思い出の顔
時期的にはジーンと和美の共存後、秋位
年末大売出しの前ですね。
『懐かしいな』
佳澄はジーンに頼まれ、書き始めたばかりの頃のノートをパラパラとめくっている。
まだジーンの両親が生きていて3人で旅をしていたころのものだ。
佳澄にとっても10年以上、ジーンからすれば30年前の話だ。
覚えたばかりの文字を使って必死に書かれた文章は拙いながらも当時を思い出すには十分なものだった。
「そう言えば写真は無いの?」
『都市にはあるが辺境民には縁がないな』
開いたページには当時佳澄が必死になって描いたジーンの両親の顔がある。
「描き直したい・・・」
『駄目だ』
当時のジーンは旅暮らし、知識は全て口頭または念話で伝えられた。
佳澄が知っているのは口頭で伝えられたもの、念話の方は分からない。
そうやって口頭で伝えられたものを佳澄は必死にノートに書き取っていた。
中には意味も分からず音だけを記したものがある。
それらを久しぶりに目にした佳澄はジーンに聞いた。
「そう言えば、これってどういう意味?」
佳澄の指し示す言葉に答えるジーン
そういうやりとりを10回以上繰り返し、
「で、これは?」
佳澄の指さす文字を見てジーンが固まった。
「どうしたの?」
『・・・初夜に関する言葉だな・・・』
今度は佳澄が固まった・・・
「これ確か5歳の頃だよね?」
『そうだな』
「そんな頃から教育しているんだ・・・」
『辺境民は子供が少ないし出来にくいこともあって、早い内に相手を決めるかなあ』
「こっちでも男女7歳にして席をどうせずなんて言葉があるけど早くない?」
『そう思う』
「大体、辺境民って皆滅茶苦茶若いじゃない」
辺境民は早い段階で異能に目覚めるので50過ぎでも20代にしか見えないのも珍しくなく、
15歳位かと思ったら30過ぎだったという例もある。
『体はともかく早熟なのが多いからだろ』
環境が厳しいので早く大人にならざるを得ない面が多々あるのだ。
「のんびりしている暇はないか」
「ごはんだよ」
今日の料理当番の寛の声にノートを閉じて部屋をでた。




