断章7.レナ・カサルに伝わる寓話
昔々、あるところに大きな大きな獅子が暮らしていました。
獅子はとっても強く怖い魔物もそこではとても大人しくなりました。
ある日旅人の親子は道に迷って獅子の近くにきてしまいました。
親子はびっくりして逃げ出そうとしたものの既に疲れ果てていたのでそのままばったり倒れてしまいました。
朝になって親子が目覚めると驚くことに目の前に果物が置いてあります。
獅子が親子を憐れんで食べるものを恵んでくれたのです。
親子は果物を食べて元気になりました。
そして獅子に頼みその近くで生きることにしたのです。
やがて親子の暮らす場所に人が集まり村になり、街になりました。
獅子の傍には魔物も悪い人も来なかったのです。
人々は安心して暮らしていたある日、酒場で若者達が自慢話をしていました。
「俺は風の様に速く走れる。」
「俺は森で狼を狩れる。」
若者たちは口々に自分の得意なことを語ります。
若者の中に真面目な農夫が居ました。
彼は色々なことが出来ましたがこういう時に自慢できるようなことがありません。
仲間達は彼をからかってはやし立てます。
「お前も何か凄いことやってみろよ。」
困った農夫は村の牧師に相談しました。
「凄いこととですか。それでしたら獅子に挑戦してみるというのはどうでしょう。」
それを聞いた若者は農夫を煽ります。
後に引けなくなった農夫は街外れの獅子の傍に行きました。
そして囃し立てる声に押されて獅子に石を投げてしまいました。
獅子は寝ぼけて石を打ち払います。
その石は囃し立てる若者の一人にあたって怪我をしてしまいました。
怪我をした若者を見て牧師が叫びます。
「獅子が人を襲った!」
街は大騒ぎになりました。
そして危険だと言って獅子を追い出そうとしたのです。
やってくる人々の相手をするのが面倒になった獅子は一吠えてそこを立ち去りました。
街の人は平和になったと喜びました。
だけど街の人は忘れていたのです。
平和なのは獅子がいるからだということを。
獅子が居なくなった街には魔物や悪い人達が一杯やってきました。
街の人は獅子に戻ってきてほしいとお願いしましたが獅子が戻ることはありませんでした。
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失って初めてわかる有難さ




