 ――復讐しよう




 復讐? ……それもいいかもしれない




 ――このような場所へ押し込んだ者たちに




 私の怒りを知らしめてくれよう




 ――どうすればよいのか?




 まずは、この場所から出ることにしよう




 ――魔女や王の力が怖くはないのか?




 怖いものか。私には全てを自由にできる力がある




 ――全ての力を何に使うのだ?




 決まっている。

 全ての愚かなる者たちに私の受けた屈辱と痛みを思い知らせるのだ――




 ――さぁ、この暗く狭い場所から産まれ出よう








 その人物は気付いていない。

 自分の牢の外には見慣れた人物が立っていたことを。



 その人物は気付いていない。

 自分の牢に流れ込む奇妙なにおいの香を。



 その人物は気付いていない。

 外道とされ、自分ですら国内外に手を尽くし苦労して手に入れたはずの召喚術の触媒。それがなぜ自分の手に、しかも複数の触媒がいつからあるかという疑問を持たなかったことを。



 その人物は気付いていない。

 いつしか自分の思考が、相手の主張と反転していることに。



 復讐のために。

 自分だけのために。

 自分に仇をなしたものたちに鉄槌を下しに行こう。



 いつしか見知った姿が消え奇妙に甘いにおいが薄まっても、彼の理性が戻る事はついに無かった。




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