閑話_里帰り
ある日、ナレカサル村の村長の家に一通の手紙と小箱が届いた。
「ふむ、あの子からか。」
先日、ムードが連れてきた人形繰りの得意な子は、会わせる顔が無いと言ってそれまで一度も訪ねてこなかった。
時折お金が届くので無事なことは判っていたが。
今の自分達があるのはあの子の紡いだ縁のお陰。
何時でも帰っておいでと言っておいたが何が書いてあるのかと思って手紙を開く。
簡単な挨拶と共に小箱の人形を飾っておいて欲しいと書いてある。
「人形か。」
人形師の考えていることが分かってそっと箱を開き小さな可愛らしい人形を机に置いた。
少しすると人形は目を開け、立ち上がった。
「御爺様。ただいまです。」
綺麗な礼をする人形を手に取り村長は微笑む。
「お帰り。」
手の中の人形と会話を楽しむ。
「あんまり無理するんじゃないよ。」
マーデでの一件を聞いた村長は人形の頭を撫ぜながら言った。
「はい、そうしたいのですがそうも言ってられなくて。」
人形師は現在ゼノバーンで大量の人形の調整中。
トニオから貰った小さな人形を使えるようにして息抜きをしているのだ。
「村を見て回るか。」
「はい、御爺様。」
村長は人形を肩に載せゆっくり村を回る。
村の住人はナレカサル一家の者以外もかなり増えた。
のんびり住人達と会話をしながら歩く。
村長に採れたばかりの野菜を見せて嬉しそうに笑っている。
「アナ・ハルナが復活して野菜も元気に育つようになりました。」
そういう男の傍で小さな神々が胸を張っている。
見えなくても気配を感じて有難うと男はお礼を言うと祈りを捧げている。
夕時になり、村唯一の酒場に入る。
「おや珍しい。」
普段は家で食事を取る村長がやってきたので店主が驚いた顔をしている。
「何か摘まむものを用意してくれんか。」
「はいよ」
ここに来てから20年、既に結構な歳だった筈が、来る前よりもずっと元気になっている。
量こそ食べれないが美味しく食事が出来ていた。
村の酒場には村人の他に近隣からも酒や料理を目当てに客が来る。
酒場の一角から歌声が響く。
ラナだ。
陽気な小さな神々が一緒になって歌っている。
歌姫になりたいという夢は実を結び、今では定期的にアレストリアの店でも歌っている。
そちらで専属にならないかと言われているが本人はここで歌う方が好きらしい。
そこでファンになった客が時々こちらの店にもやってくる。
かって罪人たちの村だっナレカサル
今ではそう呼ぶものはいない。
美味しい料理と歌声の村、そう呼ばれている。




