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シル・ストア~来訪者(旧サブタイトル:風の通り道)  作者:
最終章 来訪者

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3-7.山神の申し子

バーンの祭りは月が所定の位置に上ってから山の向こうに隠れるまで

その間歌って踊って飲んで食べる。

急遽バーンの祭りを開催することになり、最初に用意したものは素材。

ベースとなるのはノーサン村で使われるものだが、流石にそんなものは誰の収納にも入ってない。

結果、ソル達から聞き出した素材リストを元にジーンは各地のマリオネットを使って集めるのに費やされた。

・供え台や篝火、焚火用の木材

・酒(佳澄は果実水)

・魚、肉、野菜・・・

季節の関係で手に入らないものは何を代用するか決め、手に入ったものからジーンの収納を経由して加工を始める。

料理も煮込みが必要なものがあるので下拵えを開始する。

「村では大体どれくらい用意するんだ?」

「そうですね。僕達の村の場合、住人が100人程度でお客様が同数。時々申し子も来れられるので・・・」

ソルの言葉にダースが言う。

「大体100人位が一晩飲み食いする分があれば足りるんじゃないか?」

「そんなに?」

「僕達もですがリ・バーンや申し子達はよく食べますから。」

「足りないとまずいから150人前位用意しておこう。」

「余ったらどうするんです?」

「俺の収納な時間経過が無いから祭りの後で食べよう。」

今いる野営地では到底間に合わないのでマリオネットの置いてある場所の厨房も使う。

他の者に手伝ってもらう代わりにつまみ食いされながらひたすら料理を作り続けた。


二日後、綺麗に晴れた月夜の晩に祭りの準備をしていた。

ジーンも佳澄もその祭りに参加したことがないので仕切りをソルに任せ、彼の指示に従う。

お供え台や篝火はソル達の村で使っているものと似たものを用意した。

始めようかという頃にフードを被った客が野営地に近づいてくる。

ダースが来客に声を掛けた。

「山神の恵みと月神の輝きに感謝を。」

「山神の恵みと月神の輝きに感謝を。」

山の民同士の挨拶を交わし、祭りの席に誘う。

同じように数人がやってきて輪に加わったところでソルがお供え台の前に立つ。

供え物を掲げ、高らかに宣言する。

「雪解けと春の訪れを寿ぎ、我、シル・ストアのソルが山神の恵みに感謝を、今年の豊穣に祈りを捧げます。」

それを合図に手拍子と共にバーンの祭り唄を唄いだす。


「皆さんはノーサン村の出身かな。」

用意された酒と摘まみを手に客人が問い掛け、近くに居たイノックが答えた。

「僕達4人はそうです。村の祭りは随分前に終わってますがまだ雪の残るここならバーンもお許し下さるでしょう。」

「唄だけで分かるんですね。」

「ええ、我々は全ての村を回りますから。」

客人への問い掛けは祭りが終わってから・・・ソルよりそう聞いている。

祭り初参加のジーンと佳澄は大人しくソル達の会話に耳を傾けて料理をつまんでいた。

自分の分の料理を食べ終えたルーはジーンの背もたれとなっている。

モロゾフは食べ足らないのかあれこれ佳澄に摘まみを取って貰っていた。

「モロゾフ、太るぞ・・・。」

ジーンの言葉にそっぽを向くモロゾフは視線を闇に向ける。

そこには見慣れぬ巨大な鳥が数羽佇んでいた。


「申し子が参られたか。」

客人の言葉にソルがお供え物を申し子の前に置くが・・・鳥達は首を横に振った。

どうもお気に召さないようだ。

視線を辿ると佳澄がモロゾフに食べさせようとしているトンカツに行きつく。

「これを食べたいのですか?」

佳澄の言葉に申し子達は頷いた。

収納に仕舞ってあった予備のトンカツを皿に盛って出す。

嬉しそうに鳴いて食べだす申し子達を見ながらモロゾフが喋りだした。

「モドラに聞いて食べたかったと言っている。」

「・・・」

「この子達、モドラの友達なんだ。」


客人が笑い声をあげた。

「新たなヤーレの申し子と親しいそうだな。」

「はい、色々仲良くして頂いています。」

また申し子はモロゾフに何かを言っている。

「焼き鳥と唐揚げに揚げた芋が食べたいと言っている。」

「・・・ビールもか?・・・」

自分の手元に視線があることに気が付いたジーンの言葉に申し子が揃って頷いた。


祭りが進むと各々唄と踊りを披露する時間になった。

ジーンは海洋国で覚えた剣舞を

佳澄は空手の演武を披露する。

ソル達は4人で村に伝わる群舞を

ルーとモロゾフは普段やっているボール遊びを

より派手にして披露していた。

客人達は各々得意とする踊りを披露し、

申し子は友愛の踊りを踊っている。


月が山の向こうに隠れようとしている。

祭りはお開きの時間だ。

申し子達はソル達4人に視線を向ける。

「偉大なる山神。我らの持て成しに満足頂けたでしょうか。」

ソルの言葉に頭に直接声が響く。

『バーンの子らよ、我が加護を授けよう。』

光が4人を包んだ。


朝になり申し子達は各々棲み処に帰っていく。

ジーンが各地に置いてあるマリオネットを駆使して大量に作った肴はほぼ空になった。

収納に隠していた日本酒やビール、ワインも半分近く減っている。

祭りの後片づけをしていると客人がいった。

「ステバノやボリスから話を聞いている。」

「これよりバーンのコアの再起動をしよう。」

「新たなリ・バーンよ。お前達に神殿の呼び方を伝えよう。」

そう言ってソルや客人は交互に手をつなぎ

「偉大なる山神の宮をここへ。」

その言葉から目の前に神殿が姿を見せた。


重厚でいてシンプルな山神の神殿の中心に見覚えのある球体が浮かんでいる。

「ソルよ、御霊に触れよ。」

こうして4つ目のコアが再起動された。

アナ・ハルナの復活は近い。

山神は普段、祭りに対し村とその周辺に祝福を送ってます。

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