表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シル・ストア~来訪者(旧サブタイトル:風の通り道)  作者:
第2章 レナ・カサル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/105

断章_在りし日の幻影

トーリ・サイデン初登場

時期的には本編から50年程前です。

同行しているのはゼン。


小説の元になった話は、レナ・カサルですがトーリがモデルとしてのはヤーレ近くの古城です。

「今日の出し物はなんだろうね。」

「前に来た水使いの人は来るかな?」

昨年の目玉だったのはアナ・トーラから来た旅芸人

水を使い生み出した獣や鳥を使って様々芸を披露してくれた。

水神の神殿が近いこともあって水を使った芸を披露する芸人は多い。

が、今まで見た中で抜群の芸を見せた彼は流石に来ないだろう。

「最後の虹。もう一回みたいな。」

「僕も。」

少年達は行きかう人波に乗って歩く。

街の広場には舞台が出来上がっていた。

その前の観客席の方から声が掛かる。

「ここだよ。こっちこっち。」

先に到着していた友達がこちらに手を振る。

「分かったー、今行く。」


目を開けると真っ暗な空間が広がる。

「夢か・・・」

提供された簡易ベットから身を起こす。

足元を小さな明かりが照らしている。

テントを開けると月光に照らされた廃墟が浮かび上がった。


「眠れませんか?」

焚火の前に座った男が声を掛けてきた。

黙って男の隣に座る。

焚火には薬缶が吊るされ湯気を上げている。

「何か飲みますか?」

「有難う。お茶を頂けますか?」

男は何もないところから台とポット、カップを出し、ポットに茶葉を入れる。

薬缶を火から下ろし沸騰させるとポットにお湯を注いだ。

薬缶を焚火に戻し、ポットに布被せる。

当たり前に様に異能を使うこの男はヤーレの街で雇った何でも屋だ。

彼が使っているテントもベットも全てこの男が用意している。


「夜も見事ですね。」

今いる廃墟は大災害前、名の知れた観光地だった。

1000年程前、神聖帝国が帝都をハーレンに移した頃、この地を治めていた豪族の居城だった場所。

かつての盟主だった神聖帝国についたこの領主は反帝国派との争いに敗れ散っていった。

籠城戦をせず、戦場で散ったので館は壊されることなくその当時の面影を強く残している。

「ええ、偶にお客さんみたいにここに来たいという方がいますよ。」

ヤーレ政府はこの廃墟が荒らされないよう定期的に何でも屋を派遣し、害獣の駆除と補修を続けている。

今回はそれに同行する形で来訪が叶った。

手にした温かいカップは彼の心もまた温めてくれている。


廃墟の横にある守り神は生きている。

今もなお多くの祈りを集め小さな神々が舞っていた。

そこに自分の友人もまた加わって楽しそうにしている。

小さきものがやってきて触れてきた。

彼が見た優しき人々の姿。

楽しいこと、悲しいこと、嬉しいこと、幾つ幾つもの幻影が現れては消えていく。

最後の方でこの家で働いていたのであろう者達の姿が見える。

「我が主達の魂に安らぎがあらんことを」

誰よりも強く長く祈りを捧げて彼らは去っていた。

「今日は皆ご機嫌ですね。」

「見えるのですか?」

「いいえ、でも分かりますよ。」

「1000年ずっとここに居たんですね。」

「ええ、この近隣の者は皆ここを大切に守ってきました。」

「観光地になった後も不用意に荒らされない様にずっとずっと守っていたんですね。」

「今もですよ。」

男はカップのお茶を口に運んだ。

「私の仕事は害獣退治ですが、実際に駆除しているのは獣じゃない。」

相手の顔を見る。

「ここを荒らそうとする人です。」

「私がここに来れたのは?」

「貴方は彼らの友人だからですよ。」


「今度はどんなお話なんです?」

自分の本の読者だという男は興味深そうにこちらを見ている。

「書きあがったら送りますよ。」

「それは楽しみだ。」

冷え切った廃墟の中、ここだけが温かい空気に満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ