作戦会議その4(立場)
「妹?、娘じゃ駄目なのか」
そうカフェでは佳澄はジーンの娘ということにする方針だった。
しかし、それでは駄目だとマーサは言う。
「あんたと佳澄は似ているから赤の他人は難しい、それは私も同意するよ」
「ジーン、普段の行動を思い返してみな。」
顔を見合わせるジーンと佳澄
「言い寄るあまたの女達を片っ端から振って相手にしてこなかったのに娘がいたなんて言って通用すると思う。」
ギロリと睨まれ肩を竦めるジーン、なかなか芸が細かい。
「流れの辺境民の女性じゃ通用しないんだ。」
「他の男ならね・・・それで十分なんだけどジーンじゃ無理よ」
「知名度高すぎるし、普段の行動やものの考え方知られているからね。」
「子供好きで誠実、親切に振舞っているこいつが娘の存在を放置していたなんて言っても信用されない。」
「妹ならOKなんだ」
「ジーンが家に引き取られたのは7歳の時だ。」
マーサの言葉にミアが続ける。
「流れの辺境民夫婦は子供が幼いうちは知り合いの定住者に預けるなんていうのは珍しくないの」
ジーンの両親とシル・ストアの代表であるガイ・マーサの夫婦は知り合いではあったが家族構成を話すほど親しくはない。
両親の死でショックを受け、ジーンが忘れていたことにしても問題はない。
そして一人前の何でも屋になった頃、ジーンは単独調査であちこち放浪していた。
その時に再会していたことにすれば辻褄は合う。
「私、16なんだけど・・・」
現在、36歳のジーンの妹、両親は7歳の時に死亡、最低でも30歳じゃないと合わない。
「大丈夫、異能者は都市の住人比べて皆若い」
そうであるジーンの見た目は20代半ばにしか見えないのだ。
「佳澄は最初子供かと思ったけど話してみたらそうとは思えなくて実年齢聞いてびっくりしたんだよね」
「異能が発現すればそして数や種類が多く異能波が強ければ強いほど成長は遅くなる」
「ジーンの影響で異能の発現が早く種類も多彩、ただし育った村から出たことはなく実戦経験も乏しいということにする」
辺境民達の村は数が多く、隠れ里のような村だと周囲と殆ど交流が無く、全く知られていないものの少なくない。
また情報網の発展している城塞都市間はともかく、辺境民の村々は交通の便が悪く人が歩いて行く以外の手段がないところが多い。
一流の何でも屋であるジーンなら手紙を託すより自分で出かけていくだろう。
育ての親であるマーサとガイが口裏を合わせれば隠す気はなかったが結果的に隠していたことにすることが可能だった。
辺境民が村を出て何でも屋になろうとした時、30歳は別に特に遅くも早くもない。
特に佳澄のように見た目が若い場合(実際に若いのであるが)、村の大人達に止めらていたというのも無理のない話である。
「30になったんで思い切って兄を頼って村を出たことにすれば周りは納得させられるわ」
佳澄16歳、ここでは30歳になった・・・
「ところで他のメンバーはいつ戻ってくる予定だ」
ジーンの問いにミオが答える。
「マリス達は既に法王国を出たって連絡があったからガイを迎えに行かせたよ」
「代表達もバギーで海洋国に向かったはずだが」
「マリスの運転ならあんたのいかさまチューニングの装甲車の方が早いわよ」
「えっとそれでバギーはどうするんです?」
「佳澄、バギー位ならガイの収納に入る。」
「そもそも船での移動にバギーは収納に入れているからね。」
「佳澄ちゃんの夢って全部見ている訳じゃないんだね。」
「はい、父が言うには仕事でルーチンと化しているような部分は特に意識もしないから夢に出てこないんじゃないかと」
「お父さんに話しているんだ」
「はい、父や母、兄には相談に乗ってもらってます。」
「後、弟さんがいるんだっけ」
「はい」
佳澄の様子にジーンは話題を戻した。
「そうなると代表達が戻ってくるのは9月14日か」
「ソルのところの調査は明後日までだから早ければ13日かな」
「さて男どもが戻ってくる前に佳澄の受け入れを終わりにしようじゃないか」
「明日はギルドに行って本登録、後は日用品の買い出しか」
「その前にまずはご飯だね」
「佳澄は料理できるんだよね」
「はい、使い方はジーンが色々作っていたから分かると思います。」
「私、チーズハンバーグが食べたい!」
「ミオ、お前はもう少し料理を覚えろ・・・」
シル・ストアの代表であるガイとマーサは夫婦でともに60歳越え、見た目は40歳位です。
ミオはマーサの姪でジーンの2年後にシル・ストアに転がり込んできました。
その時点で少し年上だったので佳澄はミオ姉と呼んでます。
見た目もジーンとより少し上位です。
ガイとマーサには子供が二人いますがどちらも結婚して独立し、別の都市に拠点を構えてます。