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シル・ストア~来訪者(旧サブタイトル:風の通り道)  作者:
第1章 ハーレン

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実戦経験

佳澄が戻ってから5日後、ジーンのもう一体のマリオネットの調整が完了した。

そこでレオン、マリスと共に近場の森林地帯のモンスターの間引きに参加することにした。

装備は近接戦用に手甲とプロテクター、遠距離用にクロスボウ、銃器はもう少し慣れてからということになった。

新しく買おうとしたのだがどれが合うか分からないのでまずはジーンが少年の頃に使っていた武器と装備を調整して使うことにした。

佳澄もまたジーンと同様、大抵の武器は一通り使いこなすので逆にどれが向いているのか分からなかったのである。

結果、実戦で色々使ってみてこれっというのが見つかったら新調しようということになった。


「佳澄は向こうで熊とかを退治しているからモンスター相手はまず大丈夫だろう」

「ワイルドベアを撃破しているんですか?それって・・・」

「向こうにそんなものはいない。モンスター化する前の100年前の個体と同等かそれ以下だ。」

「ヒグマとかグリスリーは相手にしてないから絶対以下だと思う。」

「ヒグマとグリスリー?」

「向こうで凶暴ででかいと有名な灰色熊だ。佳澄、そいつらが相手なら代われ・・・」

「モンスターは大丈夫ということは人は無理って話ですか?」

「向こうじゃ人相手に命のやりとりをする場はないというか佳澄の故郷ではまず無い。」

「ひったくりやコソ泥とか下着泥棒を捕まえたことはあるけどね。」

「佳澄さんの故郷ってどういうところなんですか?なんか聞いた話のイメージが色々合わないんですが・・・」

「向こうに行って分かったがこいつは色々異常だ。」

「半分はジーンのせいだと思う。」

「ともかく今回は前半は佳澄の慣らし、後半はこいつの運用確認、その時は佳澄、防御に専念しろ。リオン、ガードを頼む。」

「最奥まで行くんですね・・・」

ジーンは自分のボディを指し、

「こいつでどこまで動けるか確認しようと思ったらあいつに手合わせを願うしかないだろ」

この森の最奥にはモンスター化したトカゲ、ドラゴンがいる。

ハーレンのモンスター達はモンスター化した直後はともかく落ち着くと高い知性を持つ個体が多い。

レナ・カサルやエマルドでは見られない現象だ。

この森のドラゴンも同様でシル・ストアの面々にとって良い訓練相手である。

生身のジーンなら勝てるがマリオネットだとどうだか?

ちなみにリオンとマリスは未だに勝てていない。


作戦ポイントに到着して、装甲車を降りる。

「今回、ギルドから受領した依頼はワイルドベアの間引きと蜂蜜の採取です。

キラーアントの目撃、討伐が増えてきているので蟻塚が出来た可能性が高いということで蟻塚の捜索と駆除も要請されています。」

ハーレンの都市滅亡原因の半分はキラーアントと言われ、レナ・カサルやエマルドでは現在進行形の脅威である。

ある日突然連絡の途絶えた都市や町に調査に行ったら廃墟と化した街に複数の蟻塚があったという例は枚挙にいとまがない。

レオンの言葉にジーンが確認する。

「間引きということはワイルドベアは数頭、蜂蜜の採取は10か所位か。」

「はい、いつも通りで基本ベアは奥に追いやるです。」

「まずはキラーアントの目撃証言のあった場所に移動するか。」

マリスが乗ってきた装甲車を収納したのを確認すると森の中を歩き始めた。

今回の目的は佳澄の実戦経験ということで発見した熊他のモンスターは佳澄が相手をしている。

「佳澄、それじゃ接近戦の確認にならないから暫くクロスボウは控えろ」

「レオンより探知能力は上だな・・・」

「マリスより発見するの早いんじゃないか?」

支援予定の二人より先に発見して対処してしまうので手持ち無沙汰の二人は蜂蜜採取以外手を貸すことが無かった。


「間引きはこんなものか」

キラーアントの目撃地点に到着までに熊の討伐数は予定数の上限に達し、蜂蜜も依頼分以上の採取が完了している。

というか蜂蜜採取で寄り道しながらの移動だったので熊との総合率は高かった・・・

「ここから本番だまず、キラーアントの巣を探すぞ。」

マリスやリオンは各々探知系の異能を展開し始めたのに対し、佳澄は地面に手をついて目を閉じた。

ジーンはここまでで大体の場所を掴んでいるので3人の様子をうかがっている。

10分程経過したタイミングで3人に声を掛けた。

「ここから100mの範囲で蟻塚は確認できません。ただ東側が怪しいかと」とリオン

「同じく生き物の分布が東側が薄いし、蟻の痕跡が東側がら来ている」とマリス

「ここから北西3kmのところに巨大な反応があるけどこれ、ジーンの知りあい?」と佳澄

「分かったか、その通りだ。蟻塚はどうだ?」

「北東側300m位と南東1.5km位のところに小さい反応が密集しているからそこが怪しいかな」

その言葉ににやりとジーンは笑った。


「何で分かるの?」

「ジーンは風を読んでいるみたいだけど私は地面に手をついた方が掴みやすい。」

現在、近い方のキラーアントの討伐中、のんびり会話しているのは奇襲で見張りの兵隊蟻を倒し、

今は殺虫剤を蟻塚に流し込んで巣穴の殲滅中だからだ。

既に巣に戻ってくる兵隊蟻や働き蟻の数は殆どなく、後は女王蟻の死亡を確認したら破壊焼却処分だ。

微妙に嚙み合わない会話を続ける3人にジーンは声を掛ける。

「ここは出来て日が浅い。もう一つが親だな。」

「いつも思うけど、ジーン、何で分かるの?」

「視れば分かる。」

「分かんないから聞いているんだって!」

「佳澄は分かる?」

「なんとなく。これ若いなって感じがする。」

「もう一つと比べてみればその違いで分かるようになるぞ。」


二つ目の蟻塚の殲滅を終え、拠点とギルドに報告を入れる。

「違いは分かったか?」

「受ける圧迫感が違いました・・・」

「森の気配とかがかなり前から変わってきて怯えというかなんか嫌な感じがこっちの方は強いです。」

「同じ探知系でも人によって感覚ややり方は違う。まずは向いたやり方を伸ばすことだな。チームなら不得手な部分をお互い補えば良いし。」

「ソルさんのところみたいにですか。」

「あいつらは得手不得手が被らない良いチームだぞ。」

正拳突き一撃でワイルドベアを葬る佳澄に

「佳澄の故郷って・・・」

と慄くリオンとマリスでした

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