2-13.アナ・ソナの復活
「今、海底神殿の前に着いた。」
祠の前のジーンが言う。
同じ内容が各地のマリオネットから伝えられている。
上空は相変わらず赤い空、アナ・エルダからだとある地点を超えると空が赤くなる。
その地点がワイズマンシステムの境界らしい。
神官達が言うには少しずつではあるが空の赤みは引いているとのこと。
向こうに戻ると同時にシル・ムレアからデューに連絡を取った。
作戦の概要を説明すると二つ返事で了承が得られる。
苦手な細かい異能操作が余程嫌だったらしい。
デューが持ち込むマリオネットはシル・ムレアに置いてあるものを使い、佳澄は飛行船を借りてアナ・エルダに向かった。
ゼ・ドナのメンバーはそのまま継続で依頼を受けながら調べを続けることになる。
アナ・エルダで海洋国の同行者と合流し、祠の前で待機している。
「ハッチを開けた。中に入る。」
無事第一関門突破。
デューはこのハッチを開けるための細かい操作がうまくいかず、暫く海洋国の神殿で練習を繰り返していた。
海洋国の神殿では出来てもここだと失敗する原因は並列思考数が足りてないからだろう。
生身で深海にいるためには海神の加護があるとはいえ、幾つもの異能を同時で使う必要があるからだ。
「排水完了、神殿に入る。」
「中の様子はどうなっている?」
海洋国の神官長が聞く。
「暗いな。最低限の機能しか稼働していないようだ。」
少しして言葉を続ける。
「デューが近付いたら色々稼働し始めた。このまま祭壇に向かう。」
周りの神官達がそわそわしている。
「内部の破損は確認できない。壊れたとしても修復されたようだ。」
一旦中に入ってしまえばデューにとって慣れ親しんだ海洋国の神殿と同じ作りだ。
迷うことなく奥へ奥へと歩いていく。
「祭壇に着いた。」
「ジーン、ここに手をついて祈ればよいのか?」
デューは祭壇の宝珠の前に立っている。
「佳澄の話じゃ宝珠から色々聞いてきたと言っている。まずは手をついてみたらどうだ。」
「分かった。」
待つことなくシステムの無機質な声が響く。
「リ・ソナを確認しました。再起動を承認しますか?」
戸惑うデューがジーンを見る。その視線にジーンは頷く。
「ああ、承認する。再起動してくれ。」
「再起動、承認されました。これよりワイズマンシステムを再起動します。」
沈黙していたパネル・計器類が一斉に稼働し始めた。
外の気配が急に変わる。
重苦しさが無くなり呼吸が楽になる。
「あっ」
佳澄の声に神官達は空を見上げた。
空は赤みが急に薄れ青く太陽が見える。
「やった!」
歓声が沸き立つ。
そして祠の前に並んだ神官達はゆっくりと祠の扉が開くの見守っていた。
一時間後、神官達は祭壇の前で祈りを捧げていた。
佳澄達が祭壇に到着したのを確認し、ジーンはアナ・エルダ、ヤーレ、セドンを呼び出す。
「無事再起動できたようだな。」
「こちらからも確認できた。」
ビジョンにマギ、ステバノ、ボリスが映し出された。
「次はリアナの循環を指示してくれ。」
「リ・アナの循環?」
「ワイズマンシステムは元々その為に作られたものだ。」
「それをするとどうなるの?」
「世界が落ち着く。」
「今のこの世界はリ・アナが暴走している。」
「貴方方の言うモンスター化はこのリ・アナの暴走が引き起こしている現象だ。」
「コア一つではその周辺の暴走を抑えるだけだが隣り合うコアが起動すれば循環が始まる。」
「そうすればより広範囲のリ・アナの暴走を落ち着かせることが出来る。」
システムの無機質な声が響く。
「リ・アナの循環を始めますか?」
デューは宝珠に手を当て始めろと伝える。
「アナ・ソナの循環の準備が整いました。アナ・エルダの準備が整うまで待機します。」
どういうこと?と顔を見合わせ、マギに視線が向く。
「マギ、あなたから準備を始めて貰えませんか?」
「分かったやってみる。」
少しして戻ってきた。
「駄目だ。私からだと指示を受け付けない。」
「佳澄が向こうに行くしかないか・・・」
「いえ、来訪者よあなたがそこから指示してください。」
「どういうこと。」
「適合者は全てのコアに指示を送ることができます。」
「眠った状態は無理ですが既に稼働しているコアならそこからでも可能でしょう。」
「アナ・エルダの準備が整いました。循環を開始します。」
ワイズマンシステムがリアナの循環を始めると祠の外やアナ・エルダの外で待機していた者達から次々と報告が始まった。
「こちらアナ・エルダの外周です。緑が、草が生え始めました。」
「こちら祠周辺です。木が蘇り始めました。若葉が生えてます・・・花が咲きました。」
「こちらリソーナの王宮です。こちらも秋植えの苗が一斉に芽吹き始めました。」
「陛下、聞こえますか?こちら皇宮です。庭の薔薇が咲き始めました。」
影響はワイズマンシステムの外、神聖帝国にも影響が出ているらしい。
「どういうこと?」
ステバノ、ボリスに視線を向ける。
「リアナの祝福だ。循環が始まったことで大地が命を生み出す環境に戻ろうとしている。」
「ということはすぐにアナ・ヤーレの再起動をした方が良いの?」
「否、急激な変化は大地に良くない。ある程度力が落ち着くの待った方が良いだろう。」
「どれくらい?」
「最低1か月は置いた方が良いと思う。」
「そこから出たいんじゃないの?」
「ああ、だが急いて大地に負担を掛けたくない。」
祠から海底神殿まで距離にして数キロあります。
普通なら2時間位掛かる距離ですが神官達は神殿への道は走ってはいけないという教えによって皆競歩で移動しました。




