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シル・ストア~来訪者(旧サブタイトル:風の通り道)  作者:
間奏曲1

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最強伝説 その後~誰も知らない

最強(最恐)伝説で問題を起こしたコーチのその後です。

「先生さようならー。」

「おう、気を付けて帰れよ。」

「はーい。」

道着姿の小学生位の子供達が手を振りながら道場を出ていく。

残された男は道場の掃除をして神棚に向かって正座をした。

「今日も無事終わりました。」

そう言って深々と頭を下げる。


かって、大学の柔道部のコーチをしていた男は職を辞した後、様々な職業を経て現在は警備員をしながら地元の道場で柔道の講師をしている。

今の彼は穏やかだが怒ると怖いことで有名だ。

彼の指導する子供達の中で腕白な二人組がいる。

彼等は何かと張り合い喧嘩していた。

ある日、二人の喧嘩が一線を越えようとしていた。


バンと手を叩く大きな音がする。

びくっと子供達が振り返ると男がゆっくり近づいてくる。

逃げよう・・・本能がそう訴えかけてくる。

しかし、男の眼光が鋭く蛇に睨まれたカエルの様にその場を動くことが出来なかった。

「何があった。」

男の問いに子供達は最初はもじもじとやがて興奮して相手を非難し捲くし立てていく。

「分かった。」

男の言葉に子供達はびくっと肩を震わせる。

「お前達はどっちが強いか決着を付けたいと思っているんだな。」

腕白坊主が二人、頷いた。

「私が思うにお前は腕力が強く投げ技が得意だ。」

右側の子供を見て言う。

子供は嬉しそうに頷いた。

「対するお前は相手をよく見ていて足払いが得意だ。」

左側の子供を見て言う。

こちらも嬉しそうな顔をしている。

「お互い頑張ってよく鍛錬している。」

子供達は嬉しそうに頷いた後、相手を睨みつけた。

「だからちゃんと納得するまで勝負できるようにしよう。」

腕白坊主は首を傾げて男を見上げた。


道場主に断りを入れ、二人の勝負を始めた。

最初の一回目、右の子は投げ技禁止、左の子は足払い禁止

ルールをきっちり決めて破ったら負けとする。

10分の時間制限で左の子がやや優勢なものの勝負はつかなかった。

悔しそうな腕白坊主達に1週間の期間をおいて次の勝負をすることにする。

「次はルールを変えるからしっかり鍛錬してこいよ。」

「「分かりました!」」

腕白坊主は声を揃えて返事をし、そっぽを向いた。

次の勝負:始めて教えた寝技で勝つこと→引き分け

その次の勝負:5分以内に技ありを取ること→引き分け

・・・

そうやって何度も勝負を続ける内に腕白坊主達はどうやったら勝負に勝てるのかを考える。ひたすら考える。

気が付いた時には二人はどうやって師匠の課題を乗り越えるか?という共通の敵と戦う同志となっていた。


そうして迎えた地区の対抗戦。

腕白坊主達は順調に駒を進め、決勝戦でぶつかった。

「負けないよ。」

「こっちこそ勝負を付ける!」

勝負は大外刈り、投げ技が得意の子が最後の最後で技ありを取った。

「次は勝つ!」

「おう受けたつぜ!」

二人はバシッと手を叩き、礼をした。


月日は過ぎて腕白坊主達は揃って同じ高校に進学した。

そこの柔道部でも活躍を続け2年の秋、主将をどちらが引き受けるかで揉めた。

二人とも鍛錬は好きだし、後輩を指導することも積極的にやっている。

どっちが主将になっても問題ないと思われたが二人とも固辞した。

「「強くなるための鍛錬をしたいので主将はあいつにお願いします。」」


なかなか決まらなず困った二人は同じ道場出身の友人と3人で師匠である男の元にやってきた。

3人の話をじっくり聞いた男は3人目の少年に目を向けた。

「お前が主将をやってみるか?」

男は知っていた。

この3人目の少年は試合は強くなかったがよく周りをみて仲間達をとりまとめていたことを。

目の前の少年達が気持ちよく勝負できるように気を配っていたことを。

驚いた顔の少年に対し、その手があったと腕白坊主達は言う。

「お前が主将なら安心できる。是非お願いする。」

二人に頭を下げられ困った少年を見て男は言った。

「頼むのは良いはお前達も彼に協力しろよ。任せ放しにするんじゃないぞ。」

「「はい、わかりました。」」

「なにかあったら相談に乗る。決して一人で抱え込むんじゃないぞ。」

男の言葉に3人目の少年が頷いた。


ここが分岐点だった。

誰も知らない未来。

頭が良くて周りが見えすぎる少年は人をうまく動かすことに長けていた。

誰にも気付かれず褒められ認められることも無かった少年は周りを操って他人を傷つけ苦しむ様に快感を覚えるようになる。

3人目の少年がサイコパスとなって周囲を恐怖のどん底に突き落とす未来。

その未来は腕白坊主達に協力する内に少しずつ遠くなった。

そして今完全に決別する。

腕白坊主達は3人目の少年を誉め、感謝し、協力して部活を盛り立てていった。

やがて学校を卒業し社会人になってもその絆は途切れることなく続いていく。

死が三人を別つ時まで。

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