2-11.炭鉱をめぐる争い
モロゾフの活躍するシーンが全くないことから急遽追加
ジーンと別れたリオン・マリス達の話です。
ジーンの呼び方は佳澄、リオン、マリスはジーン、サーレとムレアの4人はジーン先輩です。
間違い修正、ここでの話題は法王国、神聖帝国の刻印は神代文字です。
ジーン達と別れリオン達はゼ・ドナの南東にある炭鉱の街ファナに向かった。
拠点から1日、最初の野営地で休息をとる。
ジーンに鍛えられたリオン・マリスの料理の腕は中々のものでコックになっても生きていけると言われている。
この二人には劣るがクロップ、ケイロスもまたここで鍛えられている。
4人+1羽の夕食は野営地での食事にしては豪勢なものになっていた。
幸い現在この野営地に居るのは彼らだけだが他にいたら絡まれてもおかしくない。
モルゾフはマリスの横に用意された止まり木と餌台から美味しそうに食事を平らげていた。
「マリス、美味かった。お代わり!」
「モロゾフ、食べすぎじゃない?飛べなくなっても知らないよ?」
「確かに・・・少し太ったんじゃない?」
「そんなことない、俺様スマート。」
羽を広げて見せるモロゾフ。何となく胴体が丸くなったような?
食事を終えて地図を広げる。
「ファナに着く前ににお浚いをしよう。」
「ファナの第3炭鉱で白鉱石の鉱脈が見つかったって話だよね。」
白鉱石はアナ・ハルナのコアの原料とされる鉱石である。
「その噂が出た翌日第3炭鉱は事故が起こったとかで閉鎖。」
「夜中に怪しい人物が出入りしているという話だよね。」
「まずは情報収集だけど・・・ファナのギルドって信用できるのかな。」
「鉱山ギルドか?」
「どっちも」
「何でも屋の方も怪しいか。」
「情報が少なすぎるというか見せて貰った資料、怪しいとこ無さすぎ。」
「今回の調査の元ネタもファナの街に通り掛かった何でも屋が酒場で拾った話だしね。」
「ゼ・ドナから白鉱石について問い合わせしたらデマで見間違いだったという報告が帰ってきている。」
「ただ噂が出てから1か月以上、未だに第3炭鉱が閉鎖中というのは怪しい。」
貰った資料を前にああだここだ話しているとモロゾフが地図の上に移動してきた。
嘴で一つの街を指す。
「デ・マナ?そこがどうかしたの?」
「先にそっちで情報を集まろ?」
「そうだ。」
デ・マオはファナに一番近い港町である。
人出入りも多く噂も集まりやすい。
自分たちが情報収集をしてもファナよりは目立たない筈だ。
「少々寄り道になるけどそのまま乗り込むよりは良いか。」
「誰かファナで信用できそうな人を紹介してもらえると良いね。」
「ギルさんに情報屋を紹介してもらおう。」
二日後、デ・マナを望む岬の前に着いた。
既に日は暮れ、灯台が辺りを照らしている。
デ・マナの城門は既に閉まっていたが何でも屋の認識票を見せれば脇門から入ることは可能だ。
それをやると悪目立ちしそうだったのとなんとなくではあるが今は街に入らない方が良い気がしている。
「ここは随分と中途半端というかバランスの悪い街だね。」
眼下のデ・マナをみてケイロスが言った。
同じ港街であるデ・カサルの城塞は港を含まず都市のみを囲っている。
港や空港は城壁の外側にあり、近年規模を拡大している。
城塞の外側に整備された街や倉庫が並んでいた。
対するデ・マナの城塞は港を含む都市を半円状に囲っている。
都市の中枢である内陣は城壁の近くにドーム状に存在していた。
城壁の外側にはただ草原が広がっており人の住んでいる気配はない。
城壁の内側はゼ・ドナの建物に似た高い建物が立ち、内陣を囲んでいる。
港に入りきらない船は幾艘も入り江に浮かんでいた。
「なんかこれ以上の発展は難しそうな街だね。」
その夜、見張り当番だったリオンは他のメンバーを起こした。
「あれを見ろ。」
城壁から少し離れたところから小舟が入り江の船に接近していく。
時間は深夜1時、明かりもつけず疾走する小舟は港町の警戒網に引っ掛かる様子見は見られない。
4人はジーンより広く浅く警戒網を張るスキルを教わっていたが一番範囲の広いリオンで辛うじて引っ掛かる場所。
「僕が見張りの時ももしかしたらあったのかな。」
リオンの前の見張りだったクロップが呟いた。
「ありうるだろうけど、あいつらもまさかここから気付かれるとは思っていないじゃないかな。」
「どうする?」
「明日、あの小舟が出たあたりを探ってみよう。」
「それじゃ遅い!」
「モロゾフ?」
「俺様があの船の行く先を偵察してくるからお前達は直ぐに小舟の出たあたりに行け!」
そう言ってモロゾフは闇夜の中を飛んでいた。
気配を消して小舟の出たあたりに移動すると近くに装甲車があることに気付いた。
気付かれないように証拠となる映像を収める。
装甲車の外に見張りが一人、中は空の様だ。
遮音結界を張って会話する。
「ここに車があるということは戻ってきてどこかに行くといことだね。」
「二手に別れよう。マリス、クロップはバギーで後を付ける。」
「僕たちはデ・マナで情報収集してファナに向かう。」
「盗聴用のマーキングを付ける?」
「ジーン先輩ならともかく僕達じゃバレる可能性が高い。」
「風に頼もう。」
クロップは周囲の風に意識を載せ、言葉を拾ってもらうように頼んだ。
証拠能力は低いが断片でも会話の内容を拾えれば次に繋げやすい。
そうやって隠れていると沖合から小舟が戻ってきた。
装甲車は走り出すのを確認してマリスとクロップはバギーを出して追跡を開始。
日の出の開門と共にリオンとケイロスは肩にモロゾフを肩に載せてデ・マナに入った。
港を望む公園のベンチに腰を下ろしたリオンとケイロス、その背中側に顔を見せない情報屋。
「白鉱石か。」
ギルの紹介してきた情報屋は白鉱石は輸出入が制限され認められたところが決められた範囲内で取引する資材だという。
「現在取引が認められているのは法王国とレア・マーデの2つだ。」
「じゃ船と言うことは法王国?」
「いや、あそこは自前の鉱山がゼノバーンから仕入れていてレナ・カサルとは取引していない。」
「白鉱石の値段が上がったとか不足しているという話も無いから違うか。」
「レア・マーデならわざわざ船を出す必要ないし・・・」
リオンは封筒を地面に落とし後ろに蹴飛ばした。
封筒を拾った情報屋は同封さえた手付金に目を細める。
「悪くない額だ。」
封筒には昨夜モロゾフが撮影した沖合の船の映像が入っている。
「この船は法王国のものだな。船名に見覚えがし、特徴的なレリーフが刻まれている。」
「写真に写っている人について調べて貰えませんが?」
「直ぐは無理だな。」
「分かりました。結果はギルに連絡してください。」
「ああ、明日には連絡しよう。」
情報屋が遠ざかるの確認してリオンとマリスは立ち上がり、街の外に向かう。
遠くからモルゾフがリオンの肩に乗ってきた。
「街で白鉱石に関する話をしている奴はいなかった。」
「今までファナの炭鉱で出たって話は無かったし、ここまで噂は届いていないのかな。」
装甲車でファナに移動中
「法王国でコアを作っているって話は聞かないけど。」
「前にジーンに聞いたらエマルドも法王国も400年前に挑戦して失敗しているんだって。」
アナ・ハルナのコアの作り方の大枠は400年前の時点で公開している。
その工程でコアを作ることが出来たのはアナ・ハルナ以外で海洋国と法王国の2つのみ。
「途中で神殿に納めて神の加護を受ける・・・だっけ?」
「ジルフォード卿から聞いた話で昔法王国でコアを作ろうとして教会で司祭が祝福を与えたらしいんだけど・・・」
「コアにはならなかった・・・って訳か。」
「そうらしい。」
「コアの加工や修理って確か都市やギルドの認定証がないと駄目だったよね。」
「禁止されているのは売買で家族間の譲渡とか修理は問題無し。」
「リオンは前に法王国に行ったんだよね?」
「あちこちで刻印を利用した機器があったよ。」
「・・・」
法王国で使用されている刻印はアナ・ハルナの神代文字とは異なるものである。
それはレナ・カサルの公用語によく似ていた。
ファナの外の野営地でマリス、クロップと合流。
「あの車、ファナの鉱山ギルドの幹部の持ち物だった。」
「乗っていたのはエド・ファナ?何でも屋崩れ?あまり評判の良くない連中と・・・」
「熱心なトリスタン教徒?」
「よく分かったな。」
「あの入り江の船の持ち主は法王国だそうだ。」
「次はどうする?」
「ファナの街では一部の炭鉱が見学できるんでそれを申し込もうと思う。」
「まずは合法的に近づいてみるのも手か。」
「それを踏まえて以降の方針を決めよう。」
翌日4人は鉱山ギルドの受付で見学ツアーの申し込みをした。
「ゼ・ドナ所属で・・・C,Dランクですか???」
「ええ、ここら辺は初めてなので見学しておこうかと思いまして。」
「珍しいものなんてないですよ?」
「先輩から何事も経験だと言われています。」
「チーム名は?」
「友人同士でチームを組んでいる訳ではないです。」
「観光ですか?」
「そんなもんです。」
嘘はないが真実でもないことを話して無事案内人と共に炭鉱の入り口にやってきた。
来る前に色々資料は読み込んだが実際に見るとなかなかの迫力である。
案内人の説明にリオンが質問した。
「あれは何に使うんです?」
ゼノバーンの鉱山では見かけないものあり色々楽しみながら見学を続ける。
見るものがみれば4人が警備の配置や施設の構造を把握しているのが分かったかもしれない。
一般人である案内はそれに気づかず付き合いのよい見学者に気を良くして熱心な解説をしていた。
そろそろ見学も終わろうかと言う頃、少し離れた場所で爆発音がした。
第3炭鉱の方角である。
「何事です!」
リオンの問いに驚き固まっていた案内人がしどろもどろになって答える。
「あちらは閉鎖中の筈なんですが・・・」
おろおろと周りを見回す案内人に畳みかける。
「閉鎖した場所で爆発なんて確認した方が良いんじゃないですか?」
「僕達は何でも屋です。何かお手伝いできるかもしれません。」
案内人は勢いに押されて頷いた。
「そうですね・・・確認しないと・・・済みませんが動向をお願いします。」
第3炭鉱の入り口は破壊され、中から煙が噴き出していた。
『これ予定にないよね?』
『ああ、モルゾフに渡したものは炭鉱の扉を破壊する威力は無い。』
入り口をのぞき込むと中から罵声や破裂音が聞こえてくる。
「えっええ何が起こっているんです???」
パニックを起こした案内人を宥め、中に入る。
そこにはエド・ファナと思われる一団、ギルド職員らしき一団、そして仮面の道化師がいた。
道化師の足元には何人も血を流して倒れた人がいて、道化師以外は皆武器を持っている。
飛び込んできたマリス達をみて道化師は優雅に礼をした。
「これにて終幕。」
その言葉と共に坑内に光が満ちた。
「一体何だったんだ・・・」
光が収まった後には道化師の姿はなく、自分達以外は皆倒れている。
武器を持った者たちを拘束、怪我人を運び出し、鉱山、何でも屋ギルドに都市政府の事情聴収。
それらが一段落する頃にはすっかり夜も更けていた。
用意された宿でぐったりと椅子に腰かける4人。
「何だったでしょうね?」
「遊ばれていたんじゃないの?」
「僕もそう思う・・・」
「最初の情報、デ・マナで全く聞かないから道化師がギルド長に教えたじゃないの。」
「ようするに僕達、道化師にいいようの利用されたってことなのか。」
「そうじゃない?道化師としてはこれ以上白鉱石が法王国に流れるのは防ぎたかった。」
「で、ギルド長経由で僕達に情報を流して公にしたと。」
「そして後始末をこっちに押し付けた・・・」
リオン達はファナのギルドから正式に調査依頼を受けるのは翌日のことであった。
情報屋とのお金の受け渡しはep.8で佳澄が使った旅行者用の簡易版の認識票
最初の爆発はモルゾフの仕業です。
道化師、本編初登場




