3-2.会談
ジーンチームは一旦解散、仕切り直しです。
レア・マーデの崩壊から2週間、ここで何が起こったかのか調べ膨大な資料を手に入れた各勢力は一旦自身の本拠地に戻ることになった。
一番近いゼ・ドナに連絡要員を残し継続調査はゼ・ドナのギルドが中心となって行うことになる。
マーデ5都市の人口は昨年の報告で300万人。
首都であるレア・マーデに100万、残り4都市で40万から50万。残りは教会と農村になる。
今回発見された生き残りは都市の外周区にいた者と、一部の農民、ギルドが放った密偵や外部から来ていた旅行者など僅か数百人程度だった。
想定される死者の内訳は肉塊に飲み込まれたのが50万弱、残り200万以上が都市の内陣と教会でミイラとなって発見された。
事件の数か月前からマーデを離れるものが増えていたので事件当時どれ位の人間がいたのか詳細は分かっていない。
通常ならこのような事件の後、埋葬や遺留品探しが作業の大半を占めるのだが・・・今回はない。
肉塊となってレア・マーデに向かったものはジーンの手で焼き払われたので遺骨すらまともな形で残っていない。
レア・マーデの一角に合同の墓を作ってそこに全てを収めている。
ミイラとなった被害者達は各々の墓地に順次葬られることになっている。
墓碑には認識票が見つかったものから順次名前が刻まれていく。
現在は認識票が見つかっていないもので生存が確認できない、都市の外に出た形跡のない、あるいは都市にいた形跡のあるもののを確認中だ。
神聖帝国時代から続く2000年に近い歴史を誇る旧エルダの神殿、現在の教会地区は他の都市に比べて破損は少ない。
その大聖堂で、合同の慰霊祭が行われた。
死者の大半はトリスタン教徒の為、本来ならばトリスタン教の司祭が慰霊祭行うべきなのだろう。
しかし、今回の事件は様々な調査結果からトリスタン教関係者が引き起こしたと思われている。
その為、この神殿の元々の祭神であるエルダを祀る神聖帝国の祭司が慰霊祭を執り行っている。
唱えられる祝詞はハーレナ語、エルダを称え、その慈悲を乞う祈りの言葉は光となり神像に吸い込まれていく。
その厳かで幻想的な慰霊祭は恙無く終了した。
「これが本物の祭司なんですね。」
感心したように人形師が言葉を吐き出した。
「ああ、エルダの申し子が復活したんで正式にリ・エルダ、エルダの祭司となったそうだ。」
「そうですが・・・アナ・ハルナやハーレンの人達がトリスタン教を信仰しないのが良く分かりますよ。
これに対抗できる牧師や司祭はいない。」
「そうなんですか?」
マリスの言葉にリオンが答える。
「そうだね。巡回牧師は多少治癒能力が得意な位でここまで神を感じさせることは無いです。」
「そもそもなんだけど、トリスタン教の言う大いなるものって存在するの?」
佳澄の言葉に顔を見合わせる。
「教祖トリスタンは会ったと言っているけど他はどうなんだろうな?」
「何か非常に嘘くさいんだよね。」
「佳澄さんの故郷はどうなんです?」
「一神教を信仰する2大勢力が喧嘩しているし、さらに同じ宗教同士が解釈違いで血みどろの抗争をしている。」
「すごく物騒ですね・・・」
「実際物騒。私の故郷は多神教で正月に神社にお参りして葬式はお寺、神頼みは神社で、結婚式は教会・・・一神教の人達からすると節操が無いと言われているけどそう言う点は平和だよ。」
そう言って手にした飲みものを口に入れる。
「偶に新興宗教がテロだなんだって物騒なことすることがあるけどね。」
「一つの神以外は全て悪魔って考え方をすると自分と違うものは受け入れない、あるいは下等扱いする。」
「トリスタン教ってこっちで似たのがあってそれがやってきたことを思うとあんまり良い感情が持てない。」
「全知全能の神やアカシックレコードなんて確かに信用できないな。」
「全知全能の神は何となく分かりますがアカシックレコードって何です?」
「この世の全て、現在・過去・未来すべての事象、想念、感情が記録されているという世界記憶の概念だよ。」
「トリスタン教の経典を読むとそれらしき記述がちらほら出てくるんだよね。」
「おおいなるものの書ですか。」
「そうそれ。教祖トリムが貰ったっていう奴。」
人形師の顔が渋くなる。
「それのせいでうちは酷い目にあったんですよね・・・」
「そう言えばお前がトリスタン教に批判的なのってそいつが原因だったな。」
ゼ・ドナの拠点に戻って今後の方針の話し合いを始める。
人形師は一度ゼノバーンに戻ると言って慰霊祭の後に別れた。
お土産として日本で買った酒、ビール、ワイン、ウィスキー等を数十本渡している。
「ジルフォード卿は一月ほど前に法王の命で法王国に戻ったそうです。」
「空港で呼び戻しに来た司祭と口論している姿が目撃されています。」
マーデの空港は城塞の外側にあるので事件の影響を受けていない。
事件直前、トリスタン教徒の職員はミサがあると言って教会に向かっていたので職員の魔人化も起こっていなかった。
「ジルフォード卿には神の子と思われる少年少女が数十名同行していたそうです。」
「多いな」
「はい、レナ・カサル全土で子供達を集めていたようで、来年以降に向かう年少の子供も多数含まれているようです。」
「知っていて逃がした可能性大って訳だ。」
「カミラさんもその意見ですね。」
「今回の一件でエマルドからもトリスタン教の関係者が法王国に帰国しています。」
「追い出されたのかな?」
「事件前から多数の牧師や司祭が帰国、呼び戻されているので法王国の関与は間違いないでしょう。」
「法王国か。あそこはやりづらいんだよな。」
「そうですね・・・」
「ここでやりたいことも無いし、ハーレンに戻るか。」
1章から登場してますが全く出番の無かったソルチームがやっとメインです。
がその前に一旦日本に帰ります。




