城塞都市 ヤーレ メインストリートにて
『ここどう見てもメインストリートの噴水公園よね』
『そうだな』
『私、さっきまで自分の部屋にいたよね』
『そうだな』
そう高校から帰宅して、小学校の時から通っている空手道場に行くべく着替えて荷物を手にした瞬間、
眩暈がしたと思ったらこの場所にいた。
現代日本とヤーレの街では服装が違いすぎる。
この格好ではあまりにも目立つので気配を消して暗がりに移動する。
自分に向けられた視線を感じなくなったところでジーンとの脳内会話を始めた。
そう、脳内会話である。
今から一年ほど前、ある夢をきっかけにジーンの世界を夢に見ることは無くなった。
代わりに今まで漠然と感じていたジーンの存在がはっきりとして佳澄の体に私とジーンが共存するようになったのだ。
部活を終えてこれから受験だと思っていた夏休み前、ジーンは請け負っていた仕事で死亡したのではないかと思うケガをしている。
致命傷でないかという傷の痛みで目を覚まし、混乱し泣いていた私にはっきりと困惑したジーンの声が聞こえた。
「ここはどこだ」
それからジーンと二人三脚で生きてきた。
幸いお互いのことは夢を通して知っている。
そうやって色々試すうち、ジーンの持つ異能の一部を佳澄は使うことができるようになった。
先程の気配を消すというのもその異能の一部というかジーンの持つスキルのようなものだ。
ジーンの持つ異能者なら誰でも使えるという並列思考スキル、これが非常に優秀でお陰で共存前なら合格率数%だった元男子校の有名な進学校に合格することができた。
もっともその高校を目指す羽目になったのは学習意欲に溢れたジーンのせいだったが・・・
『さて、これからどうする』
『まずは情報収集よね』
『ただその前に着替えたいな、この格好は目立ちすぎる』
『そうなんだけどお金、どうするの』
『カバンの中に認識票、入っているだろ、それを使えば俺の資金が使えるはずだ』
そう認識票である。
最後の夢の後、何故かジーンの認識票が手元にあった。
使われている金属は佳澄の乏しい知識では不明、ランクを示す金色の一枚のプレート。
夢の中で様々なシーンで使われていたそれは見つかると色々マズそうなので普段は隠しているがお守りのように持ち歩いている。
それを使えば買い物とかは何とかなるだろう。
『そうなんだけど・・・』
そう呟いて足元を見る。
『まずは靴だな。』
部屋にいたので靴下、靴は履いてないのであった。
方針は決まったので周囲を見回す。
見覚えのあるヤーレの街並み。
ドーム状の城塞に囲まれた都市の中は中枢管制システムによって暑くもなく寒くもない適度な気温と湿度に保たれている。
『見つけた』
ジーンの示す方に意識を向けると路地裏にフードで顔を隠し、すさんだ雰囲気を持つ集団がいた。
『私素手なんだけど・・・』
『街から出れないチンピラなど問題ない』
『・・・』
『不安ならこっちに任せろ』
『・・・わかった・・・プロに任せる』
それから10分後、佳澄は見覚えのあるカフェの中で軽食を食べていた。