断章_小さな優しい神々
アレストリアを追放されたナレカサル一家は指定された荒野についた。
そこには見慣れぬ30代に見える男が待っていた。
「ナレカサル家のものか?」
そうだと答えると男は言った。
「私はベンジー、貴方方の面倒を見るよう頼まれたものだ。」
ベンジーの協力の元、荒野の開墾が始まる。
慣れない作業に苦労するものの何とか生活が出来るようになった頃、ベンジーは広場に皆を集めた。
「これからこの村の守り神を決めたいと思う。」
ざわざわと動揺が広がる。
そもそも彼らがアレストリアを追われることになったのはトリスタン教徒の煽動に乗ってしまったからだ。
神様なんて信じない、なんでそんなことをど声が広がる中、ベンジーは言った。
「ここで決めるのはトリスタン教のような唯一絶対者ではない。
この村と共に歩む神、このナレカサルの守り神だ。」
そう言って無数の100個を超える刻印が刻まれた玉を目の前に並べた。
「ここにアナ・ハルナの神々の名が刻まれた玉がある。」
村人の一人が言った。
「俺はそんなに沢山の神様の名前なんて知らないぞ・・・」
「神の名を唱える必要はない。」
「どういうことだよ、どうやって神様を決めるんだ。」
「祈りを、叶えたい願いを捧げよ。それを言葉にする必要はない。」
ざわめきが強くなる。
「心からの祈りを捧げよ。そうすればその願いを手助けしようと思う神が現れる。」
村人達は顔を見合わせる。
そんな中、一人の少女は前に進み出た。
「私の願いに手助けしてくれるの?」
「そうだ。」
「じゃ祈る。私は歌姫になりたい。」
ベンジーは微笑んだ。
「別に言葉にする必要はないぞ。」
少女は笑って手を合わせ目を閉じて祈り始めた。
暫くすると玉の一つが薄っすらを光を放ち始めた。
「シレア、歌と踊りの神だ。」
「本当?嬉しい。」
「ではシレアに名乗り、加護を祈りなさい。」
「はい、シレア様、私はラナと言います。どうかお力をお貸しください。」
シレアの玉が一層強く輝いた。
それを見た村人達は次々祈りを捧げ、幾つもの玉が光を宿す。
全員が祈り終えるとベンジーは丸い円盤の様なものを出した。
「これは一体?」
「ここに力を貸して下さる神の刻印を刻む。」
「一つじゃないんだ。」
「そうだ。」
ベンジーはそう言って円盤にいくつもの刻印を描く。
それが終わると村人にナイフを渡した。
「皆で少しずつこの印の中を削ってくれ。印からはみ出さない様に注意して。仕上げは私がする。」
そうやって出来上がった円盤は村の集会所の奥に飾られた。
「後は皆日々折々に祈りを捧げてほしい。」
「私、毎日お祈りするね。」
そうして月日が過ぎた頃、村人達は当たり前のように守り神に祈りを捧げるようになった。
村に活気が出て笑い声が響く。
その様子をベンジーは嬉しそうに見つめている。
彼の瞳には見えない小さな優しい神々が一緒に笑っている姿を捉えていた。




