2-3.百眼のカミラ
元々は2つに分かれる予定でしたが次の話もカミラとの会話で終わってしまい、合体しました。
「久しぶりだね、ジーン、カスミ」
ギルド長、カミラの言葉にただ一人入室していたオーギュストが周囲を見回す。
「初めまして、佳澄です。お会いしたことは無いと思いますが?」
「ずっと居ただろ。ジーン、出てきな。話は聞いている。」
突然出現したマリオネットがジーンになるを見て驚くオーギュスト
「久しぶりだな、カミラ。気が付いてのか?」
「まあね、あんたの中に何かいるのは会った時から気が付いていたよ。
悪いもんじゃなさそうだし、あんたも気が付いているみたいだから放っておいた。」
「・・・」
「改めて何でも屋ギルド長を務めるカミラだ、よろしくな。」
「オーギュスト、後で説明するから今は黙ってな」
「承知しました。」
警棒を手に警戒態勢を取っていたオーギュストは扉の横に直立で立つ。
3人は周囲に遮音結界を張り高速言語で状況報告を行う。
「報告が遅くなって申し訳ありません。」
「いいよ、あんたらのせいじゃないということは分かっている。」
「誰がやったか、分かっているのか?」
「道化師だ。さっきもここに来た。」
「あいつか・・・じゃ俺達がここにいるっていうのも?」
「ああ、逃げない内に迎えに行けってな」
「・・・」
「ヤーレでは散々妨害していたみたいなのに、何でだろ?」
「ギルドも一枚岩じゃない。あたしと直接話をするのは良くても他は駄目ということみたいだね。」
「ガイも似たようなこと言っていたな。」
「道化師って何者なんです?大体一人なんですか?」
派手な衣装に濃い化粧、仮面を被った道化師は自身を道化というが名前は名乗らない。
「俺が会ったのは気配が同じだから、同一だと思うが他は知らん、魔人で多分始祖の魔王の一人じゃないかな。」
「始祖の魔王って、大災害の時に魔人化したアナ・ハルナの人だったけ?」
「正確な人数は不明、何人かはハーレンで辺境の村にいるらしい。」
「今、表立った動いているのは道化師だけだ。」
「都市を滅亡させたのは別の魔王で道化師は自分は関わってないって言っているがな。」
「ふざけた野郎だよ全く。」
「仲良いんですか?」
「悪くないけど良くもないよ。」
「ギルドを立ち上げる時、色々手助けしていたみたいだがな。」
「まあね、色々情報もくれたし、少なくとも道化師はギルドと敵対関係にはない。」
「で、俺達のことをなんか言っていたのか。」
「気に入っているみたいなことは言っているけど具体的には何も言ってない。」
「そうか」
「あたしの予想だけど、生身のあんたの体を押させているの多分、あいつだよ。」
「生きたものは収納できないはずだが・・・」
「あたし達はね・・・」
「魔王なら可能かもしれない、ジーンは自分が死んだと思っている?」
「分からん。」
「私も・・・体が引き剥がされるような凄い痛みがあったから死んだと思ったけど、今は分からない。」
「何かあるのかい。」
「時々なんか引っ張られるような感覚がある。」
『ここに道化師がいたとなるともしかして転移先は道化師の近く?』
『分からん・・・』
「今、レア・マーデに法王国の人間が複数出入りしている。」
「ジルフォード卿もいるのか?」
「いるよ、立場としては強硬派の枢機卿を抑える側だ。」
「アナ・エルダへの攻撃を主張している一派か。」
ジーンとカミラは相手の動きについて検討していると佳澄は声を上げた。
「そもそもレア・マーデから攻撃って可能なの?」
「レア・マーデの飛行艇じゃヘル・ホークの包囲網を突破できないだろうね。」
「最近じゃエマルドとの定期便もまともに運用できないらしい。」
「ゼ・ドナの飛行船も影響を受けているのか?」
「こっちは特に無し、増便要求が強くなっている。」
飛行船はそうそう増やせないよとカミラはぼやいた。
海を渡る船も海神の申し子達の攻撃で、海洋国の船以外はまともに航行できていない。
モンスター達がレナ・カサル製品を目の敵にしているのは明確で全ての都市は置き換えを検討している。
しかし、アナ・ハルナ製の供給は元々少なく保守が大変なことも知られている。
その為、両大陸は何とかモンスター達の攻撃を受けない製品を開発できないかと知恵を絞っている。
「近い内にギルドの本部はアナ・エルダに移す予定だよ。」
「ここはどうするんだ?」
「もちろん、残すさ。レア・マーデに睨まれているんであたしがここにいると余計な火種になりかねない。」
「そうか。」
「で、お願いなんだけど」
「なんだ?凄い嫌な予感がするんだが。」
「それ、ここに置いてけ。」
佳澄が眠そうにしていたのでカミラの私室の一角を借りて休ませる。
ついでにシル・サーレに行くためのバギーの手配を頼む。
「買うかい、それとも借りるかい?」
「買っとく、コアは手持ちがあるからコア無しで。」
「そうかい、オーギュスト、手配を頼んだよ。」
佳澄を休ませるタイミングで遮音結界は解除している。
オーギュストへの説明はカミラが実施済みだ。
高速言語による説明だから1分も掛からないが普通にしていたら1時間は優にかかるだろう。
人数比にして10分の1どころか千分の1のギルドがレナ・カサルやエマルドの多数の城塞都市を相手に互角の勝負が出来るのもこの情報処理能力の高さにある。
ギルドの職員は皆情報処理のエキスパートであり、警備員も皆情報処理能力が高い。
シル・ストアのマーサやミオ、そしてジーンは特にギルドのスカウトを受けていたが断っている。
カミラは自分に近い情報処理能力と自分にはない戦闘力を持つシル一派と前々から手を結びたがっていた。
アナ・エイダの封印が解け状況が大きく動いた今、その鍵を握るジーンを逃がすことは出来なかった。
「コアだけど余裕はあるかい?」
「なんのコアが欲しいんだ?」
「出来れば無刻印が欲しい。」
「打てる奴、いるのか?」
「あたしが打てる」
「サイズは?」
カミラは両手で輪っかを作る。
「結構大きいな何に使う?」
「いいだろ、あんたには迷惑は掛けないよ。で、あるのかい。」
「3枚までなら、拳大なら10枚だ」
アナ・エルダの復活でコアの元の大量生産が可能になったがまだ流通するほどの数は出回っていない。
また悪用される可能性も考えて出回るのは基本刻印が打たれたものになっている。
無刻印は生産地でしか手に入らない。
普段は基本刻印そのままを使うか刻印師に頼んで追加の刻印を打ってもらう。
シルの名を持つクランには必ずこの刻印が打てる者がいる。
ジーンも当然打てる。
※佳澄は現在修行中
「対価は払うよ。譲ってくないかい」
「俺一人の判断じゃ答えられないな。」
「さっきも言ったがそいつをここにおいていってくれないかい。」
「あのな・・・」
「代わりにそいつと同型かそれ以上の個体を用意する。」
「おい・・」
現在使っているマリオネットは最上位機種、価格は上級市民の年収を遥かに超える。
神聖帝国やアナ・エルダに置いてあるのは中位汎用モデルだ。
連絡用ならそれで十分である。
暫く睨み合い、ジーンが折れた。
「戦闘も想定しているのか。」
「ああ、アナ・エルダに移るまで1戦、2戦じゃすまないだろうね。」
「オーギュストとか居るだろ。」
「あいつはゼ・ドナに残すよ。それにここの職員はハーレン大陸に慣れてないから大半は残す積りだ。」
「確かにハーレン大陸はそこに暮らす人間には住みやすいが余所の大陸しか知らない連中には厳しいか」
「ああ、前に軍用犬がヘル・ドッグ化した時、酷いパニックになったの覚えているだろ。」
「そうだな。」
「引き取ってくれて助かったよ」
「アーシャの頼みだからな」
彼らは現在海洋国で王宮他の護衛としてのんびり暮らしている・・・
「こいつが動くのは俺がこっちにいる時だけだぞ。」
「聞いている。カスミの里帰りの時は動かないんだろ。」
「・・・」
「あんたが里帰りから戻った直後なら1か月位はこっちにいるんだろ。
あたしも今すぐ移動する訳じゃない。次かその次位を考えている。」
「そうか」
「拠点を用意するから暫くここにいてくれないかい?」
「おい」
「頼みたい仕事が色々あるんだよ。」
「・・・考えておく・・・」
道化師、やっと登場
始祖の魔王は佳澄の言葉通り、アナ・ハルナの一般人が大災害で魔人化した存在です。
特定の思想を持っていたり、序列があったりする訳ではないです。
アナ・ハルナの生まれなので故郷の復活を皆願っています。
ヘル・ドックの1件は第3部 星祭の唄の出来事です。




