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偲愛  作者: 388
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5話 願いが叶いますように

ーー休日ーー


美月のスクール水着を買いに、一番近くのデパートへ出かけた。

学校用品や生活雑貨も揃えて、カートには荷物がどんどん増えていく。


そんな帰り際、美月が顔を上げて言った。

「パパ、テレビのCMでやってたアスレチックパークに行きたい」


弾んだ声には、期待がにじんでいた。

疲れた様子も見せず、さっきまで手にしていた袋を手に、嬉しそうに腕を振っていた。


美知と直人の視線が合った。

唐突な提案に、ほんの一瞬戸惑った。

けれど、美月の嬉しそうな顔を見ていると、胸の奥がほぐれていくのを感じて、自然と頷いていた。


「今から行ってみる?」と直人が言うと、

美月はすぐに「うん!」と嬉しそうにはしゃいでる。


アスレチックパークに向かう道中、車内には軽快な音楽が流れ、

美月は後部座席でさっき買った文房具を一つずつ確認していた。


美知は窓の外に広がる景色をぼんやり眺めながら、ときおり聞こえる美月と直人の会話に小さく笑う。

どこかで置き去りになった記憶はまだ戻らないけれど、この穏やかな時間に心が少しずつほぐれていくのを感じていた。


しばらくして、木々の間にカラフルな遊具が見えてくる。

駐車場には子供連れの家族が次々に入っていく。

美知たちも車を降り、にぎやかな笑い声の中へと足を踏み入れた。


お昼ご飯もそこそこに、直人が「美知と美月、遊んできていいよ。律は見てるから」と言ってくれた。


その言葉に甘えて、内心少し楽しみにしていたロープネットやボルダリングへ向かう。


「美月ちゃん、行こうか」


そう声をかけると、美月の方から手を繋いできた。

まだ大人よりもずっと小さな手。

その温もりに、気持ちがふっとやわらいだ。


ボルダリングのゴールを目指して、ふたりで必死に登った。

手に汗を握りながらも、美知と美月は見事クリア。

受付で渡されたのは、小さなメダル。


「すごいね、美月ちゃん。やったね」

「ママもすごかったよ!」



帰り際、美知は小さく頭を下げた。


「ありがとう、直人さん、楽しかった」

「楽しんでくれて良かった」

照れたように笑う直人を横目に、美月が言った。


テーマパークの入口近く、小さな噴水がある。

水の中には、たくさんのコインが沈んでいた。


「ここでお願いすると、叶うんだって」


そう言って、美月はポケットから硬貨を取り出す。

そっと目を閉じて、コインを投げ入れた。


「お母さんの記憶が戻りますように」


――跳ねた水しぶきが、きらきらと光に揺れた。

美知はその後ろ姿を見つめながら、胸の奥がきゅっと締めつけられるような気がした。



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