閑話_歴史は繰り返す
雪解けが始まったバーンの中腹にあるベースキャンプにて。
「今年も恒例の依頼が届いた。」
ソルの言葉に皆が頷く。
「そういやもうそういう時期か。」
イノックの言葉を皮切りに次々と発言が飛び出す。
「今年は何人かね。」
「例年10人はいるけど、どこまで行けるかな。」
春の雪解けの時期、冬の間村に閉じ込められた腕白達が腕試しとばかり家出する山岳地帯の恒例行事
バーンの村々ではこの時期の為に予算を組んでヤーレに家出人確保の依頼を出している。
依頼内容は家出人探しの他に雪崩等の発生個所や危険地帯の確認、はぐれの駆除など多岐に渡る。
バーンの村出身の4人はこの時期になると4つに分かれて担当地区の巡回にあたる事になる。
期間は1か月。その為、故郷の村の祭りに参加できるのは村のある地区を担当した一人だけだ。
「担当地区は・・・」
分担を決め、連絡手段などの確認をする。
家出しそうな年齢の子供達の情報共有も実施。
皆、最低4年に一度はその村を訪れているので顔馴染だ。
「今年はネルニ村の二人がやりそうだな。」
「あの二人か。確かに、昨年あたりからそろそろやりそうだったな。」
ネルニ村のある地区の担当はダース。
「頑張れよ。」
この恒例行事、自分達が20年前に家出したことが始まりである。
それまではせいぜい村の近辺で確保されていたが、ソル達は山を下り、ゼノバーンの近くでジーンとムードに確保された。
依頼遂行中だった二人は連絡だけ入れて暫く一緒に行動している。
依頼内容が行方不明者の捜索で人手が必要だったということもあるが無事依頼達成後、ノーサン村に送り届けられた。
その際、親や村長を説得し、現在に至る。
付けられた条件が時々顔を見せに行くこと。
山が嫌いで家出した訳でないので山岳関連の依頼は積極的に引き受けている。
それから半月、既に5人程の腕白達を確保して村に送り届けている。
ネルニ村の二人はまだ行動を起こしていない。
ダースの担当地域で大規模な雪崩が発生している場所があった。
その場所の調査結果を付近の村に報告しようと思ったタイミングで違和感を感じた。
「?子供か?」
二人ほど、この時期はまだ居ない筈の少年少女の気配。
「やりやがったな。」
ネルニ村の二人だ。
ここは既に村から半日以上離れている。
自分に連絡がないことから夜の内に家出したのだろう。
早速二人を確保するべく動き出した。
二人は山間の開けた場所で焚火をしている。
この時期、枯れ枝はまだ雪の中だから村から持ってきたのだろう。
「既に収納はマスターしているか。」
二人は軽装で特に荷物などを持っている様子がない。
その状態で焚火して食事をしているとなると相応の準備をしている。
「気付かれる前に確保しないと・・・って」
バキッと足元で音がする。
感知用の即席の罠をあちこちに仕掛けていたようだ。
「こらー待ちやがれー。」
罠の警報で速攻焚火の始末をして逃げ出す二人。
ダースは身体強化の異能を発動して二人を追いかけた。
「ち、不味いな。」
二人の逃げていく方向に先程の雪崩地帯がある。
「わー!」
どうやら雪崩に気付かず飛び出して落下していく。
「間に合え。」
持っていた網に強化異能を掛けて二人を確保、上に引き上げた。
「よし、大した怪我は無いな。」
確保した二人の身を検めると幸い、手のひらや顔に少々かすり傷がある程度。
「あーあ、捕まっちゃった。」
網から解放した二人は流石に大人しくしている。
「ネルニ村のヒューとリンだな。」
二人とも大人しく頷く。
「何度か顔を会わせたから分かると思うが俺はノーサン村のダース。大人しく村に帰れ。」
「嫌だ。」
「もう少し年を重ねりゃ出る機会なんて幾らでもあるだろ。」
「嫌だ。僕達外で仕事してみたい。」
二人共視線をダースと合わせようとしない。
「ともかくだ。一旦ネルニ村に戻るぞ。出るならちゃんと親の許可を取れ。」
渋々二人は頷いた。
それから二日後、拠点に集まって中間報告。
ダースの隣にはしっかりネルニ村の二人が居る。
苦笑いを浮かべるソル達3人。経緯は報告で聞いている。
かっての自分達を同じ、親を説得してくっついてきたのだ。
村に戻る途中、同じように家出した子供を二人確保するおまけつき。
「何でも屋になれるのは15才からだ。それまではシル・ヤーレで勉強してもらうぞ。」
嬉しそうに頷く二人。
シル・ストアに新しいメンバーが加わるのはあと少し先の話。
この二人は3-12.で出てきます。




