深山家の日常3
元のタイトルは誕生日、加筆してます
悟の誕生日、佳澄は近隣街に新しくできたケーキ屋に来ていた。
都心で有名なケーキ屋の支店である。
予約していたホールのケーキの他にその店で売っている全てのケーキを1個ずつ買う。
一番人気と言うケーキやお勧めと言うケーキは2個ずつだ。
予約時に来店時間を指定したのでスムーズに受け取って支払いを済ませる。
追加でお勧めの紅茶とクッキーも買った。
ホールのケーキは冷蔵庫に入れ、紅茶を入れて三人でお茶会を始めた。
20個以上のカラフルなケーキを前に、2個買ったものは別の皿に分けて冷蔵庫に戻す。
最初は悟に選ばせ、選んだケーキを適当に3つに分けて各々の皿に盛って食べる。
一番人気と言うフランボアのケーキだ。
「美味しい・・・けど私は地元の紅梅亭のケーキの方が好きかな。」
「そうだね、これは外れだったかな?」
「そうか、酒の風味が効いていて旨いが。」
今回の店は寛がお勧めしてきたものだった。
悟と言うよりジーンの好みに合わせていたのかしれない。
次は佳澄が選ぶ。
華やかなフルールのタルトだ。
「美味しい!」
佳澄と悟はご機嫌だが、ジーンは少々物足りない顔をしている。
今度はジーンが選ぶ。
ビターチョコレートのケーキを選ぶかと思ったらレアチーズケーキだった。
「意外、てっきりお酒を使ったチョコのケーキを選ぶと思ったのに。」
「向こうじゃ牛乳は貴重だ。」
ハーレンの家畜は殆どがモンスター化してしまい、牛乳はレナ・カサルからの輸入品だった。
最近やっと巨大化した牛のティムに成功して流通が始まったがまだまだ数が少ない。
シル・ヤーレでも鶏や山羊はいるが牛は居ない。
牛肉はワイルド・ブルを狩っているのでよく食べているが・・・
レアチーズの酸味が気に入ったのか満足気である。
そうやって4巡し、12個のケーキが消えた。
最初に取り分けたケーキは全て胃袋の中だ。
残ったケーキは冷蔵庫に戻し、買ってきたクッキーをつまむ。
「向こうじゃ生クリームは無いの?」
「あるにはあるが植物プラントが作るものだから美味しくない。」
チーズは山羊のものなので美味しいが匂いがきつく人を選ぶ。
「姉さんの小説読んでいて思うけど向こうは大変だえね。」
「そうね。でもシル・ストアのご飯は結構美味しいよ。」
「そうなんだ。ジーンが工夫したから?」
「それもあるけど元々の素材が美味しいのよね。」
「?」
「モンスター化した家畜類はこっちの鶏や豚より風味があるからな。」
「伝染病が怖いから都市は綺麗で衛生的なんだけど食事美味しくないんだよね。」
内陣、それも最深部に近いところで暮らしていたマーサやミオは衛生にうるさいのでシル・ストアの拠点は非常にきれいである。
風呂はないが各部屋にシャワーが完備している。
「お風呂が無いのが不満だったけど・・・」
ゼンの隠居先のシル・ヤーレには温泉があるのだ。
そもそも森の主であるモドラに温泉があると聞いてシル・ヤーレの開拓を始めたのである。
「行ってみたいな。」
「やめとけ」
「悟はもう少し体を鍛えないと厳しいと思う。」
「そんなあ」
「一つ聞くけど牛サイズの犬に追いかけまわされるの平気?」
「伸し掛かられたら間違いなく潰されるな。」
「そんなに大きいんだ、」
「鶏はダチョウサイズだし。」
「・・・」
「普通の鶏もいるけどね。」
「牛は?」
「普通の牛サイズの子牛が近い内に3頭ほどくる予定だね。」
「子牛?」
「ワイルド・カウをティムした人から子牛を譲って貰うって言ってた。お乳が取れるようになるのは5年位先みたい・・・」
「悟の場合はまずは夏の合宿で山暮らしになれるところからかな。」




